ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー大江戸学園:大通りー
悠「まったく。なんだってそんなムキになってるんだよ?まさか、財布に大金が入ってたとかいうわけじゃないんだろ?」
一緒になって物陰に隠れながら、通りを覗きこんでいる由真に尋ねてみる。
由真「買い物の後だし、入ってたのは小銭だけよ。でも、金額なんて関係ないわ。これは怪盗猫目としてのプライドの問題なんだから」
悠「プライドねぇ」
気持ちがわかるとは言えないが、言い分は理解できなくもない。
由真「なによ」
悠「いや、で、顔が分からないのに、どうやって犯人を見つけるつもりなんだ?」
由真「……どうにかするって言ったでしょ」
悠「だから、具体的には?」
由真「…………」
悠「考えてないんだな?実に非論理的だ」
由真「うっさいわね!顔なんてわかんなくても、見ればわかるわよ!」
悠「見て分かるようなスリだったら、とっくに捕まってると思うんだが?」
由真「私が見ればってことよ。雰囲気とか動きとか、たぶんそういうので分かると思うし……」
悠「ふーん」
由真「……信じてないでしょ?」
悠「そりゃ…」
「まあ、信じられる根拠がないしね。」
由真「なら帰れば」
悠「ちょっと待て。今の声、誰だ?」
由真「は?誰って……」
「ふふふふっ♪」
悠「あ?」
由真「!?」
いきなり背後から聞こえてきた笑い声に驚き、おれと由真は慌てて振り返る。するとそこには、身を潜めたおれ達を覗きこむように、ひとりの女の子が立っていた。
女の子「初めまして、でいいのかな」
驚いて言葉も無いおれ達をよそに、その子は親しげに笑っている。見覚えのない女の子だ。いや、見覚えがないというのは少し違うかもしれない。
髪は肩ほどで切り揃えられ、身長は高くも低くもなく……。体格は貧相ではないが局部が目立つということも無く、服装も派手ではないが地味というわけでもなく……。
なにが言いたいのかというと、ようするに、どこにでも居そうな女の子だってことだ。
どこかで会ったとしても、印象が薄くてすぐに忘れてしまいそうなくらい平凡な……。だから一瞬、本当に見覚えがないように覚えたのだが、ふと脳裏に閃く。
悠「アンタ、さっき由真とぶつかった子だよな?」
由真「ってことが、アンタが私の財布を……」
女の子「おっと。こんなところでその話しをする気なの?怪盗猫目さん」
由真「な!?」
悠「……」
彼女の口から出た思わぬ単語に、由真が驚きの表情で固まった。そんな反応をしたら怪し過ぎるだろうと、おれが背中を軽く叩いてやると、はっと我に返る。
由真「えっと……かい、とう?なんのことかわかんないんだけど?」
女の子「とぼけたって無駄なんだけどな。別に、カマをかけようとしてるわけじゃないし。まあ、信じるかどうかはあなたの勝手だけどね。怪盗猫目の次女さん」
由真「…………」
にこやかに笑いかけてくる彼女とは対照的に、由真は目を鋭く細めた。その表情は、怪盗猫目として行動しているときと同じものだ。
悠「……」
由真「場所を変えましょう」
女の子「うん。それがいいと思う」
ー大江戸学園:境内ー
謎の女の子に先導されて、近くの寺までやってきた。
境内に人影がないことを確認してから、由真が彼女に向き直る。
由真「とりあえず、名前を聞かせてもらえる?」
女の子「そういうのって、言いだした方から名乗るのが礼儀なんじゃない?」
由真「そんな必要があるの?アンタは私のことを知ってるんでしょ?」
珠子「まあね。じゃあ、私の自己紹介だけでいっか。私は、銀珠子。まだ通り名とかはないんだけど、この辺りじゃ少しは知られてるつもりだったんだけどな」
由真「生憎、興味がないから」
珠子「さすがは天下に名だたる義賊様。ただの悪党なんか気にもかけないってわけ?」
由真「……喧嘩売ってんの?」
珠子「あなたの言い方も、かなり喧嘩を売ってたと思うけど?」
由真「…………」
珠子「…………」
悠「どうする、ぶん殴って黙らせるか?」
