ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー闘剣場ー

吉音「あっ、悠。それにシオンさんも!もしかして応援に来てくれたの?」

悠「そんなわけねぇだ……」

吉音「はい、悠。これ、あげるね。」

悠「あー?新、これは?」

おれが吉音の手から反射的に受け取ったのは、ずっしり重たいものを包んだ小風呂敷包みだった。

吉音「賞金だって。いっぱいもらえたんだよ」

悠「それはいいんだけど……どうしておれに?」

吉音「だって悠、いってたでしょ。今月も赤字になりそうで厳しいっって」

悠「えっ、もしかして……このために、闘剣に……?」

吉音「うん……あたし、役に立てたかなぁ?」

悠「……あ、ああ、うん。ありがとうな」

吉音「えへへー」

そんな嬉しそうな顔で照れ笑いされては、きつく叱るなんて、できないじゃないか……。

悠「でも、これからはおれにひと言、いってからにしような」

吉音「うん、わかった」

シオン「……随分と微笑ましいことで」

隣でシオンがあきれ顔をしている。急に恥ずかしくなって、思わず咳払いなんかしたときだった。

須美「青龍軒……!」

それまでずっと黙っていた須美さんの憎々しげなつぶやき、おれ達は一斉に試合場へと視線を向けた。

司会「ニューカマーの大活躍で大興奮の会場に、満を持してこの人の登場だぁ!!連勝記録を絶賛更新中!最強剣士、青龍軒!!」

青龍軒「うおおおおっ!!」

悠「うわ……すごい人気だな」

吉音「なんかね、ふたりいっぺんに相手するって聞いたよ」

悠「そういえば、一対一だと賭けにならないくらい強いんだっけ」

須美「……」

須美さんはおれの声も耳に入ってない様子で、歓喜に応える青龍軒を睨みつけている。

シオン「せっかくだ。あいつがどの程度やるのか、見せてもらうとしよう」

悠「……」

シオンはシオンで、すっかり観戦モードだ。……って、シオンがこうもはっきり他人に興味を持つのも珍しいのか?実はひそかに、来た早々飽きて帰ってしまうことも期待していたりしたのだけど……。

シオン「どうした、悠。わたしの顔がそんなに魅力的か?」

悠「えっ、ち、違う。なんでもないんだ」

なんとなく横顔を見つめていたら急に振り向かれて、返事がドモってしまった。

シオン「魅力的かどうか聞いて、何でも無い、と答えられると花。すまない、自惚れていたよ」

悠「ああっ、違う。そういう意味でもなくっ……あ、ほら、もう試合が始まるぞ」

シオン「ふっ……そうみたいだな」

おれの拙い誤魔化しに、シオンはすんなり乗ってくれた。

司会「さあ始まった、本日のメェンエイベント!一級闘士ほふたり同時に相手取って、青龍軒はどう勝つのかぁ!?」

男子生徒C「くそっ、俺たちが負けるのは決定なのかよ……っ」

男子生徒D「まあ実際、勝てる気しねぇけどな」

青龍軒「ふん……いつかかってきてもいいんだぞ」

男子生徒C「くっ、舐めやがって……!」

男子生徒D「が、実際、隙が見当たらねぇ」

青龍軒「こないのなら、こちらから行くぞっ!」

男子生徒C「う、うあぁっ!」

青龍軒「ぬうぅんっ!!」

ザシュッ!
男子生徒C「ぐっはあぁ!!」

男子生徒D「あっ!早すぎるぞ、てめぇ!」

青龍軒「ぬぅおおぉっ!」

男子生徒D「くっそ!せめて一発!」

青龍軒「甘い!」

ザシュッ!ザシュッ!
男子生徒D「……まっ、こうなる……よな……」

司会「きっ……決まったぁ!必殺剣、龍の爪だぁ!青龍軒、圧勝!!二人がかりの一級闘士を歯牙にもかけない貫禄の勝利っ!!」
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