ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー大江戸学園:空き家ー
息をひそめ、身を隠しながら、しばらくあとをつけていると、男が建物の中に入っていってしまった。あまり手入れをされていない、空き家のような建物だが……。
悠「どうする?」
由真「そんなの決まってるでしょ」
由真は足音も立てずに建物に忍び寄り、そのまま奥へと進んでいく。置いていかれてはたまらないと、おれも慌ててそのあとを追う。
壁伝いにしばらく進むと明りのついた部屋があった。おれと由真は目配せを交わし、部屋の中の様子を窺うべく聞き耳を立てる。
手下A「遅かったな。なにかあったのか?」
店主「いや、別に。店主なんてやってると、いろいろと面倒な仕事が多くてな……それより、ねずみやはどうなったんだ?」
手下B「午後から普通に店を開けてたみたいだぞ」
店主「それだけか?」
手下A「ああ。これといって、他になにもなかったな」
店主「ちっ……オーナーのところに押しかけるくらいはすると思ってたのに」
手下B「やっぱり、砂糖だけなんて言わずに、もっといろいろ盗みだすべきだったんじゃないか?」
店主「バカ。それじゃ大事になっちまうだろ。嫌がらせ程度に思わせとくのが重要なんだ。ねずみやを煽ってオーナーと争わせて、またオーナーにやる気を出させれば、いちごやも盛り返すだろうし」
手下A「そうすれば俺たちの懐も、また潤ってくれるんだがな」
手下B「なんとか上手くいってもらいたいもんだぜ」
~~
由真「ふーん。こいつらが犯人だったわけね。」
悠「よかったな。早まって越後屋に乗りこんだりしなくて」
由真「…………」
悠「いや、だって……そうだろ?危うくこいつらの思い通りになるところだったんだから」
由真「ふんっ」
素直に認めるのが悔しかったからか、由真は不満そうに鼻を鳴らして、男たちの方に視線を戻す。
~~
店主「そういえば、盗んできた砂糖はどうしたんだ?」
手下A「ん?まだそっちの部屋に置いてあるぞ」
店主「バカ野郎。どこかに捨てとけっていっただろ」
手下B「でも、せっかく苦労して盗みだしたのに、捨てちまうのはもったいなくないか?」
手下A「そうだよ。どこかに売りつけて金にするとか……なんならおまえの店で使っちまったって……」
店主「あんなのを売ったところで端金にしかなんねえよ。おまけに足がつくだろうが。証拠が残らないように、とっとと捨てに行くぞ」
~~
由真「やばっ。このままじゃ……」
悠「どうする?」
由真「どうするって……そっか。犯人が分かったんだから、このまま捕まえちゃえばいいじゃん」
悠「それもそうだな。いや、待て。お前、その格好で人前に出るのはヤバくないか?」
由真「あ……」
自分の身体を見下ろして、由真が言葉を失った。
悠「猫目としての仕事だったら、姿を見られてもたいして問題じゃないだろうけど……ねずみやの件に、そんな恰好をしたヤツがでてきたらおかしいもんな」
由真「でも……じゃあ、どうしろっていうのよ?黙って見ろっていうの?」
悠「…………しゃーない。おれがなんとかするよ」
由真「え?」
悠「三人くらいなら、なんとかなるだろ」
実際には、そう簡単にいくなんて思っていないが、とにかく覚悟を決めて鯉口を切る。
由真「ちょっと、アンタ……」
悠「見つからないように、ちゃんと隠れてろよ」
由真の言葉を遮り、おれは戸に手をかけた。
息をひそめ、身を隠しながら、しばらくあとをつけていると、男が建物の中に入っていってしまった。あまり手入れをされていない、空き家のような建物だが……。
悠「どうする?」
由真「そんなの決まってるでしょ」
由真は足音も立てずに建物に忍び寄り、そのまま奥へと進んでいく。置いていかれてはたまらないと、おれも慌ててそのあとを追う。
壁伝いにしばらく進むと明りのついた部屋があった。おれと由真は目配せを交わし、部屋の中の様子を窺うべく聞き耳を立てる。
手下A「遅かったな。なにかあったのか?」
店主「いや、別に。店主なんてやってると、いろいろと面倒な仕事が多くてな……それより、ねずみやはどうなったんだ?」
手下B「午後から普通に店を開けてたみたいだぞ」
店主「それだけか?」
手下A「ああ。これといって、他になにもなかったな」
店主「ちっ……オーナーのところに押しかけるくらいはすると思ってたのに」
手下B「やっぱり、砂糖だけなんて言わずに、もっといろいろ盗みだすべきだったんじゃないか?」
店主「バカ。それじゃ大事になっちまうだろ。嫌がらせ程度に思わせとくのが重要なんだ。ねずみやを煽ってオーナーと争わせて、またオーナーにやる気を出させれば、いちごやも盛り返すだろうし」
手下A「そうすれば俺たちの懐も、また潤ってくれるんだがな」
手下B「なんとか上手くいってもらいたいもんだぜ」
~~
由真「ふーん。こいつらが犯人だったわけね。」
悠「よかったな。早まって越後屋に乗りこんだりしなくて」
由真「…………」
悠「いや、だって……そうだろ?危うくこいつらの思い通りになるところだったんだから」
由真「ふんっ」
素直に認めるのが悔しかったからか、由真は不満そうに鼻を鳴らして、男たちの方に視線を戻す。
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店主「そういえば、盗んできた砂糖はどうしたんだ?」
手下A「ん?まだそっちの部屋に置いてあるぞ」
店主「バカ野郎。どこかに捨てとけっていっただろ」
手下B「でも、せっかく苦労して盗みだしたのに、捨てちまうのはもったいなくないか?」
手下A「そうだよ。どこかに売りつけて金にするとか……なんならおまえの店で使っちまったって……」
店主「あんなのを売ったところで端金にしかなんねえよ。おまけに足がつくだろうが。証拠が残らないように、とっとと捨てに行くぞ」
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由真「やばっ。このままじゃ……」
悠「どうする?」
由真「どうするって……そっか。犯人が分かったんだから、このまま捕まえちゃえばいいじゃん」
悠「それもそうだな。いや、待て。お前、その格好で人前に出るのはヤバくないか?」
由真「あ……」
自分の身体を見下ろして、由真が言葉を失った。
悠「猫目としての仕事だったら、姿を見られてもたいして問題じゃないだろうけど……ねずみやの件に、そんな恰好をしたヤツがでてきたらおかしいもんな」
由真「でも……じゃあ、どうしろっていうのよ?黙って見ろっていうの?」
悠「…………しゃーない。おれがなんとかするよ」
由真「え?」
悠「三人くらいなら、なんとかなるだろ」
実際には、そう簡単にいくなんて思っていないが、とにかく覚悟を決めて鯉口を切る。
由真「ちょっと、アンタ……」
悠「見つからないように、ちゃんと隠れてろよ」
由真の言葉を遮り、おれは戸に手をかけた。