ｰ大江戸学園:日本橋近くｰ

輝『あははは!なんたって乱取りを盛り上げるのが、おいらのお役目だからねっ!』

あ、あいつ罵倒されるのを楽しんでやがる……くそう。

手下A「おおーい!こっちに何人かいるぞ!」

男子生徒D「うお!アイツは酉居さんの取り巻きの!」

悠「あー?なんだって……」

騒ぎ過ぎた、っても80%くらいは輝のせいだが、それを嗅ぎつけて猟犬が来たらしい。

手下B「獲物が減ってきて退屈してたところだ。一気にやるぞ!」

手下C「おうよ!」

あらら……二日目でもしっかり徒党を組んでいるらしいな。

雷太郎「おっと、敵だらけだな」

風太郎「ほんと、いっぱいだね」

悠「げっ?!風雷コンビ!」

雷太郎「皆」

風太郎「殺」

雷太郎&風太郎「しっ、だな(ね)。あ(に)は(ひ)は(ひ)は(ひ)は(ひ)!!」

完全に戦闘シンクロしてる。

悠「悪い、おれは逃げる。勝負はまたな」

男子生徒D「ちょうど同じ事を考えた。俺は、お前から逃げるわけじゃないからな!」

悠「わかってるよ!っか、どーでもいいし!」

おれと対峙していた男子生徒は、ほぼ同時にその場を離れて駆けだした。まるでこれはTVゲームの世界だな!




ｰ大江戸学園:裏通りｰ

ふぅ……こっちは静かだな。もしかしたら同じように逃げてきたり、隠れたりしてるひとがいるかもしれないが……主戦場はやっぱり大通りの方になっているみたいだな。

輝『おおっと?これは複数対複数の戦いになりそうです!酉居集団の猛威に対抗するため、野良剣士たちも集団を形成し始めました!これぞ無法乱取りの醍醐味!戦況は刻一刻と変化を続けています!』

へぇ……それは凄いな。最初からそのつもりでいる酉居たちに、烏合の衆じゃ勝つことはできないだろうけれど……少しでも数を減らしてくれることを祈ろう。

悠「逃げ回ってるだけじゃどうにもならないしな。おれもいつかは仕掛けなきゃならないんだから」

また様子を見に行ってみるか……?

男子生徒E「えっ」

悠「あー?」

男子生徒E「きぇぇえああっ!!」

悠「うおおお!!」

出会いがしらかよっ!ちょうど角にさしかかったところで、向こうからも敵が歩いてきていた。おれに気がついた瞬間斬りかかってきたのを、危ないところで避けた。

男子生徒E「てめ、やるなっ……!!」

悠「不意打ちなんか何百回とされたからなっ、逃げ……避けるのだけは得意なんだよ……!」

おれは拳を握って距離を詰める。間合いをあけたら敵が有利。なら、ベタ攻めのインファイト!

男子生徒E「おわっ!こ、こいつ強い……!」

悠「とどめだっ!」

ドゴッ!
男子生徒E「うぐっ……く、此処まで来てっ……」

大通りを覗ける路地裏にまで移動して身を潜め、額の汗をぬぐう。さっき倒した男子生徒が、救護班に抱えられ退場していく。周囲には何事もなかったように、静寂が戻った。

悠「ふーまさか、角を曲がった途端にこうなるとは……」

同じようなことを考えるやつがいるのは当然か、別の参加者と文字通り鉢合わせしてしまった。おれが勝てたのはたまたまだ。一瞬先に攻勢に出られた、それだけだ。ほんのわずかの幸運の有無で明暗が分かれる、このサバイバルゲーム。油断も隙も有ったもんじゃない。

ヘタに裏通りにいるのも、不利か……?不意を突かれたら、受け止めるのは出来ても斬撃判定を喰らったら負け扱いになってしまう。そう考えなおし、改めて大通りに身をさらした。