ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「ここは思い切って、直接聞いてみるのがいいんじゃないか?」

由真「直接って……お客さんに?」

悠「ああ。それが一番てっとり速いだろ?」

由真「でも……」

客から直接、自分の店に関する事を聞くのは抵抗があるのか、由真は躊躇っているようだった。

悠「なんなんらおれが聞いてやろうか?」

由真「……ううん。ウチの店のことだから」

悠「そうか…。」

自分に言い聞かせるように答えて、由真は女の子たちの後を追いかけた。

由真「ねぇ、ちょっといいかな?」

女子生徒A「……あ、由真さん。なんですか?」

由真「その……最近、ウチの店ってなにか変ったと思う?」

女子生徒B「え?別になにも……」

由真「でも……ほら、ね?えっと……」

女子生徒「……」

歯切れの悪い由真の様子に、女の子たちも状況を察したらしい。なにやら言いづらそうに、目配せし合っている。

女子生徒A「ねずみやは別に変ってないと思いますよ、本当に。でも……」

由真「でも?」

女子生徒B「なんだか大通りに新しい喫茶店が出来たとかで、そっちに行ってる人が多いって聞きました。特に男子が」

由真「新しい喫茶店?」

由真が尋ねるように顔を向けてきたが、おれも覚えがないので首を横に振る。

女子生徒A「確か、越後屋さんのお店らしいですよ」

悠「越後屋の?」

その瞬間、越後屋がウチの店にやって来た時のことが脳裏によみがえる。なるほど。ねずみやに対してあれこれいっていたし、無関係ってことはなさそうだ。

ひとまず女の子たちに礼を言って別れ、改めておれ達は顔を見合わせる。

由真「どう思う?」

悠「越後屋が関わってるとなると、その新しい喫茶店ってのが怪しいな」

唯「じゃあ、偵察に行ってみよっか?」

悠「え?」

由真「唯?アンタなんでここに……」

唯「お客さん、今の人たちしか居なかったし、見送るついでに由真姉のこと探しに来たの。そしたらこんなトコで悠さんとイチャイチャしてるなんてさ」

由真「何いってるのよ!?私はただコイツと話してただけで、別にイチャイチャなんて……」

唯「やだ~、由真姉。なに慌てちゃってるの?冗談に決まってるじゃん」

由真「っ、くぅ~……」

苦々しい顔をする由真を、唯ちゃんがニヤニヤと見つめている。口を挟んで飛び火されても困るので黙っていると、その眼差しが、ふいっとおれの方を向いた。

唯「話しは途中からしか聞いてないけど、ウチの状況って、その新しい喫茶店のせいかもしれないんでしょ?なら、偵察に行ってみた方がいいんじゃない?」

悠「まあ、確かにな」

由真「じゃあ、さっそく……」

唯「ちょっと待った!」

気を取り直して大通りに向かおうとした由真の手を、唯ちゃんが掴んで引きとめた。

由真「なによ?」

唯「いくらお客さんが少ないからって、お店を放って行く気なの?」

由真「唯と結花姉がいれば大丈夫でしょ?」

唯「そんなのズルイ~」

由真「ズルイって……」
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