ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:大通りー

シオン「少し、寒いな……女を抱きたい……そこらに落ちていないものか……」

「やあぁっ!!」

シオン「……ほう。落ちているものだな、意外と」

女子生徒「兄の仇ぃ!」

男子生徒「ふんっ!」

女子生徒「あぁっ!!」

シオン「……なんだ、男もいたのか」

男子生徒「むっ、誰だ?」

シオン「ただの通りすがりだ……が、今夜のお前は運が悪い。私はいま、女が抱きたくてたまらないんだ」

女子生徒「う……うぅ……」

男子生徒「……では、勝手に連れて帰るがいい」

シオン「おや?此処は、邪魔立てするなと斬りかかってくる流れじゃないのか?」

男子生徒「俺は、闇討ちしてきたその女に反撃して来ただけだ。用はないから、後は貴様の好きにしろ」

女子生徒「くっ……ま、待て……っ……」

シオン「行ってしまったな」

女子生徒「あなた……わ、わたしを、どうする気です……?」

シオン「興が削がれた」

女子生徒「……え?」

シオン「奪い取るのは好きだが、施されるのは嫌いなんだ」

女子生徒「ぁ……ッ……」




ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

京は珍しく、開店早々から客がひとり、入っていた。

シオン「あふ……」

眠たげな顔で欠伸を漏らしている、この人だ。

悠「随分と眠たそうだな」

おれが、お茶と干菓子を差し出しながら話しかけると、シオンはもうひとつ欠伸を噛み殺しながら頷いた。

シオン「昨夜はつまらないことで夜更かししてしまったからな。ああ、眠い。つまらない」

悠「眠いなら、自分の部屋に戻って昼寝でもしたらどうだ?」

シオン「ひとりで寝るのもつまらない……ああそれとも、おまえが一緒に寝てくれるのか?」

悠「見ての通り、いまは営業中なんだけど」

シオン「どこを見ても、客は他に見当たらないがな」

悠「ぅ……」

シオン「くっくっ、楽しいなぁ。悠をからかうのは」

悠「おれは楽しくないけどな」

シオン「なら、ふたりで楽しめることをしようか」

悠「だから、今は営業中なんだって」

シオン「ふふっ」

妙にっやめ貸しい仕草ですり寄ってくるシオンを、おれは後ろ髪引かれつつ両手で押してやった。はぁ……こんなことなら、吉音にお使いを頼むんじゃなかった。久秀も今日はいないし。

おれひとりじゃもう、いっぱいいっぱいだよ……。

悠「シオン、頼むからからかうのはやめてくれ。もういっぱいいっぱいだ」

シオン「からかっているとは酷いな。私はいつでも本気だ」

ささやきながら、またもしな垂れかかってくるシオン。

悠「おいおい……、店を開けてるんだぞっ」

シオン「良いじゃないか。いつ客が来るかもしれないスリルが癖になるかもしれないぞ」

悠「それ、本当に癖になっちゃったらどうするんだよ!」

シオン「さあ?」

悠「THE無責任!」

おれが慌てれば慌てるほど、シオンはいっそう楽しげな顔になる。
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