なんともいえない空気に堪えかねて、間に入ってみることにする。
悠「まったく。なんだってそんなムキになってるんだよ?まさか、財布に大金が入ってたとかいうわけじゃないんだろ?」
一緒になって物陰に隠れながら、通りを覗きこんでいる由真に尋ねてみる。
由真「買い物の後だし、入ってたのは小銭だけよ。でも、金額なんて関係ないわ。これは怪盗猫目としてのプライドの問題なんだから」
悠「プライドねぇ」
気持ちがわかるとは言えないが、言い分は理解できなくもない。
由真「なによ」
悠「いや、で、顔が分からないのに、どうやって犯人を見つけるつもりなんだ?」
由真「……どうにかするって言ったでしょ」
悠「だから、具体的には?」
由真「…………」
悠「考えてないんだな?実に非論理的だ」
由真「うっさいわね!顔なんてわかんなくても、見ればわかるわよ!」
悠「見て分かるようなスリだったら、とっくに捕まってると思うんだが?」
由真「私が見ればってことよ。雰囲気とか動きとか、たぶんそういうので分かると思うし……」
悠「ふーん」
由真「……信じてないでしょ?」
悠「そりゃ…」
「まあ、信じられる根拠がないしね。」
由真「なら帰れば」
悠「ちょっと待て。今の声、誰だ?」
由真「は?誰って……」
「ふふふふっ♪」
悠「あ?」
由真「!?」
いきなり背後から聞こえてきた笑い声に驚き、おれと由真は慌てて振り返る。するとそこには、身を潜めたおれ達を覗きこむように、ひとりの女の子が立っていた。
女の子「初めまして、でいいのかな」
驚いて言葉も無いおれ達をよそに、その子は親しげに笑っている。見覚えのない女の子だ。いや、見覚えがないというのは少し違うかもしれない。
髪は肩ほどで切り揃えられ、身長は高くも低くもなく……。体格は貧相ではないが局部が目立つということも無く、服装も派手ではないが地味というわけでもなく……。
なにが言いたいのかというと、ようするに、どこにでも居そうな女の子だってことだ。
どこかで会ったとしても、印象が薄くてすぐに忘れてしまいそうなくらい平凡な……。だから一瞬、本当に見覚えがないように覚えたのだが、ふと脳裏に閃く。
悠「アンタ、さっき由真とぶつかった子だよな?」
由真「ってことが、アンタが私の財布を……」
女の子「おっと。こんなところでその話しをする気なの?怪盗猫目さん」
由真「な!?」
悠「……」
彼女の口から出た思わぬ単語に、由真が驚きの表情で固まった。そんな反応をしたら怪し過ぎるだろうと、おれが背中を軽く叩いてやると、はっと我に返る。
由真「えっと……かい、とう?なんのことかわかんないんだけど?」
女の子「とぼけたって無駄なんだけどな。別に、カマをかけようとしてるわけじゃないし。まあ、信じるかどうかはあなたの勝手だけどね。怪盗猫目の次女さん」
由真「…………」
にこやかに笑いかけてくる彼女とは対照的に、由真は目を鋭く細めた。その表情は、怪盗猫目として行動しているときと同じものだ。
悠「……」
由真「場所を変えましょう」
女の子「うん。それがいいと思う」
ー大江戸学園:境内ー
謎の女の子に先導されて、近くの寺までやってきた。
境内に人影がないことを確認してから、由真が彼女に向き直る。
由真「とりあえず、名前を聞かせてもらえる?」
女の子「そういうのって、言いだした方から名乗るのが礼儀なんじゃない?」
由真「そんな必要があるの?アンタは私のことを知ってるんでしょ?」
珠子「まあね。じゃあ、私の自己紹介だけでいっか。私は、銀珠子。まだ通り名とかはないんだけど、この辺りじゃ少しは知られてるつもりだったんだけどな」
由真「生憎、興味がないから」
珠子「さすがは天下に名だたる義賊様。ただの悪党なんか気にもかけないってわけ?」
由真「……喧嘩売ってんの?」
珠子「あなたの言い方も、かなり喧嘩を売ってたと思うけど?」
由真「…………」
珠子「…………」
悠「どうする、ぶん殴って黙らせるか?」
なんともいえない空気に堪えかねて、間に入ってみることにする。