ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

光姫さんたちが帰り、その後も喧騒の裏でポツポツとしかこないお客さんの相手をし。そんなでも時間は過ぎる。あっという間に日が暮れて、日付も変わろうかという時間になってきた。

零時を過ぎればもう乱取りの当日だ。当然のようにエントリーは受理されていて、日程や集合場所の詳細などが送られてきている。

泣いても笑ってももう時間はない。あとはおれにやれるだけやるしかないんだ。




ー大江戸学園:大広場ー

悠「うおお……すごいなこれは……」

おれが到着したときには、既に集合場所の広場には大勢の剣士がひしめいていた。正確にはその付き添いも居るので全員が出場者ではないが、それでも合計千人はいるんじゃないだろうか。

吉音「すごいね。みんなピリピリしてる。唐辛子煎餅みたい」

悠「そうだな。おれにもわかるくらいみんな殺気立ってる」

この大会で上位に入れば待遇が善くなるとか、卒業後も有利になるとか、まぁいろいろあるらしい。ただそれ以上に、現代の武士らしく自尊心のぶつかり合いだという面が非常に大きいという印象だ、これからおれもそこに入っていくんだけどな。

越後屋「小鳥遊さん、ごきげんよう」

悠「あれ、越後屋。と、佐東さんも」

はじめ「……ん」

悠「ここにいるってこたぁ……佐東さんも乱取りに参加するんだな」

はじめ「うん。腕試しにちょうど良いだろってね」

越後屋「ほほほ。今年はそこまで腕のええ人が参加してへんし、はじめなら優勝も狙えるで」

はじめ「……斬れるだけは斬ってくるよ」

ぐぬぬ、こいつは手ごわい相手だ。普通に闘ったらおれに勝ち目はあるのか……?とりあえず遭遇しないことをねがっていよう。

越後屋「ほな準備もあるさかい、失礼させてもらいまひょ。いこか、はじめ」

はじめ「うん。それじゃ」

佐東さんは相変わらずそっけない感じでいってしまった。しかしこの人ごみの中でも歩いていけるのは凄いな。

吉音「う~ん、サトーさんまでいるとは難しいねぇ」

悠「駄目もとさ。出会うことがあったら全力で挑んでくる。」

吉音「うん!身体は悠の方がおっきいんだからね!」

寅「相変わらず能天気だな」

悠「寅……」

なんだコイツ、ちょっと見ないあいだに力石徹みたいな感じになってるぞ。どれだけ身体絞ってんだよ。

寅「お前は最後に殺す。タイマンになるまで勝ち残らないと殺すぞ」

悠「勝ち残っても殺すのに負けても殺すってどういうことだよ……」

寅「どっちにしろ殺すってことだ」

悠「まるでわらえねぇ……」

寅「ふん、じゃあな。」

いってしまった、どうでもいいがアイツ殺意の波動にで目覚めたのか?殺気が半端なかったぞ。

吉音「トラチーなんか怖かったね」

悠「ああいう一途はやめてもらいたいな……」

平和「やや、これは悠さんではありませんかでござる」

悠「あれ、平和に信乃、つばめじゃないか」

信乃「悠さんも乱取りに出場しやがるのですか?」

悠「もって、まさかお前らも!?」

つばめ「そのまさかですわ~。宝くじも買わなくては当たりませんし~」

悠「いろいろといいたいことを先回りされた気もするけど……当てる気なのか」

平和「ふふん。確かに拙者たちひとりひとりでは弱いでござるでしょうが……」

信乃「三人集まればなんでもできる!大江戸学園探偵団!なんだぜっ!」

つばめ「必殺技を試すよい機会でもありますもの。うふふ」

吉音「ひっさつわざ!?なにそれ強そう~!」

悠「……」

……ちょっと覚えがあるんだが。もしかしてあの三人(三匹?)でやる……。
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