ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:大広場ー

呼び出し係『次、上島達平。次、宇賀神良平、次、右京山寅!』

寅「あぁ」

次々に参加者の名前がよばれ、ようやくおれの名前が迫ってきて

呼び出し係『次、小鳥遊悠!』

悠「はーい。元気です!」

ついに呼ばれたおれの名前に、手を上げて答えた。

呼び出し係『余計なことはいわんでいい!次、高西……』

怒られたし、呼び出しは次々に続く。のんびりしていてはあとに迷惑だ。おれ達は急いで指示された係員のところに行き、指輪型の参加登録証を受け取った。これでまずはひとつ終了……。

悠「はぁ」

吉音「なにため息なんかついてんのー?」

人混みを抜けてほっとしているところに、吉音が声をかけてきた。おれと違ってこっちは元気いっぱいだ。

悠「いよいよこれから乱交……じゃなかった、乱取りが始まるんだぞ。そりゃちょっとは緊張するだろ」

吉音「そう?あたしはすっごい楽しみだけど!」

悠「この生まれついての乱暴者め……」

光姫「おお、おったおった」

吉音「あ、ミッキー!ゆかりんも」

由佳里「はあい、応援にきましたー」

光姫「ミッキーいうな。どうじゃ、調子は」

悠「なんとか……といったところですね。ここにいる全部を相手するなんてちょっと想像もつかないですが」

吉音「あたしはぜっこーちょーだよ!」

光姫「それは聞かずともわかっておる」

吉音をあっさりいなして、光姫さんはおれに向き直った。

悠「……」

光姫「なに、最初からここで全員が闘うというわけではないし、おぬしの実力なら充分勝ち抜けよう」

悠「買被らないでください。おれはそんなに強くは……」

由佳里「がんばってくださいね!わたし、すんごいすっごく応援しますから」

両手をぐーにしてそんな風にいわれると、あまり気弱なこともいえないなあ。

悠「あー……ま、由佳里にはいろいろ教えてもらったからな。できるだけがんばるよ」

銀次「なんでえ、うっかり。同じお嬢の配下の応援せずに、悠の字の応援が先か?冷てえなあ」

悠「ぬうおわっ!戻ってきてたのか!」

由佳里「ふえっ?そ、そうですよねっ。銀次さんと悠さん……っ、ああ、どうしましょうっ。どうしましょう、光姫さまっ。わたし、どちらを応援したら……」

光姫「知らん」

悠「そういうのは、実際に対戦することになってからでもいいんじゃないかな?今のところ別の地域だしね」

由佳里「そっ、そっかあ。そうですよね。はーよかったあ」

冗談ではなく、本気でほっとしているところが由佳里の素直なところだ。こんなに素直で世の中渡っていけるのかと心配になるけど。

悠「……って、由佳里もその指輪、持ってるんじゃないか。まさか」

由佳里「あ……あははは……実はなんだかわたしもエントリーしちゃっていたみたいで」

光姫「無論、わしがしておいたのじゃ。あまりにも由佳里が出るのを嫌じゃというからのぅ」

悠「嫌だというから出すって、どんな鬼畜ですか」

ウチの師匠も似たようなものだったけど。

由佳里「大丈夫ですよ、わたしはすぐに降参しますから。みなさんといっしょに応援しています」

光姫「ほほほほ。好きにすると良いわ。何事も経験じゃ」

由佳里「ふぇぇぇ……」

ぷおぉぉぉ!ぷおぉぉぉ!

吉音「あ、もうすぐ始まるよ」

このホラ貝から、次のホラ貝が吹かれるまでの間に、それぞれ好きな場所へと移動する。そこからが本当の勝負の始まりだ。ちなみに夕方にもう一度ホラ貝が鳴って、そこで一日が終了となる。乱取りの舞台に指定された場所に住んでいるひとは、その間行動が制限されてしまう。さすがに夜まで続けたりするわけにはいかないからな。

光姫「では、わしは審査員席の方へ移る。しっかりとやれよ」

悠「がんばりますんで、カッコいいと思ったら好感度あげといてください。」

吉音「あたしは悠の味方だからねっ!」

銀次の姿はもうなかった。

悠「いよいよか……」

光姫さん達を見送っておれは大きく息を吸い込んだ。さて、最初はどこからはじめようか……!
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