ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:大通りー

真留「きゃあっ……な、何ですか、これ……!?」

悠「大神のスタンド……もとい剣魂の力さ……伏せろっ!!」

大神は揺るぎない仁王立ちのまま、チンピラ達をまっすぐに指さした。

伊都「さぁダイちゃん、みんなふっ飛ばしちゃって!」

ダイゴロー『チャ~~~~ン!!』

白組「「「ぐわあぁぁぁーーーーっ!!」」」

いきなり地面が割れ、巨大化したダイゴローがチンピラどもを吹っ飛ばす!!

まさか大神のスタンドもとい剣魂が、これほどのパワーを秘めているとは……!?

伊都「すっかり風通しがよくなりましたわね……それじゃあ、行くわよ!!」

そうして大神は刀を持ち直すと、まだ残るチンピラの群れに突っこんでいった。

悠「……」

その姿はまるで、さらなる悲鳴と血煙を求める悪魔のようで……。

伊都「あははははっ!逃がしませんわ……ひとりたりとも!」

悠「……」




そして、最後にたっていたのは……。

伊都「ふぅ……依頼、完了ですわ」

なんてこった……本当に、たったひとりで100人からなるチンピラどもを、全滅させやがった!!

あまりのことに、縛られたままでがくがくと震えているおれと真留のまえに、大神がしゃがみこんだ。

悠「……」

まるで一仕事終えたあとのような、すがすがしい笑顔を浮かべて……。

伊都「うふっ。この縄……解いて欲しいなら、解いてあげてもよろしくてよ」

悠「……あ?」

伊都「そうね……悠なら特別サービス。100円でいかが?」

悠「おい……」

伊都「ん?」

気がつくと、考えるより先に言葉が出ていた。

悠「結局金しか、行動基準がないのか?良心は?正義は?アンタは、それらがまったくないのか?」

大神はしばらくおれの顔をじっと見つめていたが、やがてまた、にっこりと笑った。

伊都「この世に、正義なんて存在しませんわ。無論、悪もね」

悠「……あ?」

伊都「そもそもそうやって、正義だ悪だと決めつけるところからして、陳腐じゃないかしら?」

真留「い、伊都さん……いったいなにを……?」

大神はすっと立ち上がると、死屍累々の周囲を見回した。

伊都「わたくしは今、ここいら一帯を荒らす不良集団を崩壊させました。けれどこれは、正義といえる?」

悠「それは……」

伊都「ねぇ?暴力で解決させる正義なんて、ちゃんちゃらおかしいですわ。悪の力を持って悪を征するなんて、何の意味があるのかしら?」

大神はそこで刀を一度振ると、静かに鞘におさめた。

悠「……」

伊都「その点お金なら、信じられますわ。何せ目に見えるし、手に取れる」

悠「大神……」

伊都「じゃっ、そういうことで。毎度あり♪」

真留「……え?」

そういって彼女が踵を返した途端、おれたちを縛っていた縄が、はらりと解けた。どうやらさっきの一瞬で、切ってしまったらしい。まったく見えなかったが……。

悠「……」

真留「た、小鳥遊さん……」

悠「あぁ、とりあえず、おれたちも戻ろう……」

そして、一部始終を報告しなきゃ。一晩連絡できなかったからな……吉音も朱金も、心配してるだろうなぁ……。
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