ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

越後屋「ほいっ」

と、越後屋が佐東さんに向かってキロ5万の肉を投げた。

はじめ「むんっ」

一瞬、剣が光を反射したように見えた。と。

朱金「うおっ!?」

コンロの真正面に座っていた朱金の目のまえに、均等にスライスされたマツザカ牛が振って来た。肉はコンロのうえに規則正しく並んで落ち、じゅわっといい音をあげる。

吉音「す……すっごーい」

光姫「ふむ、こりゃ大したものじゃのう」

た……確かにこれは凄腕だ。

越後屋「さあ、遠慮のう食べてくださいな。肉ならいくらでもあるさかいなー」

この最高級肉が、いくらでもあるのか。越後屋の財力、おそるべしだな。

悠「……」

越後屋「続いていくでー」

次に投げたのは……たまねぎ?

はじめ「やっ」

気合とともにたまねぎもスライスされ、コンロのうえに落ちる。

越後屋「そらっ」

つづいてキャベツ、そしてトウモロコシ。

悠「トウモコロシ」

光姫「トウモロコシじゃ」

朱金「野菜ばっかじゃねえか。ケチケチすんなっての」

越後屋「わかってますがな。次はタン塩いくでー」

はじめ「たあっ」

居合い一閃。タン塩が、芸術的なまでに薄くスライスされ、炭火のうえに舞い落ちる。

鼎「きゃあん、わたしタン塩大好きー」

越後屋「どや?たいした腕前やろ、うちの用心棒は」

越後屋がそういうと、あちこちから賞賛の声と拍手が沸き起こった。

はじめ「…………」

おや。目隠しのせいで表情はよく分からないけど、佐東さんもなんだか嬉しそうな様子だ。

吉音「ねーねー、次、あたしにやらせてー」

悠「いくら何でも、お前にゃ無理だろ」

吉音「わかってるよぅ。そうじゃなくて、投げる方」

そっちか。

越後屋「ああ、ええで。ほな、次の肉な」

吉音「やったー☆んじゃいっちゃん、いくよー」

はじめ「どんとこい」

悠「ドンとこーいっ!」

すぱぱぱっ。吉音が投げた肉塊を、見事な腕前で切り裂く佐東さん。

吉音「おー、すごいすごい」

朱金「そんじゃ、さっそくいただくぜっ」

真留「あっ、それは私が焼いていたお肉ですよぅ」

越後屋「取り合い何ぞせんでも、いくらでもあるいうたやろ。ほな、徳田さん」

吉音「はいなっ。そりゃ」

はじめ「ふんっ」

すぱぱぱ。また肉が空中でスライスされ、コンロに落ちる。

真留「わーい、いただきまーす。」

由佳里「光姫様、私たちもいただきましょう」

光姫「そうじゃな。ほっほっほっ、実にうまそうじゃ」

朱金「おい、そっちのもう焼けてるぜ。さっさと食わねえと焦げちまうぞ」

輝「えー、まだ生やけだよ?」

朱金「肉ってのは半生くらいが一番うまいんだよ。ほら、これなんか食べごろだぜ」
44/100ページ
スキ