ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ーねずみやー
由真「はい」
悠「え?」
目のまえに突き出されたお皿。その上に並ぶクッキー。意味が分からず、由真の顔を見てみる。
由真「なによ?」
悠「なにって……これは?」
由真「クッキーよ。見れば分かるでしょ」
悠「それはわかるよ。わかるけど……」
由真「なに?」
悠「ええと……もしかして、おれにくれるのか?」
由真「この前のお礼だから」
悠「この前?」
由真「結花姉が調子悪かったとき、お店を手伝ってくれたじゃない」
あの時は勢いで手伝いを申し出てしまったが、結果的にうまくいってよかった。
悠「そういうことなら、遠慮なくいただくとするか」
さっさと寝てしまおうと思ったが、疲れてるだけで、腹が減ってないわけじゃないしな。ジャムやクリームで彩られたクッキーは見た目もきれいで、香ばしい匂いが食欲を刺激する。
悠「焼き立てみたいだけど、もしかして結花さんの手作りだったりするのか?」
由真「…………私だけど」
悠「あー?」
由真「私が作ったのよ。悪い?」
悠「悪くはないけど……料理駄目だったんじゃ?」
由真「これくらいだったら私だって作れるわよ。クッキーなんて分量を量って捏ねて焼くだけなんだから」
悠「でも……」
お菓子っていうのは、その分量が重要なんだと聞くんだが?果たして、いかにも大雑把そうな由真が、きっちり計量をして作ったのかどうか、不安というか……。
由真「なんで食べないのよ?」
悠「いや、食べるって。ちょっと見た目を楽しんでただけだろ」
たとえ味がどうであろうと、由真がせっかく作ってくれたのだから、ありがたくいただくとしょう。まあ、見た目がこれだけ上手にではているのだから、もしかしたら味だって……。
などと自分に言い聞かせながら、クッキーへと手を伸ばす。
悠「がじっ」
由真「……」
悠「!?」
由真「……どう?」
悠「これは……美味い?」
由真「なんで疑問系なのよ!」
悠「まあ待てって」
確認するために、もうひとつ……。クッキーはサクッと芳ばしく焼き上がっていた。ジャムやクリームなどのトッピングのおかげで味に幅があり、甘味もほどよく食べやすい。
由真「いちおう紅茶も淹れたけど?」
食べやすいとはいえ粉モノなので、飲み物があるのはありがたい。湯気の立つカップを受け取ると、さわやかな香りが鼻孔をくすぐる。
悠「お。ありがとう。良い香りだな。ハーブティーか」
由真「うん。疲労回復に効果があるっていうから……あんた最近、疲れてるみたいだし……」
悠「…………」
由真「なによ変な顔して?」
悠「いや。お前って、そういう気遣いとかできたんだ、と思って……」
由真「はあ?」
悠「あ、別に悪い意味じゃなくて……」
由真「今のをどう聞いたら悪い意味以外に聞こえるのよ?」
悠「だからそれは…………まあ気にするなって。ほんと、クッキー美味しいし。ありがとな」
由真「……」
必死に取り作ろうとするおれを、由真が無言で睨んでくる。おれは愛想笑いを浮かべ、同じく無言でクッキーを食べ続けた。だって、下手なことを言うと余計に怒らせてしまいそうだったから……。
そのまましばらく沈黙が続く。
由真とふたりきりという状況のせいもあり、どうも気まずい。なにか由真の機嫌を直せるような話題はないものだろうか?そんなことを考えながら、ひたすらクッキーを食べていると、不意に由真が口を開いた。
由真「はい」
悠「え?」
目のまえに突き出されたお皿。その上に並ぶクッキー。意味が分からず、由真の顔を見てみる。
由真「なによ?」
悠「なにって……これは?」
由真「クッキーよ。見れば分かるでしょ」
悠「それはわかるよ。わかるけど……」
由真「なに?」
悠「ええと……もしかして、おれにくれるのか?」
由真「この前のお礼だから」
悠「この前?」
由真「結花姉が調子悪かったとき、お店を手伝ってくれたじゃない」
あの時は勢いで手伝いを申し出てしまったが、結果的にうまくいってよかった。
悠「そういうことなら、遠慮なくいただくとするか」
さっさと寝てしまおうと思ったが、疲れてるだけで、腹が減ってないわけじゃないしな。ジャムやクリームで彩られたクッキーは見た目もきれいで、香ばしい匂いが食欲を刺激する。
悠「焼き立てみたいだけど、もしかして結花さんの手作りだったりするのか?」
由真「…………私だけど」
悠「あー?」
由真「私が作ったのよ。悪い?」
悠「悪くはないけど……料理駄目だったんじゃ?」
由真「これくらいだったら私だって作れるわよ。クッキーなんて分量を量って捏ねて焼くだけなんだから」
悠「でも……」
お菓子っていうのは、その分量が重要なんだと聞くんだが?果たして、いかにも大雑把そうな由真が、きっちり計量をして作ったのかどうか、不安というか……。
由真「なんで食べないのよ?」
悠「いや、食べるって。ちょっと見た目を楽しんでただけだろ」
たとえ味がどうであろうと、由真がせっかく作ってくれたのだから、ありがたくいただくとしょう。まあ、見た目がこれだけ上手にではているのだから、もしかしたら味だって……。
などと自分に言い聞かせながら、クッキーへと手を伸ばす。
悠「がじっ」
由真「……」
悠「!?」
由真「……どう?」
悠「これは……美味い?」
由真「なんで疑問系なのよ!」
悠「まあ待てって」
確認するために、もうひとつ……。クッキーはサクッと芳ばしく焼き上がっていた。ジャムやクリームなどのトッピングのおかげで味に幅があり、甘味もほどよく食べやすい。
由真「いちおう紅茶も淹れたけど?」
食べやすいとはいえ粉モノなので、飲み物があるのはありがたい。湯気の立つカップを受け取ると、さわやかな香りが鼻孔をくすぐる。
悠「お。ありがとう。良い香りだな。ハーブティーか」
由真「うん。疲労回復に効果があるっていうから……あんた最近、疲れてるみたいだし……」
悠「…………」
由真「なによ変な顔して?」
悠「いや。お前って、そういう気遣いとかできたんだ、と思って……」
由真「はあ?」
悠「あ、別に悪い意味じゃなくて……」
由真「今のをどう聞いたら悪い意味以外に聞こえるのよ?」
悠「だからそれは…………まあ気にするなって。ほんと、クッキー美味しいし。ありがとな」
由真「……」
必死に取り作ろうとするおれを、由真が無言で睨んでくる。おれは愛想笑いを浮かべ、同じく無言でクッキーを食べ続けた。だって、下手なことを言うと余計に怒らせてしまいそうだったから……。
そのまましばらく沈黙が続く。
由真とふたりきりという状況のせいもあり、どうも気まずい。なにか由真の機嫌を直せるような話題はないものだろうか?そんなことを考えながら、ひたすらクッキーを食べていると、不意に由真が口を開いた。