ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
鼎「いやあん、おいしくてほっぺたが落ちそうですわぁ。うーん、シ・ア・ワ・セ☆」
詠美「ん……こういう食べ方をしたのは今日が初めてだけど。それでも、これがとてもおいしいお肉だというのは、わかるわ」
十兵衛「相変わらず堅苦しいねぇ、詠美は。美味けりゃ何でもいいじゃないか」
吉音「うーん、こんなにおいしいと、ご飯も進むねっ」
悠「ってお前、ちゃっかり飯炊いてきたのかよ」
それ、うちの米と炊飯器だろ。
吉音「まあまあ、堅いこといわないの。ほら、悠も食べていいから」
だから、そもそもうちの米だっつーの。
寅「……」
久秀「あら、帰るの?せっかくのお肉なのに」
寅「いらねぇ脂肪がつく。こっちは減量中で匂いも毒だ」
久秀「大変ねぇボクサーも。クスクス」
悠「っか、お前それ以上どこを減量するんだって話しだけどな力石みたいになるぞ」
寅「そうなったらお前をノックアウトしてやるよ」
悠「やだー……」
っか、その後に死んじゃうんだぞ。力石は……。
想「ふふ……こういうのも、たまには良いものですね」
吉音「ほらほら、想いちゃんも食べて食べて」
想「ええ、いただいてますよ」
皆それぞれ、焼き肉を楽しんでいる様子だった。
佐東さんは見事な腕前で、材料を綺麗に切りそろえて見せてくれた。最上級のロース、カルビにハラミ、タンやミノなど、テーブルの上にはあらゆる肉が並べられている。
そしておれはと言えば、それをコンロのうえで忙しく焼いていた。
吉音「えー、なんで?焼き肉は半生が美味しいんだって、さっきいってたじゃない」
朱金「白肉の方は、きっちり焼かなきゃいけねえんだよっ」
真留「しろにく……ですか?」
朱金「白肉ってのは、内臓肉の通称だよ。モツとかミノとか。逆にロースやカルビは赤肉って言うんだ」
由佳里「じゃあ、ハラミは赤肉ですか?」
光姫「いや、色こそは赤いが、分類上はハラミは白肉なんじゃ。だからしっかり焼かないといけないのじゃよ」
由佳里「へえ~、そうなんですかぁ」
朱金「だから、カルビは焼き過ぎたら美味くねえんだって。ああ、こっちの肉はもう食べごろだぜ」
あっちのコンロでは朱金が亜もをし切っているようだ。鍋奉行ならぬ、網奉行といったところか。……ああ、そういえば本職のお奉行様でしたっけ。で、こっちの網では……
はじめ「む……」
佐東さんも今は、調理係ではなく食べる方にまわっていた。なのだが……。
悠「……」
はじめ「う」
うまく箸で肉が掴めないらしい。つまむ端から、肉がころころとにげていく。
悠「どうしたんだ?やっぱり、見えてないと掴みにくいとか?」
はじめ「そうじゃない。匂いがするから、どこで何が焼けてるのかは把握できている。ただ……ボクは、箸使いはあまり得意じゃないんだ」
悠「……そうなのか」
見たところ箸の持ち方は普通だけど……。そういや以前、動いていないものはわかりにくい、みたいなことをいってたっけ。もしかして今のは強がりだったのかな?
