ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー大江戸学園:小道ー
悠「えぇと……このあたりかな」
差し出し人に話しを聞いて不良集団が暗躍しているらしいという土地にやってきた。話からして、もっと殺伐としていると思っていたんだけど……。
朱金のいう通り、案外普通だな……。
道行く人たちも平穏そうで、町並みも特に荒れた感じは見られない。そういえば、差し出し人も人づてに話しを聞いたってだけで、無関係の第三者だったしなぁ。
結局、単なるチンピラ同士の喧嘩にすぎないってことか……?
まぁ、せっかく来たことだし、ぐるりとこの辺りを回ってみるか。
ー大江戸学園:喫茶店ー
チンピラ「へっへっへ……ようまた来たぜ。」
たまたま覗いた飲食店の中に、店の雰囲気におおよそそぐわない、チンピラ風の生徒がいた。不良メンバーだろうか?おれは物陰に身を隠して、しばらく様子を窺った。
店主「あっ、いっ、いらっしゃいませ……」
店主は、あきらかに怯えている様子で対応している。
チンピラ「いらっしゃいませって言われても、あいにく客じゃないんでね、こっちは。わかってんだろ?上納金、早く出しな」
上納金……!やっぱり、搾取してるってわけか。
店主「そ、そんな……今月分は、もうすでに別の人に……」
チンピラ「あれーー?そうなんだ、聞いてねえなぁ。まぁ、行き違いってやつかもな。しかし俺だって、手ぶらで帰ったら上から怒られちまう……わかるよな?」
悪びれもせずに手を出すチンピラに、店主は決して少なくない額の、金を差しだした。
悠「……」
チンピラ「ひぃ、ふぅ、みぃ……へへっ、確かに」
店主「あ、あのぉ……これで例の件は、なにとぞよろしくお願いします……」
白組「ん?あぁ、安心しな。俺ら白組がいる限り、紅組のやつらに手を出させたりしねえよ」
そういってチンピラは、金を懐にしまいこむと、ぽんぽんとそこを叩いた。
悠「……」
白組「それじゃあな、また来るぜ」
爽快な足取りで出ていくチンピラを、店主は憂鬱そうな顔で見送ると、がっくりと肩を落とした。
店主「はぁ……やれやれ、いつまでこんな生活が、続くものやら……」
悠「もしもし、あの……ちょっとすみません」
突然物陰から姿を現したおれに、店主ははっきりと狼狽の色を見せた。
店主「はっ!な、なんですか、あなた!今の……見てたんですか?」
悠「怪しいものじゃありません。お上に頼まれて、この辺りの調査をしているもので……」
店主「お上……奉行所の方ですか?」
悠「えぇ、そんなところです。ところでご店主、どうしてあんな輩に、上納金なんか……?」
まあ、嘘はついてない、よな?
店主「…………」
店主はしばらく迷っていたが、やがて意を決したように話し始めた。
悠「……」
店主「この界隈は紅組と白組という、ふたつの不良集団が有りまして……互いに勢力争いをしているのです」
悠「ふんふん」
店主「ここいらは白組の縄張りなので……紅組に乗っ取られないよう、守ってもらっているわけです」
悠「それで、上納金を?」
店主「……」
店主はこっくりとうなずいた。
悠「ソレは何だか、おかしな話しですね。それじゃあ結局、白組に乗っ取られているようなもんじゃないですか」
店主「そりゃあたしだって、釈然としませんよ。けどこの界隈で平穏無事に暮らそうと思ったら、仕方がないんです。必要悪って奴なんですよ」
必要だろうがなんだろうが、悪は悪だ。これは、朱金や逢岡さんに報告する必要があるな。
悠「言いにくいことをわざわざ、ありがとうございます。ご店主の窮状は、必ずうえの方にお伝えしますので」
店主「ほ、本当ですか?頼みましたよ、なんとかしてくださいね」
悠「はい、大船に乗ったつもりで、待っていてください」
悠「えぇと……このあたりかな」
差し出し人に話しを聞いて不良集団が暗躍しているらしいという土地にやってきた。話からして、もっと殺伐としていると思っていたんだけど……。
朱金のいう通り、案外普通だな……。
道行く人たちも平穏そうで、町並みも特に荒れた感じは見られない。そういえば、差し出し人も人づてに話しを聞いたってだけで、無関係の第三者だったしなぁ。
結局、単なるチンピラ同士の喧嘩にすぎないってことか……?
