ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー大江戸学園:大通りー
光姫「うむ。いま行った男子生徒。つかまえてこい」
銀次「つかまえたあと、好きにしていいなら」
光姫「いいわけなかろう!さっさとゆけ!」
銀次「はいはい」
と、返事をしたかと思うと姿が見えなくなった。素早い。……というか本当に消えているんじゃなかろうな?
天ぷら屋「いっ、いまここを誰か出ていきませんでしたかっ?」
慌てた様子で店の中から男がひとり。「まついち」の店の者だろう。
悠「もしかして食い逃げか?」
天ぷら屋「はいっ。確かに天ざるを出したはずなんですが、食べ終えた器だけあって、お客が……」
やっぱり印象がないらしい。おれ達は事情を説明して、少し待ってもらうことにした。銀次のことだから、さっきの男子生徒をつかまえてくれるだろう。そうすれば……。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
やがて。銀次さんによって、さっきの男子生徒がひったてられてきた。
銀次「さあきりきり歩きな。でないと俺が気持ちいい目に遭わせちまうぜ?」
男子生徒A「ひいいいいっ。おた、おた、おたすけっ!」
悠「…………」
光姫「やめんか銀次。悠まで怖がっておるわ。ふむ、その男が食い逃げ犯か。……本当に普通の生徒じゃのう」
悠「いや、まだそうと確定したわけじゃ……」
しかし光姫さんのいう通り、銀次さんのひったててきた男子生徒は、どこをとってもごく普通。特徴のない、普通を絵に描いたような生徒だった。よくまあ由佳里はこの男を覚えていられたもんである。
光姫「そうであったな。聞くがその方、食い逃げして居ったのはお前か?」
男子生徒A「…………う」
ぎくり、という感じに男子生徒のからだがこわばる。
悠「……」
男子生徒A「それがその……うっかり……」
光姫「うっかり?」
男子生徒A「うっかりお金を払うのを……忘れてしまいまして……」
由佳里「あー。ありますよねー、うっかり」
うんうんとうなずく由佳里。
光姫「「うないち」でも「そばこや」でもか」
男子生徒A「はあ……」
光姫「普通の人間がそんなに毎回うっかりするかっ!」
男子生徒A「食べてるうちにすっかり夢中になっちゃって……すみません……毎回あとになって気がついて……払い行かなきゃ……とは思うんですが……ですが…………」
由佳里「ちゃんと謝りにいかなきゃだめだよー」
男子生徒A「すみません……。ごめんなさい……」
悠「…………」
光姫「…………」
おれ達は顔を見合わせた。
銀次「どうします、お嬢。奉行所に連れて行きます?それとも俺が優しくこってりとおしおきを……」
男子生徒A「ひいいいいいっ」
光姫「それはせんでよい」
銀次「ちぇ」
銀次の提案を一蹴した光姫さん、改めて男子生徒に向き直った。
光姫「いい訳にしては、あまりにも嘘臭すぎる。まずは話しを聞かせてみよ」
うつむきがちに、男子生徒は話しだした。彼によると……。もともと、彼は光姫さん同様、食べ歩きが趣味であったという。日々、あちこちの美味しい店を回るのを日課にしていたのだが、不況の風はどこにでも吹いているもので。あるとき、彼の仕事場が不況のあおりを食って倒産。当然彼も失業した。そうなると食べ歩きも簡単にはできなくなる。当然財布を見て、我慢していた彼なのだが……。
男子生徒A「ガイドを見たり、店の前を通りかかったりすると、いつの間にか店に入ってしまっていて……」
由佳里「わかります、わかります」
吉音「わかるんだ……」
光姫「うむ。いま行った男子生徒。つかまえてこい」
銀次「つかまえたあと、好きにしていいなら」
光姫「いいわけなかろう!さっさとゆけ!」
銀次「はいはい」
と、返事をしたかと思うと姿が見えなくなった。素早い。……というか本当に消えているんじゃなかろうな?
天ぷら屋「いっ、いまここを誰か出ていきませんでしたかっ?」
慌てた様子で店の中から男がひとり。「まついち」の店の者だろう。
悠「もしかして食い逃げか?」
天ぷら屋「はいっ。確かに天ざるを出したはずなんですが、食べ終えた器だけあって、お客が……」
やっぱり印象がないらしい。おれ達は事情を説明して、少し待ってもらうことにした。銀次のことだから、さっきの男子生徒をつかまえてくれるだろう。そうすれば……。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
やがて。銀次さんによって、さっきの男子生徒がひったてられてきた。
銀次「さあきりきり歩きな。でないと俺が気持ちいい目に遭わせちまうぜ?」
男子生徒A「ひいいいいっ。おた、おた、おたすけっ!」
悠「…………」
光姫「やめんか銀次。悠まで怖がっておるわ。ふむ、その男が食い逃げ犯か。……本当に普通の生徒じゃのう」
悠「いや、まだそうと確定したわけじゃ……」
しかし光姫さんのいう通り、銀次さんのひったててきた男子生徒は、どこをとってもごく普通。特徴のない、普通を絵に描いたような生徒だった。よくまあ由佳里はこの男を覚えていられたもんである。
光姫「そうであったな。聞くがその方、食い逃げして居ったのはお前か?」
男子生徒A「…………う」
ぎくり、という感じに男子生徒のからだがこわばる。
悠「……」
男子生徒A「それがその……うっかり……」
光姫「うっかり?」
男子生徒A「うっかりお金を払うのを……忘れてしまいまして……」
由佳里「あー。ありますよねー、うっかり」
うんうんとうなずく由佳里。
光姫「「うないち」でも「そばこや」でもか」
男子生徒A「はあ……」
光姫「普通の人間がそんなに毎回うっかりするかっ!」
男子生徒A「食べてるうちにすっかり夢中になっちゃって……すみません……毎回あとになって気がついて……払い行かなきゃ……とは思うんですが……ですが…………」
由佳里「ちゃんと謝りにいかなきゃだめだよー」
男子生徒A「すみません……。ごめんなさい……」
悠「…………」
光姫「…………」
おれ達は顔を見合わせた。
銀次「どうします、お嬢。奉行所に連れて行きます?それとも俺が優しくこってりとおしおきを……」
男子生徒A「ひいいいいいっ」
光姫「それはせんでよい」
銀次「ちぇ」
銀次の提案を一蹴した光姫さん、改めて男子生徒に向き直った。
光姫「いい訳にしては、あまりにも嘘臭すぎる。まずは話しを聞かせてみよ」
うつむきがちに、男子生徒は話しだした。彼によると……。もともと、彼は光姫さん同様、食べ歩きが趣味であったという。日々、あちこちの美味しい店を回るのを日課にしていたのだが、不況の風はどこにでも吹いているもので。あるとき、彼の仕事場が不況のあおりを食って倒産。当然彼も失業した。そうなると食べ歩きも簡単にはできなくなる。当然財布を見て、我慢していた彼なのだが……。
男子生徒A「ガイドを見たり、店の前を通りかかったりすると、いつの間にか店に入ってしまっていて……」
由佳里「わかります、わかります」
吉音「わかるんだ……」