ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー大江戸学園:番屋前ー
吉音「あはは……追い出されちゃったね」
悠「町方と火盗、悪事を取り締まるって意味じゃ同じ役目のはずなんだけどなぁ」
似た役目だからこそ、ライバル視してるってことなのかな。
平良「素直に協力するとは思っていなかったが……やれやれ、真留の頭の固さには困ったもんだ」
悠「真留も自分の仕事に誇りを持ってるからな。意地があるんだと思うよ」
平良「まあ、北町が独自で捜査を進めたいというんなら止めはしない」
悠「あー?随分と余裕があるみたいだな」
平良「実はな、もう犯人の手掛かりは掴んでいるんだ」
吉音「ええっ!それなら教えてあげればててのに!」
平良「こちらとしてはそのつもりだったんだが、真留には取りつく島もなかっただろう?」
吉音「あー……そっかぁ……」
平良「目安箱に投書があったということなら、お前達も事件の顛末を知る必要があるだろう。気になるなら捕り物の時に声をかけてやるが、どうする?」
悠「そうだなぁ、おれたちに手伝えることがあるならやりたいし、乗りかかった船でもあるから、頼むわ」
平良「わかった。動くときには連絡を入れるとしよう」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
あれから数日たった。真留に話しを聞きにいったあの後も、番屋へのイタズラは続いているらしい。昨日も、なにか情報が無いかとウチの店に聴きこみに来ては、なかなか犯人に近づけないと愚痴っていた。
さりげなく長谷河さんたち火盗との協力を促しても、真留は聞き入れてくれない。意地でも自分たちで解決させるつもりなんだろうなぁ。
一日の営業を終え、部屋に戻って休もうとしていたとき、携帯が鳴った。あれ……携帯何処だっけ。音はしてるから……あー、あんなところにあった。
平良『もしもし、悠か?私だ』
悠「長谷河さん?どうした、こんな遅くにデートの誘い?」
平良『今から出られるか?番屋のイタズラの件、今夜ケリを着ける。』
冗談は無視された。っか、犯人が見つかったってことか!
悠「わかった、すぐ向かう。どこにいけばいい?」
おれは長谷河さんからの電話を切ると、すぐに指定された場所に向かった。吉音にも連絡しようと思ったけれど、もう寝ている時間だったのでやめておいた。あとで仲間外れだーってスネられそうだけど。
ー町はずれの空き家ー
長谷河さんが教えてくれた場所は、町はずれにある空き家だった。そこでは長谷河さんと、ひとりの男子生徒が対峙していた。
平良「来たか悠」
悠「長谷河さん、もしかして彼が?」
平良「ああ、一連のイタズラの犯人だ。ヤツの足元を見てみろ」
悠「番屋の看板に、街の地図……これって番所から盗まれたって言う」
平良「証拠は十分だ……なにか申し開きはあるか?」
男子生徒「くっ……」
長谷河さんに問われて、男子生徒は悔しそうに唇を噛んだ。暴れたりして抵抗しないのは、ここに踏み込まれた時点で逃げられないと観念したからだろう。
男子生徒「俺がやったと、どうしてわかったんだ……」
平良「犯人が誰で、どこで盗みやイタズラを働くかは分からなかったさ。私が掴んでいたのは、この空き家がアジトとして使われているという事だけだった。この裏でたびたび不審な日があがっているのが目撃されていてな、調べていたんだよ。すぐに火を着けていた人間を捕え、事情を聞いてもよかったんだが……ふと、思いついてな。先の番屋の件と、人気のない場所の不審火……この二つは繋がっているんじゃないかとな」
悠「番屋へのイタズラと不審火……これがどう繋がるんだ?」
平良「犯人は番所へ嫌がらせをしたかった、だから看板や地図を盗んだ。では、その盗んだ品はどうする?番所の看板なんて、よほどのマニアじゃなけりゃ誰も欲しがらない。持っていてもかさばるし、自分の犯行を裏付ける証拠になってしまう。だから犯人は処分する必要があった。ゴミに出すには看板は大き過ぎる、それなら燃やしてしまえばいいと、そう考えた。違うか?」
男子生徒「…………」
平良「数日張りこんで、此処に出入りしているのがお前だと分かった。あとは言い逃れできないように、番屋からの帰りを待って踏み込めばいい。そうすれば、犯人は証拠を持って帰ってくるからな」
悠「すごい……そこまで考えてたなんて……」
男子生徒「参りました……完敗です……」
長谷河さんの手中で自分が泳がされていたことを知った彼は、がっくりと肩を落とし、罪を認めた。
