ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ーねずみやー
由真「ねえ」
悠「あー?」
由真「なんかガンバってるみたいじゃない」
悠「がんばってるって?」
由真「だから……御前試合」
悠「ああ。まあ、それなりにな」
由真「優勝目指してるの?」
悠「まさか。ただの腕試しだよ」
悠「師匠が勝手にエントリーしなければ、出ようなんて思ってもいなかったわけだし」
由真「でも、ここまで勝ち残ってるんだし……真面目に目指してもいいんじゃない?優勝」
悠「あー……まあ、目指すだけならタダだしな。あ、そうだ。もし優勝したらさ、商品お前にやるよ」
由真「え?」
思いつきで口から出たことだが、案外いい考えかもしれない。
悠「手作りクッキーなんてもらっちまったわけだし、その礼ってことでさ。おれは目的がうって出場したわけじゃないから、そこまでやる気があるわけじゃないんだ。でも、優勝して商品をお前にプレゼントするって約束があれば、ちょっとは気分も変わるかなってさ」
由真「バカじゃないの。そんなわけわかんない約束とか……そもそも私の方がお礼でクッキー作ったのに、そのお礼とかいわれても困るんだけど」
悠「いいだろ。動機づけってのは大切もんなんだから。それにおれは嘘もつくし逃げも隠れもするが……約束は守る男だぞ」
優勝の約束はできないが、優勝「したら」商品をやる約束くらいはできる。
由真「……」
由真はあきれたような目つきでおれを見つめたあと、ぷいっと顔を横に逸らした。
悠「……」
由真「期待しないで待っててあげるわ」
悠「おう。それでいいさ。期待なんかされても困るからな」
とこか気まずかった空気が和んでくれたおかげで、おれの口も軽くなる。まあ、由真が不機嫌そうなのはいつものことだし、話しをしてくれるなら贅沢は言うまい。ひとまず安堵して、クッキーに改めて手を伸ばす。
「なんかいい雰囲気じゃない?」
悠「ん?」
今、どこかから声が?
「こら。気づかれちゃうでしょ」
悠「んー?」
気のせいじゃないよな。どこかから、ひそひそと話す声が聞こえてくる。その出所を捜すべく、辺りを見渡そうとした時
由真「なんで出てくんのよぉっ!」
いきなりの大声に驚き、由真の方に向き直る。すると由真が、なぜか顔を真っ赤にして、握った拳をぷるぷると震わせていた。いったいどうしたのかと思っていると、店の奥から見馴れた姿が現れる。
結花「もう。唯のせいでみつかっちゃったじゃないの」
唯「えぇ~、結花姉のせいだよ」
悠「結花さんに唯ちゃん?出かけてたんじゃ?」
結花「ええと……それは、その……」
唯「ボクたちがいると、由真姉が恥ずかしがって悠さんにお礼しないから、そういうことに……」
由真「!」
唯「ふむぐっ!?」
その瞬間、由真が目にも留らぬ速さで動き、唯ちゃんの背後へと回りこんで口をふさいだ。
由真「なに訳わかんないこといってんのよ。帰ってきてたなら声掛ければ良いでしょ。驚いたじゃないの」
唯「むぉっ!んぅっ、んんっ!!」
唯ちゃんはジタバタ暴れて抵抗しているが、由真がそれを許さない。小さな身体をしっかり押さえこみながら、ふと視線をおれの方に向けてくる。
由真「用は済んだから、もう帰っていいわよ」
悠「え?でも……」
由真「いいからとっとと帰って寝ちゃいなさいよ。明日も試合があるんでしょ?あ、残りのクッキーは持ってって良いから」
悠「……はあ」
一方的に捲し立てられ、反論することもできず、おれは家へと引き上げる。結花さんが途中まで見送ってくれた。なにやら楽しそうにくすくすと笑っていたが、理由などは一切教えてくれなかった。
由真「ねえ」
悠「あー?」
由真「なんかガンバってるみたいじゃない」
悠「がんばってるって?」
由真「だから……御前試合」
悠「ああ。まあ、それなりにな」
由真「優勝目指してるの?」
悠「まさか。ただの腕試しだよ」
悠「師匠が勝手にエントリーしなければ、出ようなんて思ってもいなかったわけだし」
由真「でも、ここまで勝ち残ってるんだし……真面目に目指してもいいんじゃない?優勝」
悠「あー……まあ、目指すだけならタダだしな。あ、そうだ。もし優勝したらさ、商品お前にやるよ」
由真「え?」
思いつきで口から出たことだが、案外いい考えかもしれない。
悠「手作りクッキーなんてもらっちまったわけだし、その礼ってことでさ。おれは目的がうって出場したわけじゃないから、そこまでやる気があるわけじゃないんだ。でも、優勝して商品をお前にプレゼントするって約束があれば、ちょっとは気分も変わるかなってさ」
由真「バカじゃないの。そんなわけわかんない約束とか……そもそも私の方がお礼でクッキー作ったのに、そのお礼とかいわれても困るんだけど」
悠「いいだろ。動機づけってのは大切もんなんだから。それにおれは嘘もつくし逃げも隠れもするが……約束は守る男だぞ」
優勝の約束はできないが、優勝「したら」商品をやる約束くらいはできる。
由真「……」
由真はあきれたような目つきでおれを見つめたあと、ぷいっと顔を横に逸らした。
悠「……」
由真「期待しないで待っててあげるわ」
悠「おう。それでいいさ。期待なんかされても困るからな」
とこか気まずかった空気が和んでくれたおかげで、おれの口も軽くなる。まあ、由真が不機嫌そうなのはいつものことだし、話しをしてくれるなら贅沢は言うまい。ひとまず安堵して、クッキーに改めて手を伸ばす。
「なんかいい雰囲気じゃない?」
悠「ん?」
今、どこかから声が?
「こら。気づかれちゃうでしょ」
悠「んー?」
気のせいじゃないよな。どこかから、ひそひそと話す声が聞こえてくる。その出所を捜すべく、辺りを見渡そうとした時
由真「なんで出てくんのよぉっ!」
いきなりの大声に驚き、由真の方に向き直る。すると由真が、なぜか顔を真っ赤にして、握った拳をぷるぷると震わせていた。いったいどうしたのかと思っていると、店の奥から見馴れた姿が現れる。
結花「もう。唯のせいでみつかっちゃったじゃないの」
唯「えぇ~、結花姉のせいだよ」
悠「結花さんに唯ちゃん?出かけてたんじゃ?」
結花「ええと……それは、その……」
唯「ボクたちがいると、由真姉が恥ずかしがって悠さんにお礼しないから、そういうことに……」
由真「!」
唯「ふむぐっ!?」
その瞬間、由真が目にも留らぬ速さで動き、唯ちゃんの背後へと回りこんで口をふさいだ。
由真「なに訳わかんないこといってんのよ。帰ってきてたなら声掛ければ良いでしょ。驚いたじゃないの」
唯「むぉっ!んぅっ、んんっ!!」
唯ちゃんはジタバタ暴れて抵抗しているが、由真がそれを許さない。小さな身体をしっかり押さえこみながら、ふと視線をおれの方に向けてくる。
由真「用は済んだから、もう帰っていいわよ」
悠「え?でも……」
由真「いいからとっとと帰って寝ちゃいなさいよ。明日も試合があるんでしょ?あ、残りのクッキーは持ってって良いから」
悠「……はあ」
一方的に捲し立てられ、反論することもできず、おれは家へと引き上げる。結花さんが途中まで見送ってくれた。なにやら楽しそうにくすくすと笑っていたが、理由などは一切教えてくれなかった。