ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー大江戸学園:釣堀ー
信乃「ここが雪那先生がいっていた、置行掘ですね。釣り人が全然いないのは……釣れないからでしょうか。それとも、怪談話がひろがったからでしょうか……」
キラ『ち、ちー』
信乃「そうですね。なにはともあれ、まずは魚を釣らなくちゃ話になりませんね……っこいしょ、と。さあ、大物を釣りますよっ」
キラ『ちぃ!』
~数十分後~
信乃「ん……むむぅ……ううぅ……」
キラ『ちー?』
信乃「ああぁんもーっ!全然、釣れませんーっ!」
キラ『ちーっ!?』
信乃「あっ、こめんなさい、キラ。驚かせちゃいましたね。」
キラ『ちー……』
信乃「ごめんなさい……でも、さっきから全然、釣れる気配もしないですもん。大声を出したくもなります。せっかく、釣りざおを買ってきましたのに……釣りってあんまり、面白いものではありませんね……」
キラ『ちっちっちっー!』
信乃「え?……まあ、それもそうですね。もう少しだけ頑張ってみましょうか」
キラ『ちー!』
ー大江戸学園:河原ー
つばめ「河原に来ると、ごろごろ転がりたくなりますよね~」
悠「いいや、ならないな」
吉音「ごろごろし疲れたら、そのままお昼ねしたくなるよね」
つばめ「さすが新さん。よく分かってらっしゃいます」
おれは溜息まじりに肩をすくめて、大きく空を仰ぎ見た。夕暮れにはまだ少し早い瓦は、風と日差しが心地よい。
悠「さっぱりわからなくて悪かったな。まぁ、昼寝したくなるのは分からなくもないが……」
吉音「でしょでしょ。ちょっとお昼寝していこうよー」
悠「うん、それもいいかもな……って、まてまて違うだろ」
つばめ「新さん、わたくしたちは調査をしにきたんですよ」
悠「そうそう、そのとおり」
つばめ「ですから、お昼寝は調査のあとで、ですよ~」
吉音「はーい」
悠「……そこまで昼寝したいのか?」
くだらない会話を切り上げた後、おれたちは手分けして河原の調査を始めていた。調査といっても、生い茂っている草むらをかきわけているだけなんだが……。何もない。かき分けるたびに、日差しに暖められた草の青い匂いが鼻先をくすぐるだけだ。とくに足場がドロドロなわけでもないから、不審な足跡が残っていたりもしない。いや、かりに足跡が残っていたとしても、それが不振な足跡なのか、そうでないのか、分かる訳もないが。……だんだん、店を閉めてまで草むらをゴソゴソ這いまわっている自分が馬鹿みたいに思えてきたぞ。
吉音「ねえ、悠。そっち、何か見つかったぁ?」
悠「いいや、収穫なしだ。つばめはどうだ?」
つばめ「はい、収穫大ありです~」
吉音「おぉっ」
悠「なにっ、本当か!?」
つばめ「本当ですよ~。ちょっと、こっちにきてくださいな」
悠「こっち?」
つばめ「こっちです。ほら、ここ」
吉音「えー、どこどこ?」
つばめ「そんな遠くじゃなくて、ここ……足下ですよ」
きょろきょろとしている吉音に、つばめはくすっと笑いながら足下を指さした。当然、おれもつばめの人差し指を追って、視線を下げていくわけだが……。
悠「……おれには、ただ草が生い茂っているようにしか見えないんだが?」
つばめ「そんなことありませんよ。ほら、ぺたんとなっているのが分かりません?」
悠「……あ、本当だ」
言われてみると確かに、つばめの指差した辺り一帯の草には、左右に描き分けられた跡がある。
つばめ「それだけではありませんよ。ほら、葉っぱの着きかたをもっとよく見てくださいな」
悠「葉っぱのつきかた……あっ」
