ｰ新宿:茶屋小鳥遊堂ｰ

悠「えーと、なになに……「絵を売らないケチと、売れるのに絵を描かないしみったれがいるから、なんとかしろ」」

越後屋「そういうことやさかいに、よろしゅう!」

…………やっぱりこの人は、目安箱ってシステムを大きく誤解している……。

悠「あのですな、目安箱は便利屋ではありませんから」

越後屋「投書の内容に応えるのが、義務やおまへんか!」

悠「なんでもっーわけでは……」

越後屋「御託はよろしい!」

ダメだ、聞く耳を持ってくれなさそうだ。……まあ、これだけだと話しも分からないし、ちょっと事情でも聞いてみるか。

悠「じゃあ、ひとまず経緯を教えてくれよ」

越後屋「ほなしっかり聞くんやで」

悠「あ、必ず力になるとは約束できないからな。内容による」

越後屋「由比さんが、ある三人から絵をもらったことが発端なんやけど……」

悠「……」

……こっちの話しを、完璧に聞いてない気がする。この分だと……どんな内容でも、協力させられそうだな……うぅ。


～越後屋説明中～

越後屋「……という事情や。なんとかしてもらえるようお願いするわ」

悠「ええと……由比さんは絵を譲らない。新しい絵を描いてもらおうと頼んでも、あの三人は断る。こういう話しで、いいんだよな?」

越後屋「その絵は、将来絶対いい値がつく。なのに、利益も求めず、才能も無駄にする。ウチには信じられへん。誰も得せーへんどころか、明らかに損しかしてへんやん。こんなこと許されへんわ!」

悠「……それは諦めてくれ、越後屋」

越後屋「なんでや!?」

悠「由比さんも三人も、損してないからだよ。利益とか得とかは関係ないんだ」

越後屋「関係ないことなんてあらへん!人は生きている以上、利益なしでは生きられまへんぇ!誰かの利益が、別の誰かの利益になることもある。その連鎖で、世の中も人生も成り立ってる。それを堰き止めるなんて、お天道さんもウチもゆるしまへんでぇ!」

悠「いいたいことは分かるが、こういうのは個人の自由……」

越後屋「なら、あの絵を手に入れるのはウチの自由や!!」

悠「それはさすがに屁理屈だろ!」

越後屋「ああもう、このままでは拉致があきまへん……行くでぇ!」

悠「あー?行くって、どこに?」

越後屋「決まっとる!あの三人のところや!」

悠「でも今のままだと無理だと思……って、なんでおれの腕を掴んでるんだよ!」

越後屋「どうにかならないとこをどうにかするのが、あんたの仕事やろ!」

悠「だから、目安箱はそういうものじゃな……」

越後屋「さぁ、学園へ戻るで!」

悠「うわぁぁぁぁ!」




ｰ大江戸学園:教室ｰ

おれが泣こうが叫ぼうが越後屋は一切構わず、結局ここまで引きずられるようにしてきてしまった。店、閉めてすらないのに……開店休業状態とはまさにこのことか。ははは……久秀にバレたら焙られるわ…。

越後屋「ん、まだいてくれはったわ。あそこの子やで」

つばめ「……」

悠「……ああ、やっぱりつばめか」

話しを聞いたとき、多分そうかなと思ってたが、予想通りだ。ということは、残りふたりは平和と信乃だろうなぁ……。