ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

真留「小鳥遊さんっ!」

悠「おわぁっ?真留っ……びっくりしたぁ……いきなりなんだよ」

真留「さぁさぁさぁっ!今日という今日は白状してもらいますよっ!」

悠「あー……まあまてって……ほら、今お茶淹れるから」

真留「そんなことよりもですねっ……」

悠「お茶請けに団子も付けるよ?」

真留「そ、そこまで仰るならいただきましょう……」

……真留もノリのいい奴だな。おれは奥から番茶と団子を持って真留に出してやる。

悠「はい、団子一個おまけしといたから」

真留「ありがとうございますっ!では……いただきまーす!んぐもぐっ……んんっ、甘くておいしいですぅー!」

団子で頬をぷっくり膨らませながら、真留は幸せそうな溜息をもらす。岡っ引きなんて大変な仕事をしているけど、こうして甘いものを食べてるときは年相応の女の子の顔だ。

悠「それで?来るなり叫んでたけど、なにかあったの?」

真留「そう!そうれしゅっ……んっ、んぐぅ!の、のどにお団子が……」

悠「えぇっ!お茶っ!お茶呑んで流してっ!」

真留「んっ、んっ……ぷはぁっ!ああ、びっくりしたぁ……」

悠「そりゃこっちのセリフだよ……まあこれで少しは落ち着いた?」

真留「はい、すみません……」

悠「じゃあ改めて聞くけど、なにかあったの?」

真留「実は昨夜、また番屋看板が盗まれたんです……」

悠「なんだって?!」

真留「ここ最近はそういったことはなく平和だったんです。それで安心していたところまたやられました……」

市松がまた犯行を再開したってことだろうか。

長谷河さんに温情をかけられ、見逃してもらったのに、反省してないんだなアイツ。

悠「……」

真留「小鳥遊さんや火盗も、今回の一件を捜査しているんですよね?なにか犯人の手掛かりを掴んでませんか?情報が有れば教えていただきたいんです!」

悠「そ、そうだなぁ……」

真留の真摯な態度に、おれは目をそらし言葉を濁す。此処で市松のことを告げれば、長谷川さんの行動はすべて無駄になってしまう。真留には悪いけど、黙っておいた方が事を大きくせずに済みそうな気がした。

真留「……」

悠「おれたちも特に何も掴んでないんだ……悪いな……」

真留「そうですか……火盗の、長谷河様ならあるいはと思ったのですが……」

しょんぼりと肩を落とす真留を見て、罪悪感にさいなまれる。悪いな、真留。すぐになんとかするから。本当に市松が犯行を再開したのなら、今度こそ止めないといけない。

その日の夜、吉音を帰してからすぐにおれは長谷河さんに連絡を取った。電話に出るなり、長谷河さんはいの一番に、市松のことか、と切りだしてきた。





ー大江戸学園:路地裏ー

市松「はぁっはぁっはぁっ……」

「そんなに慌ててどこへ行く?」

市松「……っ!誰だっ!」

平良「火付盗賊改方、長谷河平良」

市松「……鬼平っ!くそぉっ!」

平良「悠っ、そっちへ行ったぞ!」

悠「あいよっ!」

長谷河さんに進路を塞がれ、踵を返した市松の前に出る。
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