ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
そして、ある日の放課後のこと。
朱金「まったくよー。つまんねーことするやつがいたもんだな」
悠「……」
店のベンチを陣取った朱金が、さっきからずっとクダを巻いている。久秀か吉音が居てくれれば、追い返してもらいたいところだが、生憎とまだ店に顔を出していない。
そういえば、また光姫さんに呼ばれているとかいってた気が……。
朱金「なんでこんなつまんねーことするかなぁ」
悠「……」
おれが答えないのはわかっているのに、朱金は構わず声を張る。せめてなにか注文でもしてくれれば、少しは相手をしてやる気も……。
朱金「誰かさんが逢岡になんか告げ口をしてくれたおかげで、いちごやがつまんねー店になっちまったんだよなー」
悠「…………」
いや。注文を受けたとしても、相手をするのはやめておこう。ねちねちと愚痴を聞かされそうだ。どうせ朱金は、いちごやのことを逢岡さんに伝えたのがおれだと知ってるんだし。
そう。唯ちゃんのいう正攻法とは、奉行所に届け出ることだったわけだ。派手な露出や過剰なスキンシップは、風紀上問題があるのではないか、とな。
結果、いちごやは注意を受け、衣装やサービスの見直しをさせられたらしい。そのせいで集客力が落ち、ねずみやなどの、以前からあった店の客が戻り始めたそうだ。
由真「いらっしゃいませー。カウンターのお席にどうぞー」
悠「やれやれ」
となりの店から元気な声が聞こえてくることに、安堵している自分が居る。まあ、こうじゃないと調子が狂うしな。後は吉音が来れば、いつも通りなんだが……。
朱金「あーあーつまんねーなー、まったく」
悠「…………」
早く吉音に来てもらって、朱金をどうにかしてもらいたいものだ。
由真「だからさー、そんなこと何度もされても困るっていってるでしょ!」
悠「……あ?」
いつも賑やかなとなりの店から、ひときわ大きな声が響いてきた。
由真「っていうか迷惑なんだってば!他のお客さんが驚いてるでしょーが!」
悠「……」
聞き耳を立てるまでもなく聞こえてくる声に、何事かと思っていると、不意にドアが開いた。そして、声の主を先頭にして、数人の男子生徒がぞろぞろと店の外に出てくる。
由真「まったく……」
足を止めた由真が、あきれた顔をして振り返る。すると、いきなり男子生徒たちが土下座し始めた。
男子生徒A「ほんの出来心だったんです!」
男子生徒B「ちょっと偵察に行ってみるだけのつもりで……そしてた、その……」
男子生徒C「とにかく俺たち、由真さんに一言謝りたくて……」
由真「いいから、そういうの。もうやめてくんない?ホント迷惑なんだけど」
悠「……なんなんだ、これは?」
唯「いちごやに浮気してたお客さんが、由真姉に謝りに来たんだよ」
悠「唯ちゃん?」
いつの間にやって来たのか、おれの横にたち、由真たちの様子を眺めて楽しげに笑っていた。
唯「あの人たち、由真姉目当ての常連さんなんだけど、なんとか許してもらおうと必死なわけ。まっ、浮気しちゃう気持ちはわかるけどね。由真姉ってば愛想は振りまくけど、いちごやのお姉さんみたいに、お触りとかさせてくれるわけじゃないし。ね~っ、悠さんっ♪」
悠「おれに振るのはやめてほしいんだが……」
この間、みっともない姿を見せてしまっただけに、返す言葉がなにもない。そんなふうにおれが唯ちゃんにもてあそばれている内に、向こうの話に蹴りがついたようだ。
由真「とにかく、少しでも私に悪いと思うんだったら、これからもウチの店に来て、いっぱい注文をすること。わかった?」
男子生徒たち「「「はい!」」」
由真「返事はいいから、さっさと立って中に入りなさいよ」
