ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸城膝元:特設ステージー

爆炎に呑みこまれ、ステージ中に響き渡る爆発音。誰の目にも無残にそして冷酷に爆発に呑みこまれ二人は戦闘不能になった……。

シンっと静まり返る会場だが、そんなことも関係無しに輝の実況が入る。

『おおっと、なんということだぁ。小鳥遊悠と右京山寅の両名が爆死してしまった!しかし、この場合一太刀入れているわけではないのでどうしたらいいのでしょうか。』

久秀は吐き捨てるようにいった。

「再起不能になったんだからおしまいでしょうが、なんなのバカなの?死ぬの?」

「再起不能……ならなっ!」

「は?」

おれは爆炎を二つに裂いた。その後ろで寅がいった。

「クソアマが……テメーだけは。殴り飽きるまでボコボコしてやる。」

久秀は少しばかり驚いたようだが、冷静に扇子を構えなおし口元を隠して、冷淡にいった。

「よく無事だったわね。」

「悪運が……強いんだよ。」

おれはそういったものの両手の平が悲鳴をあげていた。爆炎が目のまえに迫った瞬間、風衝壁(風のバリア)を使った。しかし……爆炎は周りの空気(かぜ)を燃やしつくし威力を増す。薄皮一枚の寸前で無理矢理バリアごと爆炎を引き裂いたのだ。

しかし、まずい……とっさに回避はできたが龍剄気孔の連発は無理だし。例え使っても熱量次第では……より、火力を増さしてしまう。

久秀はいった。

「しつこい奴ね……。でも、いいわ、燃やしつくしてあげる。爆刃!」

ヒュンっと小さく、そして素早く扇子をなぎ払う。ボッと破裂音が鳴るとともに刃状の炎が飛んできた。寅はちゃっかり射程外に逃げていたが、おれは間に合わず龍剄を発動する。バシュッ!目のまえで風壁に阻まれ、目のまえで裂する。これは精神的にもきつい……。

「ジッとしてんじゃねぇ!テメェも間合い詰めろ!」

寅は相変わらずのフットワークで迫りくる爆炎の刃を避け、時には蹴り払って消し去っている。かなり無茶してるが火のかたまりでないなら払い切れる威力らしい。そして……一度大爆発を使うとしばらく使えないのか久秀はさっきみたいな大技を繰り出してこない。なら、寅のいう通り間合いをつぶしてしとめる。

おれも動いた。さっきはあっちこっちに逃げ回ると互いがぶつかるように久秀は爆発を操作してきた。この女は、技もえげつないが、その頭の良さ、策略のほうがえげつないとおれは思う。

なので、右へ右へ右へと移動する。寅とおれで円を描きつつ徐々に間合いを詰めていく。今も四方八方、爆破し続けるなか先に責めたのは寅だった。

「オラァっ!」

「くっ……!」

寅の打撃は大の男がしっかりとガードしても身体がブレるほど重い。出鼻の爆撃は予想外だったが、今はもうそのネタもバレている。ヒット&アウェイでガンガン攻めていく寅。

「悪いな、おしまいだ。」

おれは卑怯かとも思ったがそんな悠長なこといってるヒマはない。刀を抜いて背後から斬りかかった。

ガンッ!堅い手ごたえ……。

「その程度のことを読めないほど愚かではないわ!」

後ろ手に扇子でおれの斬撃を受け止めぐっと手首を捻るとおれの身体が浮いた。そして一回転して背中から地面に落下する。

「グぇッ!?」

これは合気……。この女、やっぱり伊達じゃない。しかも、追い打ちとばかりにおれを踏みつけた。

「ふふっ、いい格好ね。」

久秀はそういうと扇子を一度閉じて腰に着けてある扇子ホルダーに突っ込むとすぐに抜き取った。足の下に居るからこそ何をしたのか分かった。リロードだ。火薬を扇子につけ直した。おれは叫んだ。

「寅!距離開けろ!大きなのが来るぞ!」

「チッ!」

おれが宣言した通り大振りから、大爆発が正面一帯を包んだ。爆炎の壁だ。茫然としてると横腹に鈍い衝撃がはしった。この女、蹴り飛ばしやがった。

「げっ…ふ!」

「いつまで久秀の足の下で楽しんでるの」

「ごふっ……おれはそんなんで喜ぶ趣味はねよ」

話してる間も久秀は扇子をあおいで爆炎の壁を維持している。完全に寅とおれを分断しているのだ。そして、マズイことに背は壁。完全に袋の鼠だ。
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