ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「でも、ずいぶんひねくれた嫌がらせだな。泥棒に入るなんてリスクの高いことやっておきながら、盗んだのは砂糖だけなんて……」

由真「こんなことするの、きっとあいつに決まってるわ」

悠「あいつって?」

由真「越後屋よ、越後屋」

悠「あー……」

なぜだろう。妙に納得できてしまう……っが、微妙に越後屋の手段とも思えない気がする。

由真「この前のいちごやのことといい、いちいちウチのを目の敵にして……なんなのよ、もー!!」

結花「落ちつきなさいって。まだ越後屋さんがやったって決まったわけじゃないでしょう?」

由真「でも、こんなことするヤツ他に居るわけ無いじゃん」

唯「ボクもそう思うけど証拠がないからね。」

由真「ウチの砂糖さえ見つければ、それ自体が証拠になるでしょ」

悠「もしかして、越後屋のところに乗りこむつもりだったのか?」

由真「そうよ」

悠「……はぁ~」

あきれて物も言えないとは、こういうときに使う言葉なんだろう。

結花「そんなことして、もしなにも見つからなかったらどうするつもりなのよ?」

唯「だいいちさ、乗り込んでったところで、素直に調べさせてもらえると思ってるの?」

由真「それは……」

悠「なにも考えてなかったんだな」

由真「うっさいわね!アンタは黙っててよ!」

悠「はいはい」

結花「とにかく、どう動くか決めるのは情報を集めてからよ。それまではおとなしくしてにさい」

由真「でも……」

結花「返事は?」

由真「…………わかったわよ」

しぶしぶとだが由真が頷くのを見て、結花さんが安心したように息を吐く。そのあとで、いつもの笑顔をおれに向けて来た。

結花「騒がしくしてごめんなさいね」

悠「おれは構いませんけど……店、どうするんですか?」

結花「そうね……とりあえず砂糖を補充して、午後からでもあけるようにするわ。唯、買いだしはお願いね。」

唯「ほ~いっ」

結花「由真は料理を手伝って。今日は軽食をメインにして、なんとか誤魔化すから。」

由真「……うん」

結花「じゃあ小鳥遊くん、私たちはこれで」

悠「はい。頑張ってくださいね」

結花さんは笑顔で小さく手を振り、唯ちゃんと一緒に由真の手を引いて店へと戻っていった。

ふむ……なんだか面倒なことになってるみたいだな。おれも由真と同じように越後屋が怪しいと思うが、結花さんが言うように証拠がないし……。

まあ、結花さんたちの出方が決まらないうちは、おれに手伝えることなんてなにも……。

……いや、ひとつだけあるか。


~数時間後~


「…………」

『にゃぁ~~っ』

「こら。おとなしくしなさいって。気づかれちゃったらどうすんのよ」

悠「こんな夜更けに、どこに出かけるんだ?」

「え?」

現れた人影はおれの声に驚いて、きょろきょろと辺りを見回している。おれは暗がりからいどうして、その人影のまえに姿を露わした。
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