ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:大通りー

伊都「思い出しましたわ。確かにわたくし、もとは紅組に雇われた用心棒でした」

悠「なっ……」

伊都「でも潜入捜査の途中で、白組さんに出された高額な報酬に目がくらんで、つい……」

白組A「なんだってーー!?」
紅組A「なんだってーー!?」

紅組と白組のリーダーが同時に叫んだところで、双方のチンピラ達が、いっせいに騒ぎ始めた。

紅組B「こ、こ、この……裏切り者ぉ!!」

白組B「まったくだ、可愛い顔して、とんだ食わせもんだぜ!!」

紅組C「金返せ、この野郎!!」

白組C「そうだそうだ、金返せーーー!!」

怒号と罵声。しかし彼女は、それが自分に浴びせられているものだなんて毛ほども思っていないようすだった。

伊都「あーら……裏切り者とは、心外ですわ。それに、一度いただいた報酬を返す気なんて、これっぽっちもなくってよ」

……だろうなぁ。

白組A「あ、あ、アホかてめーは!!そんな勝手な理屈が通ると思ってんのか!?」

紅組A「そうだそうだぁ!常識ってもんがないのか、おめーにはよぉ!!」

大神も、こんなチンピラに常識を問われたくないだろうなぁ。

伊都「……わかりました。要するに……紅組と白組、双方の依頼を同時に達成すれば、よろしいんでしょう?」

白組A「なに?」

紅組A「そ、それって、つまりどういう……?」

そこで大神は、すらりと抜刀すると、戦闘態勢に入った。

伊都「ここにいる全員を、ぶっ倒す!……ですわ」

悠「お、おぅ……!?」

真留「む、無茶です!紅組の連中だけならまだしも……白組をあわせると、屈強な男たちがざっと、100人はいるのに……」

白組E「ぎゃははは、その通りだぜ!頭おかしいんじゃねーのか、この女ぁ!!」

伊都「……」

グワスッ!
白組E「ぐわあぁぁ~~!!」

狂ったように笑うチンピラの額に、大神の投げた腋差が見事に命中した。

伊都「はい。まずひとり、片付いた♪」

白組A「ぐっ……こ、この野郎……!!」

紅組A「こうなったら構うことはねぇ!野郎ども、やっちまえ~~!!」

紅組「「「うおぉぉぉーーーーっ!!」」」

紅組の大将が叫ぶや否や、双方のチンピラどもがいっせいに抜刀し、雪崩をうって彼女に襲い掛かる!!

伊都「あははははははっ……!たっのしいぃ~~~~♪」

まるで白刃の海の中を、大神は自在に往く魚のように、ひらひらと泳ぎまわる。そして彼女の刀が閃くたび、そこかしこに悲鳴が巻き起こる!

白組B「ぐわっ……!」

紅組C「ぎえぇぇ……!」

紅組D「やられたあぁ……!」

白組A「ええい、何やってやがる……相手は女ひとりだぞ!」

紅組A「束になってかかるんだ、力で押し切れい!」

白組「「「おおおぉぉーーーーっ!!」」」

砂煙と怒号が、恐ろしい地響きを立てて大神に迫る。

真留「だ、ダメです……伊都さん逃げてっ!!」

しかし大神は落ち着きを払った様子でしゃがみこみ、地面に掌を押しあてる。

伊都「ダイちゃん……転地鳴動!!」

ダイゴロー『チャン!!』

ゴゴッ!

白組D「なっ……なんだ?地震か!?」

紅組「う、うわっ……!?地割れが……!!」

大神が叫んだ途端、辺り一帯を激しい地震が襲った。
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