ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:大通りー

伊都「ふぅ、下手な尾行ですこと……誰?そこにいるのは」

「ははは……お見通しでしたか」

伊都「バレバレですわ。もっとうまくやりなさい」

「さすがは拝神夜さん、といったところでしょうか」

伊都「……あら、はじめからそっちの名前で呼ぶ人は、珍しいですわ」

「実は折り入って、お願いがありまして……」

伊都「?」




ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「ふーーん……」

吉音「むむむむ……」

目安箱をひっくり返すと、いつにもまして大量の投書が飛びだしてきた。そのひとつひとつに目を通しながら、おれと吉音はいちいち唸っていた。

悠「このところ不景気だしなぁ。みんな不満がたまってるんだな」

吉音「ねぇねぇ悠、これ、どう思う?」

悠「ん?」

吉音が差し出してきた当初の内容を、要約するとこうだった。

『最近不良集団の活動が活発になり、勢力争いをしている。近々大きな衝突が有りそうな感じで怖い。』……と。

悠「不良集団、ねえ……」

吉音「そういえば、あたしも見たことがあるよ。ガラの悪い連中」

悠「あぁ、確かに」

この界隈でも、たまに不良どうしの小競り合いが有って、そのたびに騒ぎが起こる。岡っ引きが出て行く騒ぎになるのも、2度や3度じゃなかった。

久秀「悠だって十分ガラの悪いのの筆頭じゃない。」

悠「失敬な……とりあえず、そういうことなら、逢岡さんより朱金の方が詳しそうだな……」

おれは携帯を取り出して……携帯を………携帯……?

久秀「携帯、ないの?」

悠「……」

久秀「……はぁ、はいコレ」

悠「ああ!おれの携帯!」

久秀「部屋の隅で埃かぶってたわよ」

吉音「悠、携帯はちゃんと携帯しようよ」

悠「はは……サーモン」

吉音にちゃんとしようよとかいわれるとは思わなかった。久秀から携帯を受け取って、朱金のところへ電話をかけてみた。

それから一時間ほど経って、朱金が真留を連れて、小鳥遊堂までやってきた。

久秀「ずいぶんと、遅かったわね。」

朱金「あぁ、ちょっとヤボ用でよ……」

真留「書類仕事は、野暮用ではありませんよ、遠山さま」

きっぱりと、真留が言い放つ。

悠「書類仕事が、どうかしたのか?」

真留「小鳥遊さんから電話がかかって来たのをいいことに、逃げ出そうとしたんです。それを私が目ざとく見つけて、さっきまでつきっきりで仕事をしていた……というわけです」

悠「なるほど……」

久秀「愚かだわ」

朱金「勘弁してくれよぉ……オレぁ、デスクワークは苦手なんだよォ」

真留「苦手だからと遠ざけていては、いつまでも苦手のままですよ、遠山さま」

悠「まぁ、それはそれとして、ちょっとこれを見てくれないか?」

そういっておれは、さっきの投書を差し出した。
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