平良「ここではなんだ、場所を変えよう。話しを聞かせてもらう」
吉音「あはは……追い出されちゃったね」
悠「町方と火盗、悪事を取り締まるって意味じゃ同じ役目のはずなんだけどなぁ」
似た役目だからこそ、ライバル視してるってことなのかな。
平良「素直に協力するとは思っていなかったが……やれやれ、真留の頭の固さには困ったもんだ」
悠「真留も自分の仕事に誇りを持ってるからな。意地があるんだと思うよ」
平良「まあ、北町が独自で捜査を進めたいというんなら止めはしない」
悠「あー?随分と余裕があるみたいだな」
平良「実はな、もう犯人の手掛かりは掴んでいるんだ」
吉音「ええっ!それなら教えてあげればててのに!」
平良「こちらとしてはそのつもりだったんだが、真留には取りつく島もなかっただろう?」
吉音「あー……そっかぁ……」
平良「目安箱に投書があったということなら、お前達も事件の顛末を知る必要があるだろう。気になるなら捕り物の時に声をかけてやるが、どうする?」
悠「そうだなぁ、おれたちに手伝えることがあるならやりたいし、乗りかかった船でもあるから、頼むわ」
平良「わかった。動くときには連絡を入れるとしよう」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
あれから数日たった。真留に話しを聞きにいったあの後も、番屋へのイタズラは続いているらしい。昨日も、なにか情報が無いかとウチの店に聴きこみに来ては、なかなか犯人に近づけないと愚痴っていた。
さりげなく長谷河さんたち火盗との協力を促しても、真留は聞き入れてくれない。意地でも自分たちで解決させるつもりなんだろうなぁ。
一日の営業を終え、部屋に戻って休もうとしていたとき、携帯が鳴った。あれ……携帯何処だっけ。音はしてるから……あー、あんなところにあった。
平良『もしもし、悠か?私だ』
悠「長谷河さん?どうした、こんな遅くにデートの誘い?」
平良『今から出られるか?番屋のイタズラの件、今夜ケリを着ける。』
冗談は無視された。っか、犯人が見つかったってことか!
悠「わかった、すぐ向かう。どこにいけばいい?」
おれは長谷河さんからの電話を切ると、すぐに指定された場所に向かった。吉音にも連絡しようと思ったけれど、もう寝ている時間だったのでやめておいた。あとで仲間外れだーってスネられそうだけど。
ー町はずれの空き家ー
長谷河さんが教えてくれた場所は、町はずれにある空き家だった。そこでは長谷河さんと、ひとりの男子生徒が対峙していた。
平良「来たか悠」
悠「長谷河さん、もしかして彼が?」
平良「ああ、一連のイタズラの犯人だ。ヤツの足元を見てみろ」
悠「番屋の看板に、街の地図……これって番所から盗まれたって言う」
平良「証拠は十分だ……なにか申し開きはあるか?」
男子生徒「くっ……」
長谷河さんに問われて、男子生徒は悔しそうに唇を噛んだ。暴れたりして抵抗しないのは、ここに踏み込まれた時点で逃げられないと観念したからだろう。
男子生徒「俺がやったと、どうしてわかったんだ……」
平良「犯人が誰で、どこで盗みやイタズラを働くかは分からなかったさ。私が掴んでいたのは、この空き家がアジトとして使われているという事だけだった。この裏でたびたび不審な日があがっているのが目撃されていてな、調べていたんだよ。すぐに火を着けていた人間を捕え、事情を聞いてもよかったんだが……ふと、思いついてな。先の番屋の件と、人気のない場所の不審火……この二つは繋がっているんじゃないかとな」
悠「番屋へのイタズラと不審火……これがどう繋がるんだ?」
平良「犯人は番所へ嫌がらせをしたかった、だから看板や地図を盗んだ。では、その盗んだ品はどうする?番所の看板なんて、よほどのマニアじゃなけりゃ誰も欲しがらない。持っていてもかさばるし、自分の犯行を裏付ける証拠になってしまう。だから犯人は処分する必要があった。ゴミに出すには看板は大き過ぎる、それなら燃やしてしまえばいいと、そう考えた。違うか?」
男子生徒「…………」
平良「数日張りこんで、此処に出入りしているのがお前だと分かった。あとは言い逃れできないように、番屋からの帰りを待って踏み込めばいい。そうすれば、犯人は証拠を持って帰ってくるからな」
悠「すごい……そこまで考えてたなんて……」
男子生徒「参りました……完敗です……」
長谷河さんの手中で自分が泳がされていたことを知った彼は、がっくりと肩を落とし、罪を認めた。
平良「ここではなんだ、場所を変えよう。話しを聞かせてもらう」