ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

開けて翌日、放課後。

神さんの安否はまだ確認できていない。大き過ぎる学校というのは、こういう時に困る。

悠「あー……大丈夫だろうか、須美さん……」

吉音「だっ、大丈夫だよ、悠……きっと、たぶん」

悠「励ましてくれるんなら、もっと自信を持って励ましてくれると嬉しいんだけどな」

吉音「ごめん……」

シオン「大丈夫だ。ああ、間違いない。確実だ」

悠「シオンはもう少し不安そうに言ってくれ」

シオン「注文の多いヤツ」

悠「……」

シオンは不機嫌そうな顔で嘆息した。どうしてシオンがここにいるのかといえば、おれと吉音で拝み倒して連れてきたからだ。青龍軒から連絡が来たときのことを考えると、シオンもいっしょにいてくれた方がいいと思ったからだ。

思ったからなんだけども……心配している目のまえであからさまに面倒がられるというのは気分が良くない。

シオン「しかし、分からん。仮に大丈夫でなかったとしても、それはあの女の自業自得。お前には関係ないだろ」

悠「関係あるとかないとかじゃなく、心配だろ、普通は!」

シオン「おまえの普通をわたしに押し付けるな」

悠「うっ……い、いや、おれがいいたいのは、そういうことじゃなくて……」

とにかく何か反論しようとしたところで、横から急に知らない男の声が割りこんできた。

「眠利シオンさん、ですね。」

シオン「そうだが、何のようだ?」

「青龍軒からの伝言です。女を返してほしく場、すぐに闘剣場へ来て勝負しろ、だそうです」

シオン「行かなかったら?」

悠「シオン!」

「こなかったときは女に苦しんでもらう、と」

シオン「そうか、可哀想に」

悠「他人事みたいに言ってる場合じゃないだろ!」

吉音「そうだよっ、助けに行かないとっ!」

シオン「どうしてわたしが?」

悠「どうしてって……」

「ああ、それから、眠利さんが動かない場合は、お二人が無理にでも連れてくるように、とのことです」

吉音「分かった!」

というなり、吉音はシオンの袖を掴んで引っ張ろうとする。その手を乱暴に振り払うシオン。

シオン「やめろ、皺になる!」

吉音「だって、早くいかないと!」

悠「あっ……そうだ、シオン。言ってくれたら、なんでも好きなものを食べさせてやるぞ」

……って、これで動いてくれるのは吉音や鬼島さんで、シオンはこういうのじゃ釣られてくれないよ!

シオン「よし分かった、行こう」

悠「え?」

シオン「帰ったら、かならず食べさせてもらうからな」

悠「え……あ、ああ、うん……」

おれを見つめるシオンの目つきがかなり妖しい気がするのは、この際、気がつかなかった事にしよう。いまは須美さんを助けに行くのが最優先だ。

シオン「さあ、行くぞ。二人とも!」

吉音「うんっ」

悠「あ、ああ……そうだな」

そこまで乗り気になられると本気で後が怖いのだけど、うん……まあ、今は考えないようにしよう……。
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