まぁ、せっかく来たことだし、ぐるりとこの辺りを回ってみるか。
ー大江戸学園:喫茶店ー
チンピラ「へっへっへ……ようまた来たぜ。」
たまたま覗いた飲食店の中に、店の雰囲気におおよそそぐわない、チンピラ風の生徒がいた。不良メンバーだろうか?おれは物陰に身を隠して、しばらく様子を窺った。
店主「あっ、いっ、いらっしゃいませ……」
店主は、あきらかに怯えている様子で対応している。
チンピラ「いらっしゃいませって言われても、あいにく客じゃないんでね、こっちは。わかってんだろ?上納金、早く出しな」
上納金……!やっぱり、搾取してるってわけか。
店主「そ、そんな……今月分は、もうすでに別の人に……」
チンピラ「あれーー?そうなんだ、聞いてねえなぁ。まぁ、行き違いってやつかもな。しかし俺だって、手ぶらで帰ったら上から怒られちまう……わかるよな?」
悪びれもせずに手を出すチンピラに、店主は決して少なくない額の、金を差しだした。
悠「……」
チンピラ「ひぃ、ふぅ、みぃ……へへっ、確かに」
店主「あ、あのぉ……これで例の件は、なにとぞよろしくお願いします……」
白組「ん?あぁ、安心しな。俺ら白組がいる限り、紅組のやつらに手を出させたりしねえよ」
そういってチンピラは、金を懐にしまいこむと、ぽんぽんとそこを叩いた。
悠「……」
白組「それじゃあな、また来るぜ」
爽快な足取りで出ていくチンピラを、店主は憂鬱そうな顔で見送ると、がっくりと肩を落とした。
店主「はぁ……やれやれ、いつまでこんな生活が、続くものやら……」
悠「もしもし、あの……ちょっとすみません」
突然物陰から姿を現したおれに、店主ははっきりと狼狽の色を見せた。
店主「はっ!な、なんですか、あなた!今の……見てたんですか?」
悠「怪しいものじゃありません。お上に頼まれて、この辺りの調査をしているもので……」
店主「お上……奉行所の方ですか?」
悠「えぇ、そんなところです。ところでご店主、どうしてあんな輩に、上納金なんか……?」
まあ、嘘はついてない、よな?
店主「…………」
店主はしばらく迷っていたが、やがて意を決したように話し始めた。
悠「……」
店主「この界隈は紅組と白組という、ふたつの不良集団が有りまして……互いに勢力争いをしているのです」
悠「ふんふん」
店主「ここいらは白組の縄張りなので……紅組に乗っ取られないよう、守ってもらっているわけです」
悠「それで、上納金を?」
店主「……」
店主はこっくりとうなずいた。
悠「ソレは何だか、おかしな話しですね。それじゃあ結局、白組に乗っ取られているようなもんじゃないですか」
店主「そりゃあたしだって、釈然としませんよ。けどこの界隈で平穏無事に暮らそうと思ったら、仕方がないんです。必要悪って奴なんですよ」
必要だろうがなんだろうが、悪は悪だ。これは、朱金や逢岡さんに報告する必要があるな。
悠「言いにくいことをわざわざ、ありがとうございます。ご店主の窮状は、必ずうえの方にお伝えしますので」
店主「ほ、本当ですか?頼みましたよ、なんとかしてくださいね」
悠「はい、大船に乗ったつもりで、待っていてください」