ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:上空ー

輝「さぁやってまいりました!今年度のサバイバル御前試合!各選手学園中に散らばり、乱取り開始のホラ貝を今か今かと待ち構えております!この弱肉強食、何でもアリの生存競争の中を、最後まで生き抜き、勝ち残るのは誰になるのでしょうか!?ちなみにわたくし、今回の実況を任ぜられましたるは、瓦版屋の比良賀輝であります。耳より情報を、どこよりも早く、正確に。御用の際にはエレキ新聞。エレキ新聞を是非!よろしくおねが……え?あぁはいはい、わかりましたよ。間もなく試合開始であります!」



ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

……本当に輝が実況なのか。輝は個人用ヘリで学園島の上空を飛びまわり、カメラとマイクでもって観客の皆に戦況を伝えるらしい。もしかすると一番の敵になるんじゃないだろうか……。

かくいうおれのスタート地点に選んだ場所は、慣れ親しんだ小鳥遊堂の前だった。大通りには血の気の多いのが殺到しているだろうし、あえての闘いに身を投じる必要もない。ま、できることなら最後まで逃げ回って居たいが、どうせいつかはやらなきゃいけないんだ。最初は温存させてもらうとしよう。

ぷおぉぉーー!

悠「……来たか」

輝『試合開始です!さぁ参加者の皆さん!背後からでも屋根の上からでも、思う存分斬り合ってください!』

頭が痛い。アイツを実況に選んだのだけは、どう考えても失敗だとしか思えない……。

悠「が、いつまでも気にしている場合じゃないな」

なにせ敵は何百人もいるんだ。どこから襲われるかわかったもんじゃない。さて……どうするべきか。

輝『おお!早速大通りでは集団での戦闘開始されました!しかし、これは乱戦ではありません。徒党を組んだ一団が、次々に敵対者を打ち倒していきます!そのリーダーは酉居!酉居葉蔵です!これはさすがというべきでしょうか!』

酉居も参加しているのか。これはちょっと手ごわそうだな。見えない場所の情報も得られるのは、ちょっとは輝も見直しておこう。しかし軍を作って闘っているとか……酉居らしいといえばらしい、そういうのもアリなルールではあるんだけどな。

悠「……あー?」

男子生徒A「おらぁぁっ!」

悠「おっとっと」

ひょい!

男子生徒A「くそっ、失敗か!」

悠「やれやれ、もう来たのか。まだ余裕があると思ってたのに……」

男子生徒A「そういうボンヤリしてるのから、一人ずつ片づけていくのが勝利の道だろ」

悠「返す言葉もないな」

男子生徒A「のんびりおしゃべりするつもりはない!」

ビュバッ!

悠「ほいっと」

男子生徒A「なっ、かわした!?」

悠「そんな大振りで、隙だらけだっ!オラァっ!」

ドゴッ!
男子生徒A「ぅあああっ!!」

スタンド……もとい、真正面からのストレートが決まり、相手が倒れる。おれは腰の刀を抜いてぺちっと叩くと、指輪型の登録証が音を出した。これで斬ったこと、斬られたことが中央管理システムに伝わるらしい。おれは刀を寅や風雷コンビはどうなるんだろうか……。

悠「しかし、これじゃなかなか気を抜く暇もないな」

ただ想像以上に楽に、ひとりめを倒せたのも確かだ。師匠から受けた指導と、吉音たちについて不良生徒と何度もやり合ってきた成果かな。



ー大江戸学園:通りー

男子生徒B「ま、ま、待て、ここで負けてくれたらあとで寿司奢ってやるぞ」

悠「寿司程度で釣られるわけ無いだろ」

男子生徒B「じゃあ三食まで出す!これならどうだ!」

悠「興味なしっ!」

ドンっ!

男子生徒B「ぐはっ……!」

ぺちっ!ブブーっ!

悠「いちいち刀でシバくのめんどくさいな……しっかし、聞いていたとはいえ、本当にいるんだな、試合中に八百長を持ちかけてくるのが」

あれから小鳥遊堂の前で続けて数人に襲われたが、それからはパッタリと人通りが途絶えた。あまりに暇なので、らしくないとは思いつつ、昼を過ぎたころからあてもなくウロウロしてみることに……。どうも局面は最初の混乱を抜けて、ある程度の腕か作戦があった人ばかりが残ってきているようだ。

聞こえてくる輝の実況で、ごく大まかには戦況を掴むことができる。
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