ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

輝「ところで友達って言ってたけど……ズバリ、どういう関係かな?」

好奇心旺盛な輝らしく、文のことも気になるらしい。しかし、迂闊に話せるような事情じゃないしな。とはいえ、何も答えないのも帰って不自然だし……。……ん、そうだ!

悠「あの子のお兄さん、行方不明らしいんだ。連絡が取れなくて、それで捜し回っていて」

輝「行方不明……って、失踪?それとも、事件に巻き込まれたとか?」

悠「それもまだはっきりしないんだ。だから、詳しい事情はあまりいえなくて」

輝「ふむふむ、それじゃ仕方ないねぇ」

悠「で、そんな状態なのに、申し訳ないんだが……もしよかったら、力を貸してもらえないか?」

輝「力を?なにするんだい?」

悠「ほら、輝が出している瓦版、あるだろ。あさこに、尋ね人の記事を載せてもらえないかな」

輝「ああ、なるほど。そういう意味かぁ」

闇雲に捜しても、人ひとり見つけるには学園は広すぎる。だが瓦版なら効果的に情報を手に入れられる気がした。素人考えかもしれないが、しないよりかはいいだろう。

悠「どうだ?もしよかったら、なんだけど」

輝「……いやー、今はまだやらないほうが良いんじゃないかなぁ」

悠「どうして?」

輝「お兄さんのおかれている状況が分からない以上、ことを大っぴらにし過ぎると何が起こるか分からないし。もし悪党に捕まってたら、どんな目に遭わされることやらね」

悠「あ……そういう可能性もあるのか。確かにな……軽率な申し出で、済まなかった」

輝「いいってことさー。ま、話は頭ン中に入れておくよ。関係しそうな情報や噂が入ったら、すぐに知らせるからさ」

悠「ああ、そうしてくれると助かる」

輝「早く見つかるといいね……っと、ごめんよ。そろそろ職務に戻ります!」

悠「ああ、じゃあまたな」

ぺこりと頭を下げる輝に背を向け、おれは小鳥遊堂の奥へと引っ込んだ。文の事は気になるが、今はまた情報収集の段階に戻ったろうし、おれはまだ試合中だ。とりあえず、当初の予定通り、ひと休みといこう……。

輝「……あの、写真の人って……」




ー大江戸学園:広場ー

悠「ふぅぅ……なんとか二日目も無事終わったか」

全身を緩い倦怠感が包みこんでくる。やっぱりどんなに平常心と唱えても、ある程度の緊張と高揚は続いていたらしい。戦い方も一日目の正面対決ばかりでなく、不意打ちや出会いがしらが多くなってきて気が抜けない。

佐東が消えたことは助かるが、寅、左近、疾風迅雷コンビが負けた報告も届いてない。明日は更に厳しい戦いになるんだろうな……。

朱金「よう悠、ずいぶんなご活躍だったじゃねぇか。何度もメインモニターに映ってたぜ」

真留「明日は最初からマークされるかもしれませんね」

悠「朱金に真留か、ありがとう。いやまぐれだよ、いろいろとな……そっちの方も警備は大変なんじゃないか?ギャラリーも盛り上がってるだろうし」

不意打ちをことごとく返り討ちにできたり、佐東が反則負けになったり。ホント勝ってるというより残ってるって状態だな。

朱金「へへっ、ちょっとくらい暴れてくれた方が、こっちのウサ晴らしもできるってもんさ」

真留「遠山様!お気持ちはわかりますが、お奉行様のお言葉ではありませんよっ」

朱金「堅ぇヤツだな真留は。お真央はエントリーしたきゃして良かったんだぞ?」

真留「それは……もう少し腕を磨いてからで……」

朱金「なんだ負けるのが嫌なのか。あんなもん運だ運。ちょっとばかし強くなったところで変わらねーぞ。なぁ悠!」

悠「おれに振るなよ。答えようがないだろ」

朱金「へへへ。まぁとりあえず警備は任せておけよ。大会の邪魔はさせねぇさ」

悠「ああ。明日くらいは積極的に闘ってみるさ」

ここまでこれただけでも上出来だ。師匠たちも許してくれるだろう。

「なんだ、八百長の相談ではないだろうな」

そんな高圧的なセリフで登場したのは、老中の酉居だった。朱金の表情があからさまに曇る。

朱金「誰に向かって口聴いてんだテメェ。しょっ引かれてぇのかよ」

酉居「貴様こそ誰に口を利いている。更迭されたいのか?」

瞬時にそれぞれのお供が色めき立つ。本当に相性が悪いなこのふたりは。あえてもめ事を起こそうとしているふうにしか見えないぞ。
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