ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:通りー

平和「そうか、そういうことだったでござるか!」

悠「ついていけてるし!」

信乃「学園に数々の謎を広めていたのは、おまえたちだったんだな!」

七保委員3「そのとおり!何をかくそう、武家屋敷の各所にお囃子のスピーカーを設置したのはこの俺だ!」

七保委員4「ちなみに、足音の担当は私だ。芸術的だっただろう?」

平和「え、えぇと……えっ?」

七保委員5「私は置行掘の担当なんだけど……あんた、一匹くらい釣りなさいよ!」

信乃「うわぁ、すいませんっ」

七保委員6「あ、あの……河原の葦は、みんなで頑張って葉っぱを千切りました。」

つばめ「そのときの物音が、投書に書かれてあった「騒ぎ」の正体だったんですね~」

悠「なるほど……ということは、今日見つかった怪事件は全て、これで解明されたわけだ」

吉音「あれ?この屋台は?」

悠「それも、この連中がリモコンで操作していたんだろ。大方、幽霊屋台の怪、ってところか」

七保委員1「……正解だ」

悠「じゃあ、正解ついでにもう一つきくが、お前らが今いったことは本気か?」

七保委員3「本気も本気、超本気!伊達や水今日でここまでやれるかってんだ!」

悠「そうか……じゃあ、幽霊屋台の秘密を守るために平和たちを轢こうとしたのも、本気だったんだな?」

平和「え、ええっ!?悠さん、それって……!?」

信乃「こっ、この人たち、私たちのことを、け、消すつもりだったんですか……!?」

悠「消すところまではいかなくとも、脅して口止めさせる……くらいは考えてたんだろうよ」

つばめ「で、では……この方々がこうして姿を見せたのは……」

七保委員2「ふ、ふ、ふ……そこまで分かっているなら、話しが早い」

信乃「やっぱり、私たちを袋だたきにする気だな!?」

吉音「そんなこと、させないよっ」

平和「そ、そうでござる!こっちだって五人いるんだから、負けないでござる!」

悠「五人も必要ない……こういう手合いはおれの領分だ。武器を持ったままで構わん。一列に並べ。外道ども」

七保委員4「……」

身構えるおれ達に向かって、七保委員の六人は互いに目配せし合う。そしてつぎの瞬間……

七保委員たち「「「すみませんでしたぁ!!」」」

彼ら六人は一斉に、路面に頭突きする勢いで土下座をしていた。

悠「……あー?」

七保委員5「本当、ごめんなさい!まさかブレーキが壊れちゃうなんて思わなかったんです!」

七保委員6「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」

七保委員1「七不思議を作るのはおれ達の悲願なんです!どうかどうか、このことはご内密にお願いします!」

七保委員2「もう二度と、このような事故が起きないように全力を尽くすと約束しますから!」

七保委員3「どうかどうか、お願いします!」

平和「な、なんだか怖いよぉ……っ」

七保委員4「靴を舐めろというなら、喜んでお舐めいたしますから!」

信乃「ひいぃっ、舐めなくて良い!良いですからぁ!」

七保委員1「じゃあ、喋らないって約束してくれますかぁ!?」

信乃「しますします!約束します、させてくださーい!」

七保委員3「他の皆さんも、約束してくれます?」

つばめ「わたくしたちは真相を究明したかっただけですから、これでも十分です。ねぇ?」

平和「そ、そうそう!そのとおりでござるっ」

悠「……ちっ、今後は安全第一で、夜中に騒がないようにすると約束するなら、おれ達もみなかったことにするよ」

七保委員6「しっ……します。もう二度と、他人様に迷惑はおかけしません」

悠「よし。じゃあこれで一件落着……で、いいのかな?」

つばめ「あ、その前に……みなさんに質問、よろしいですか?」

七保委員3「はい、なんでしょう?」

つばめ「お囃子と足音、置行掘に河原の葦、それから屋台……全部で五つしかありませんよねぇ」

平和「あ、そういえば七つじゃないでござる」

七保委員4「……我々としても七つの怪談を用意したいのですが、何分、非公認団体ですから……予算が無いんです」

七保委員5「それに、毎日夜更かしするのも結構つらいのよね……」

信乃「はぁ……大変なんですね……」

七保委員1「でも、必ず作ってみせるぜ。学園に語り継がれる七不思議ってやつをさ」

七不思議保全委員会を名乗る彼らは、気恥ずかしげな、だけどもとても誇らしげな顔で向き合うのだった。




ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「ふあ……眠いな……」

昨日の夜更かしマラソンが堪えているのか、今日は朝から欠伸が止まらない。吉音に至っては授業中にあれだけ寝ていたというのに、茶屋に来てからも客席をベッド代わりにしている。

吉音「くかー……ふぁー……」

悠「本当、よく寝るなぁ……見ていると、おれまで眠くなってくる……あふ」

輝「おやぁ?客が居ないからって、開店中に居眠りかい?」

悠「おっと……いらっしゃいませ、輝」

輝「お茶と甘いもの、適当に頼むよ……あ、注文ついでに聞いてもいいかい?」

悠「ん、なんだ?」

輝「その欠伸、姫様ちゃんと何か関係があるのかにゃ?」

悠「あー……?」

輝「いやね、姫様ちゃんに噂の怪談について調査してきてもらったんだけど、どうも報告内容が曖昧でさぁ」

悠「へーそーなんだー」

輝「そのくせ、おいらの知らなかった幽霊屋台の噂なんてもんを仕入れて来て、瓦版に載せろってうるさいしさぁ」

悠「ふーん」

輝「で、そのときの姫様ちゃん、いまの悠ちゃんみたいに何度も欠伸してたってわけ」

悠「へー、平和たちも昨日は夜更かしだったのか。知らなかったよ」

輝「うっは、棒読み……ってか、平和たち?ってことは、天国ちゃんとつばめちゃんもいっしょだったんだねぃ」

悠「あー……」

輝「探偵団に悠ちゃんが揃って夜更かし。そして曖昧な調査報告と、出元不明の怪談話……におってきちゃうなぁ」

悠「あー、そうだ。輝、施策のジャンボあんみつパフェを食べてみてくれないか?」

輝「おっと、買収かい?」

悠「そんなつもりはない。でも試食だから、タダだぞ」

輝「いやぁ、しょうがないにゃー。騙されてあげるかー」

悠「はは、ありがとう……」

……うん、これでいい。これでいいんだ。平和たちが秘密を守った以上、彼ら六人のことはおれも胸にしまっておこう。あの真実は、色んな意味で切な過ぎるからな……。
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