ｰ大江戸学園:廊下ｰ

越後屋「……これだから、物の価値が分からない方達は……はぁ、これほどの腕前が有れば、好んで欲しがる者も大勢おります。大金を積む方もいらはるでしょ。その絵の価値が分からないと仰るのであれば、ウチに引き取らせてもらえまへんか?」

雪那「えっ?」

越後屋「無論、騙しとるような真似はしまへん。いくらなら譲ってくれはりますか?」

雪那「……いえ、いくらあっても譲りません」

越後屋「なんで?この絵に、価値があると考えてへんのに?」

雪那「お金になる価値はどうでもいいんです。私のために描いてくれた気持ちが、遥かに高い価値があるんです。これは、お金などでは……いえ、他のどんなものであっても、手放しません」

越後屋「……話しにならしまへんな」

雪那「ええ、そこは同感です」

越後屋「ならば……そちらのお三方!」

平和「はい?」

信乃「えっ?」

つばめ「ほえ?」

越後屋「絵を描いて、ウチにそれを譲っていただけません?由比さんと違い、ウチはタダでもらうようなことはしまへん」

平和「先生には、あげたかったからあげたのでござるよ」

信乃「欲しいなんて言われてないし……」

つばめ「ですよねー」

越後屋「なら、ウチにもどうか一枚……いや、二枚でも三枚でも、描いておくれやす。悪いようにはしまへん」

平和「でも私たちは、探偵団の仕事で忙しいのでござる」

信乃「あの絵は、私たちからの感謝の気持ちで……だからな!」

つばめ「これからはまた、探偵活動に戻ります～」

越後屋「そ、そこをなんとか、ウチのために描いてくださいよ。よろしゅう頼みます。」

平和「いやでござる」

信乃「探偵活動しないとだもんね」

つばめ「ですわ」

越後屋「あ、あんさんら、頑固もいい加減にせんと、いい加減ウチも……!」

平和「さ、そろそろ行くでござるよ」

信乃「はい。失礼いたします」

つばめ「ごきげんよ～」

越後屋「あ、ちょっ、話しはまだ……ああああぁぁぁ……!」




ｰ新宿:茶屋小鳥遊堂ｰ

悠「ふわわわぁ……今日はまた、全然客が少ないなぁ。久秀は本職の花火屋生業、吉音も見回りに飛び出していったきりで、帰ってこないし。儲からないのはまずいんだが、たまにはこんな日があってもいいかな……」

越後屋「小鳥遊さん!」

悠「うわぁいらっしゃいませ!」

突然の大声に、驚きと条件反射の挨拶が同時に混ざってしまった。我ながら情けない……。

越後屋「いらっしゃいやあらへん!これ、入れとくさかいに!!」

悠「……あー?」

いきなり現れたかと思ったら、目安箱になにやら手紙らしきものを放りこむ。

越後屋「…………」

悠「……?」

越後屋「なんで中を見ぃへんねん!」

悠「えっ?あ、はい」

目安箱って、そういう風に確かめるシステムじゃないと思うんだが……。っか、すぐ読んでほしければ、直接手渡せばいいのに……。まぁ、視線が怖いから何も言いませんけどね。