悠「しょーがないですね……ほら、あーん」
おれは、今佐東さんが取ろうとしていた肉を、自分の箸でひょいと摘む。
はじめ「え?」
悠「おれが食べさせてあげますよ。ほれ、あーん」
はじめ「あ……あーん」
悠「ん」
素直に佐東さんは口を開ける。おれはそこに、ひょいと肉を投げ込んでやる。
はじめ「…………もぐもぐ」
悠「美味しいですか?」
はじめ「…………ん」
肉を呑みこみながら、佐東さんは頷いた。
悠「次はどれにします?」
はじめ「……右の方。カルビが焼けている。」
悠「わかりました。……はい、あーん」
佐東さんのリクエストに応えて、おれはカルビ肉をつまむ。
はじめ「あーん…………もぐもぐ」
悠「……」
おれが差し出す肉を、佐東さんは美味しそうに租借する。ごっくん。
はじめ「……ありがとう」
悠「あ?」
はじめ「……何でも無い。次はタン塩が食べたい」
悠「あいあい」
何だか、子犬に餌付けをしている気分になって来た。相手はあの佐東はじめさんだというのに、なんかこう、妙に可愛らしいというか、なんというか。
鼎「いやあん、おいしくてほっぺたが落ちそうですわぁ。うーん、シ・ア・ワ・セ☆」
詠美「ん……こういう食べ方をしたのは今日が初めてだけど。それでも、これがとてもおいしいお肉だというのは、わかるわ」
十兵衛「相変わらず堅苦しいねぇ、詠美は。美味けりゃ何でもいいじゃないか」
吉音「うーん、こんなにおいしいと、ご飯も進むねっ」
悠「ってお前、ちゃっかり飯炊いてきたのかよ」
それ、うちの米と炊飯器だろ。
吉音「まあまあ、堅いこといわないの。ほら、悠も食べていいから」
だから、そもそもうちの米だっつーの。
寅「……」
久秀「あら、帰るの?せっかくのお肉なのに」
寅「いらねぇ脂肪がつく。こっちは減量中で匂いも毒だ」
久秀「大変ねぇボクサーも。クスクス」
悠「っか、お前それ以上どこを減量するんだって話しだけどな力石みたいになるぞ」
寅「そうなったらお前をノックアウトしてやるよ」
悠「やだー……」
っか、その後に死んじゃうんだぞ。力石は……。
想「ふふ……こういうのも、たまには良いものですね」
吉音「ほらほら、想いちゃんも食べて食べて」
想「ええ、いただいてますよ」
皆それぞれ、焼き肉を楽しんでいる様子だった。
佐東さんは見事な腕前で、材料を綺麗に切りそろえて見せてくれた。最上級のロース、カルビにハラミ、タンやミノなど、テーブルの上にはあらゆる肉が並べられている。
そしておれはと言えば、それをコンロのうえで忙しく焼いていた。
吉音「えー、なんで?焼き肉は半生が美味しいんだって、さっきいってたじゃない」
朱金「白肉の方は、きっちり焼かなきゃいけねえんだよっ」
真留「しろにく……ですか?」
朱金「白肉ってのは、内臓肉の通称だよ。モツとかミノとか。逆にロースやカルビは赤肉って言うんだ」
由佳里「じゃあ、ハラミは赤肉ですか?」
光姫「いや、色こそは赤いが、分類上はハラミは白肉なんじゃ。だからしっかり焼かないといけないのじゃよ」
由佳里「へえ~、そうなんですかぁ」
朱金「だから、カルビは焼き過ぎたら美味くねえんだって。ああ、こっちの肉はもう食べごろだぜ」
あっちのコンロでは朱金が亜もをし切っているようだ。鍋奉行ならぬ、網奉行といったところか。……ああ、そういえば本職のお奉行様でしたっけ。で、こっちの網では……
はじめ「む……」
佐東さんも今は、調理係ではなく食べる方にまわっていた。なのだが……。
悠「……」
はじめ「う」
うまく箸で肉が掴めないらしい。つまむ端から、肉がころころとにげていく。
悠「どうしたんだ?やっぱり、見えてないと掴みにくいとか?」
はじめ「そうじゃない。匂いがするから、どこで何が焼けてるのかは把握できている。ただ……ボクは、箸使いはあまり得意じゃないんだ」
悠「……そうなのか」
見たところ箸の持ち方は普通だけど……。そういや以前、動いていないものはわかりにくい、みたいなことをいってたっけ。もしかして今のは強がりだったのかな?
悠「しょーがないですね……ほら、あーん」
おれは、今佐東さんが取ろうとしていた肉を、自分の箸でひょいと摘む。
はじめ「え?」
悠「おれが食べさせてあげますよ。ほれ、あーん」
はじめ「あ……あーん」
悠「ん」
素直に佐東さんは口を開ける。おれはそこに、ひょいと肉を投げ込んでやる。
はじめ「…………もぐもぐ」
悠「美味しいですか?」
はじめ「…………ん」
肉を呑みこみながら、佐東さんは頷いた。
悠「次はどれにします?」
はじめ「……右の方。カルビが焼けている。」
悠「わかりました。……はい、あーん」
佐東さんのリクエストに応えて、おれはカルビ肉をつまむ。
はじめ「あーん…………もぐもぐ」
悠「……」
おれが差し出す肉を、佐東さんは美味しそうに租借する。ごっくん。
はじめ「……ありがとう」
悠「あ?」
はじめ「……何でも無い。次はタン塩が食べたい」
悠「あいあい」
何だか、子犬に餌付けをしている気分になって来た。相手はあの佐東はじめさんだというのに、なんかこう、妙に可愛らしいというか、なんというか。