ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました
ー???ー
同じ頃。とある武家屋敷へと舞台は移る。
半鐘と火消しの声が遠くに聞こえるなか、屋敷では豪華な食事を並べた宴席が儲けられていた。
膳を前にした男たちは身なりもよく、帯刀もしている所から、皆それなりに身分のある者だと推測できる。
そのなかでも、周囲より御前と呼ばれ、上座についている男は、特に身分が高い者のように思われた。
外の騒がしさを聴きながら、御前と呼ばれる男は満足げに杯を干した。
「なかなか派手にやっているようだな。」
「すべては手はず通りに進んでおります。先ほども御前の言葉を伝えましたところ、期待に応えんと、士気と御前への忠誠は高まるばかりにございます」
「ふふふ、そうか。頼もしいやつらよ。」
「執行部、奉行所も捕らえること出来ぬ天狗党の名声は今や学園中に知れわたりつつあります。あとは全校集会の日の大計画さえ成功すれば吉彦様失踪ですでに地に落ちている現幕府執行部の威信に止めを刺すでしょう。そこで御前が世直しの旗を手に名乗りをあげますれば…」
「幕府の実権、自ら我が手の内に…というわけか」
「左様に御座います」
「わははは。容易いのう!」
御前の笑に追従するようにその場の男たちもついて笑った。
ただ端の膳についていたひとり人の女だけが笑っていなかった。
「そない大笑いしはるにはまだ早いのとちゃいますか?」
御前は首をかしげた。
「何?元はといえばこの企てはお前がだしたものではないか」
「確かにそうですけど、今はまだ計画のまだほんの触りですわ。」
天狗党の幹部らしき男が口を挟んだ。
「しかし計画はすべて順調に進んでおるではないか」
「なんもかんも人間のすることや。今はようても、いつどこから綻びが出るか分からしまへんで?上のもんが気を引き締めな、下のもんが上手いこと動くはずがあらへん。確かにウチの計画は完璧や。けどコマが思い通りに動いてくれるとは限りまへんしな」
天狗党の男たちは一様に女の方へ向き直った。
「貴様、我らをコマというか!」
「あんたらも御前もみんなコマや。コマが好き勝手動いて、役目を果たさんのやったら、ウチようケツ持てまへんえ?」
「控えよ!御前のご威光なくしてはお前の策などすべて机上の空論」
御前はなだめるように手を軽く上下に振った。
女に詰め寄る幹部はピタリと動きが止まる。
「よいよい。確かにお前のいうとおり気を引き締めなくてはならん。だがお前も慎重すぎるのではないか?今や幕府執行部は将軍不在の烏合の衆。全校集会での計画さえ成功すればあとは赤子の手を捻るようなものだ」
「ほんまに烏合の衆と言い切れますか?奉行所や火盗かて指をくわえて見てる訳やない」
御前は刀の柄を撫でながらいった。
「ふん、いざとなれば俺がこの剣で蹴散らしてやるわ。」
「御前の剣の腕前はなまっちろい執行部の奴らが束になってもかないますまい」
「まさに天狗のごとし」
「そうですか、そこまで自信がありはるんやったら、うちはもう何もいいまへん」
女は浮かれる男達を乾いた目で見ながらくっと杯を干すと、立ち上がった。
女は軽蔑した目をして屋敷を後にした。
「つかえまへんわ」
同じ頃。とある武家屋敷へと舞台は移る。
半鐘と火消しの声が遠くに聞こえるなか、屋敷では豪華な食事を並べた宴席が儲けられていた。
膳を前にした男たちは身なりもよく、帯刀もしている所から、皆それなりに身分のある者だと推測できる。
そのなかでも、周囲より御前と呼ばれ、上座についている男は、特に身分が高い者のように思われた。
外の騒がしさを聴きながら、御前と呼ばれる男は満足げに杯を干した。
「なかなか派手にやっているようだな。」
「すべては手はず通りに進んでおります。先ほども御前の言葉を伝えましたところ、期待に応えんと、士気と御前への忠誠は高まるばかりにございます」
「ふふふ、そうか。頼もしいやつらよ。」
「執行部、奉行所も捕らえること出来ぬ天狗党の名声は今や学園中に知れわたりつつあります。あとは全校集会の日の大計画さえ成功すれば吉彦様失踪ですでに地に落ちている現幕府執行部の威信に止めを刺すでしょう。そこで御前が世直しの旗を手に名乗りをあげますれば…」
「幕府の実権、自ら我が手の内に…というわけか」
「左様に御座います」
「わははは。容易いのう!」
御前の笑に追従するようにその場の男たちもついて笑った。
ただ端の膳についていたひとり人の女だけが笑っていなかった。
「そない大笑いしはるにはまだ早いのとちゃいますか?」
御前は首をかしげた。
「何?元はといえばこの企てはお前がだしたものではないか」
「確かにそうですけど、今はまだ計画のまだほんの触りですわ。」
天狗党の幹部らしき男が口を挟んだ。
「しかし計画はすべて順調に進んでおるではないか」
「なんもかんも人間のすることや。今はようても、いつどこから綻びが出るか分からしまへんで?上のもんが気を引き締めな、下のもんが上手いこと動くはずがあらへん。確かにウチの計画は完璧や。けどコマが思い通りに動いてくれるとは限りまへんしな」
天狗党の男たちは一様に女の方へ向き直った。
「貴様、我らをコマというか!」
「あんたらも御前もみんなコマや。コマが好き勝手動いて、役目を果たさんのやったら、ウチようケツ持てまへんえ?」
「控えよ!御前のご威光なくしてはお前の策などすべて机上の空論」
御前はなだめるように手を軽く上下に振った。
女に詰め寄る幹部はピタリと動きが止まる。
「よいよい。確かにお前のいうとおり気を引き締めなくてはならん。だがお前も慎重すぎるのではないか?今や幕府執行部は将軍不在の烏合の衆。全校集会での計画さえ成功すればあとは赤子の手を捻るようなものだ」
「ほんまに烏合の衆と言い切れますか?奉行所や火盗かて指をくわえて見てる訳やない」
御前は刀の柄を撫でながらいった。
「ふん、いざとなれば俺がこの剣で蹴散らしてやるわ。」
「御前の剣の腕前はなまっちろい執行部の奴らが束になってもかないますまい」
「まさに天狗のごとし」
「そうですか、そこまで自信がありはるんやったら、うちはもう何もいいまへん」
女は浮かれる男達を乾いた目で見ながらくっと杯を干すと、立ち上がった。
女は軽蔑した目をして屋敷を後にした。
「つかえまへんわ」