周りを木にする由真にせかされ、土下座していた男たちが店の中に戻っていった。
そして、ある日の放課後のこと。
朱金「まったくよー。つまんねーことするやつがいたもんだな」
悠「……」
店のベンチを陣取った朱金が、さっきからずっとクダを巻いている。久秀か吉音が居てくれれば、追い返してもらいたいところだが、生憎とまだ店に顔を出していない。
そういえば、また光姫さんに呼ばれているとかいってた気が……。
朱金「なんでこんなつまんねーことするかなぁ」
悠「……」
おれが答えないのはわかっているのに、朱金は構わず声を張る。せめてなにか注文でもしてくれれば、少しは相手をしてやる気も……。
朱金「誰かさんが逢岡になんか告げ口をしてくれたおかげで、いちごやがつまんねー店になっちまったんだよなー」
悠「…………」
いや。注文を受けたとしても、相手をするのはやめておこう。ねちねちと愚痴を聞かされそうだ。どうせ朱金は、いちごやのことを逢岡さんに伝えたのがおれだと知ってるんだし。
そう。唯ちゃんのいう正攻法とは、奉行所に届け出ることだったわけだ。派手な露出や過剰なスキンシップは、風紀上問題があるのではないか、とな。
結果、いちごやは注意を受け、衣装やサービスの見直しをさせられたらしい。そのせいで集客力が落ち、ねずみやなどの、以前からあった店の客が戻り始めたそうだ。
由真「いらっしゃいませー。カウンターのお席にどうぞー」
悠「やれやれ」
となりの店から元気な声が聞こえてくることに、安堵している自分が居る。まあ、こうじゃないと調子が狂うしな。後は吉音が来れば、いつも通りなんだが……。
朱金「あーあーつまんねーなー、まったく」
悠「…………」
早く吉音に来てもらって、朱金をどうにかしてもらいたいものだ。
由真「だからさー、そんなこと何度もされても困るっていってるでしょ!」
悠「……あ?」
いつも賑やかなとなりの店から、ひときわ大きな声が響いてきた。
由真「っていうか迷惑なんだってば!他のお客さんが驚いてるでしょーが!」
悠「……」
聞き耳を立てるまでもなく聞こえてくる声に、何事かと思っていると、不意にドアが開いた。そして、声の主を先頭にして、数人の男子生徒がぞろぞろと店の外に出てくる。
由真「まったく……」
足を止めた由真が、あきれた顔をして振り返る。すると、いきなり男子生徒たちが土下座し始めた。
男子生徒A「ほんの出来心だったんです!」
男子生徒B「ちょっと偵察に行ってみるだけのつもりで……そしてた、その……」
男子生徒C「とにかく俺たち、由真さんに一言謝りたくて……」
由真「いいから、そういうの。もうやめてくんない?ホント迷惑なんだけど」
悠「……なんなんだ、これは?」
唯「いちごやに浮気してたお客さんが、由真姉に謝りに来たんだよ」
悠「唯ちゃん?」
いつの間にやって来たのか、おれの横にたち、由真たちの様子を眺めて楽しげに笑っていた。
唯「あの人たち、由真姉目当ての常連さんなんだけど、なんとか許してもらおうと必死なわけ。まっ、浮気しちゃう気持ちはわかるけどね。由真姉ってば愛想は振りまくけど、いちごやのお姉さんみたいに、お触りとかさせてくれるわけじゃないし。ね~っ、悠さんっ♪」
悠「おれに振るのはやめてほしいんだが……」
この間、みっともない姿を見せてしまっただけに、返す言葉がなにもない。そんなふうにおれが唯ちゃんにもてあそばれている内に、向こうの話に蹴りがついたようだ。
由真「とにかく、少しでも私に悪いと思うんだったら、これからもウチの店に来て、いっぱい注文をすること。わかった?」
男子生徒たち「「「はい!」」」
由真「返事はいいから、さっさと立って中に入りなさいよ」
周りを木にする由真にせかされ、土下座していた男たちが店の中に戻っていった。