ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

真留「ふむ、不良集団の台頭……ですか」

吉音「ねぇ、困ったもんだよね。」

悠「最近このあたりでも、柄の悪い連中がうろうろしてるんだ。朱金なら、なんとかできないかなと思ってさ」

朱金「ふーーん……」

朱金は何だか気乗りしない様子で、投書の紙を見つめていたが……。

悠「……」

朱金「いいんじゃねーの?勝手にやらせときゃあさ」

吉音「……へっ?」

悠「おいおい、大江戸学園の統治を任されているものとして、その発言はどうなんだ?」

朱金「本人たちがやりたくてやってんだから、それでいいんじゃねぇか。もちろん、望まない生徒たちが巻き込まれるようなことが有れば、全力で介入するがな」

悠「巻き込まれてからじゃ、遅いと思うが……」

心配顔のおれの前で、朱金は当初の紙をひらひらと振ってみせる。

朱金「当初を見る限り、不良集団とは書いてるが、要するにこいつら、チンピラだろ?こういう連中ってのは、面子を一番重んじるもんだ。おとなしく従う限りは、優しいもんさ。もし耐えきれなくなったら、そこの住人から何か訴えがあるだろ。そもそも、何の声も上げないやつらを、助けてやるつもりもねぇしな」

うーーむ、それはちょっと暴言のような気が……。

悠「それでも、校則を無視した個人支配の地を作ってしまうのは、良くないんじゃないか?」

朱金「ふむ、そういう考え方もあるか……」

真留「そういう考えも、じゃなくて、それが当たり前です」

とうとう耐えきれなくなったのか、真留からツッコミが入った。

悠「……」

真留「まったく、さっきから黙って聞いていれば、いいたい放題……」

朱金「悪い悪い……歯に衣着せねぇのが、性分でよ」

真留「着せてください。たまには」

悠「とにかく……おれが心配しているのは、ひとつだ。この不良集団が、支配下に収めた土地の人たちから、搾取してんじゃないかってことさ」

真留「あぁ……」

朱金「ふーーむ……」

そういうと朱金は、腕組をしてしばらく何事か考えていたが……。

悠「……」

朱金「……確かに、その可能性はあるかも、な」

悠「おっ……?」

朱金「よく知りもしねえで、先入観を持つのは良くないな。お前の言う通りだぜ、悠」

悠「おおっ、それじゃあ……」

と、そこで朱金は、おれの肩にぽんと手を置いた。

朱金「そんなわけで、潜入捜査はお前さんに任せた!」

悠「……あ?」

ちょっと……何いってるのか、わかんないんですが……。

朱金「オレは潜入捜査ってガラじゃねえしよ、言いだしっぺってことで、な?」

悠「……なにがガラじゃない、だ」

朱金と金さんの顔を使い分け、賭場でも店でも堂々乗り込んでいくのは一体誰だ?

……まぁでも確かに、自分でいいだした手前ってのはある。

朱金「で?」

悠「仕方ない……できるところまで、やってみるよ」

真留「大丈夫ですか?こういうことは、我々に任せてくれた方が……」

悠「まだ事件にもなってないし、平気でしょ。何かあったら、助けを呼ぶから……」

投書には、差し出し人の住所も書いてある。とりあえず、この人に当たって、具体的な話しを聞くところから始めてみるか……。
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