つばめの言葉に従って芽を近づけてみて、おれはやっとそのことに気がついた。
信乃「ここが雪那先生がいっていた、置行掘ですね。釣り人が全然いないのは……釣れないからでしょうか。それとも、怪談話がひろがったからでしょうか……」
キラ『ち、ちー』
信乃「そうですね。なにはともあれ、まずは魚を釣らなくちゃ話になりませんね……っこいしょ、と。さあ、大物を釣りますよっ」
キラ『ちぃ!』
~数十分後~
信乃「ん……むむぅ……ううぅ……」
キラ『ちー?』
信乃「ああぁんもーっ!全然、釣れませんーっ!」
キラ『ちーっ!?』
信乃「あっ、こめんなさい、キラ。驚かせちゃいましたね。」
キラ『ちー……』
信乃「ごめんなさい……でも、さっきから全然、釣れる気配もしないですもん。大声を出したくもなります。せっかく、釣りざおを買ってきましたのに……釣りってあんまり、面白いものではありませんね……」
キラ『ちっちっちっー!』
信乃「え?……まあ、それもそうですね。もう少しだけ頑張ってみましょうか」
キラ『ちー!』
ー大江戸学園:河原ー
つばめ「河原に来ると、ごろごろ転がりたくなりますよね~」
悠「いいや、ならないな」
吉音「ごろごろし疲れたら、そのままお昼ねしたくなるよね」
つばめ「さすが新さん。よく分かってらっしゃいます」
おれは溜息まじりに肩をすくめて、大きく空を仰ぎ見た。夕暮れにはまだ少し早い瓦は、風と日差しが心地よい。
悠「さっぱりわからなくて悪かったな。まぁ、昼寝したくなるのは分からなくもないが……」
吉音「でしょでしょ。ちょっとお昼寝していこうよー」
悠「うん、それもいいかもな……って、まてまて違うだろ」
つばめ「新さん、わたくしたちは調査をしにきたんですよ」
悠「そうそう、そのとおり」
つばめ「ですから、お昼寝は調査のあとで、ですよ~」
吉音「はーい」
悠「……そこまで昼寝したいのか?」
くだらない会話を切り上げた後、おれたちは手分けして河原の調査を始めていた。調査といっても、生い茂っている草むらをかきわけているだけなんだが……。何もない。かき分けるたびに、日差しに暖められた草の青い匂いが鼻先をくすぐるだけだ。とくに足場がドロドロなわけでもないから、不審な足跡が残っていたりもしない。いや、かりに足跡が残っていたとしても、それが不振な足跡なのか、そうでないのか、分かる訳もないが。……だんだん、店を閉めてまで草むらをゴソゴソ這いまわっている自分が馬鹿みたいに思えてきたぞ。
吉音「ねえ、悠。そっち、何か見つかったぁ?」
悠「いいや、収穫なしだ。つばめはどうだ?」
つばめ「はい、収穫大ありです~」
吉音「おぉっ」
悠「なにっ、本当か!?」
つばめ「本当ですよ~。ちょっと、こっちにきてくださいな」
悠「こっち?」
つばめ「こっちです。ほら、ここ」
吉音「えー、どこどこ?」
つばめ「そんな遠くじゃなくて、ここ……足下ですよ」
きょろきょろとしている吉音に、つばめはくすっと笑いながら足下を指さした。当然、おれもつばめの人差し指を追って、視線を下げていくわけだが……。
悠「……おれには、ただ草が生い茂っているようにしか見えないんだが?」
つばめ「そんなことありませんよ。ほら、ぺたんとなっているのが分かりません?」
悠「……あ、本当だ」
言われてみると確かに、つばめの指差した辺り一帯の草には、左右に描き分けられた跡がある。
つばめ「それだけではありませんよ。ほら、葉っぱの着きかたをもっとよく見てくださいな」
悠「葉っぱのつきかた……あっ」
つばめの言葉に従って芽を近づけてみて、おれはやっとそのことに気がついた。