ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:大通りー

光姫「なぜじゃ?」

由佳里「だって、ミトランに載ってるのは、いま廻った五件のうち、三件ですもん」

悠「じゃあミトランで目星をつけたってセンはなしか」

光姫「ふうむ。では犯人はわしと同じくらいに舌が利くと見えるな……」

吉音「もう、感心してる場合じゃないでしょ、ミッキー。犯人、なんとか捕まえないと!」

吉音「そ、そのとおりじゃな」

由佳里「でも、歩きまわってお腹が好きましたぁ」

吉音「……そういえばあたしもぉ」

悠「おいおい、やる気を出した途端にそれか?……まあ腹が減っては戦はできぬというし」

光姫「うむ。ならばこの先に確かたずねてみたい店があったはずだが」

由佳里「あ、天ぷらの「まついち」ですね!」

吉音「さすがゆかりん!天ぷら行こう、天ぷら!」


~移動中~


光姫「ここも繁盛しとるようじゃのう。なかなか立派な店構えだ」

吉音「あ、見てみて悠!天ぷらのプラモデル!」

悠「食品サンプルだろ……。プラモデルっていいかたは初めて聞いたぞ」

吉音「いいじゃん、似たようなもんでしょ」

由佳里「知ってますか新さん、こういう見本の天ぷらって、実際に天ぷらを揚げるのと同じように作るんですよ」

吉音「えっ?油でじゅーーっと?」

由佳里のうんちくに吉音が目を丸くする。

由佳里「実際にはちょっと違うんですが、見た目はほとんどそのままですね」

悠「へえ、さすが由佳里。なんでも知ってるな」

由佳里「えへへ。でもなんでもは知りませんよ。食べ物のことだけです……」

光姫「そうでもなかろう、お前は記憶力だけはずばぬけておるからな。知識として知らずとも……」

男子生徒A「ごめんよ」

由佳里「あ、こちらこそ。すみません。…………あれ」

吉音「ほら、よそ見してるから……って、どうしたの?ゆかりん」

由佳里「え、ええ……光姫さま」

光姫「うむ?」

由佳里「いまのひと、さっきご飯を食べた「フォグランプ亭」にもいましたよね」

光姫「そうであったか?さして特徴のない男であったが……男であったよな?いまの者」

悠「さあ」

由佳里「いましたいのした。そのときもいまみたいにあたしにぶつかって」

光姫「おお。そういわれてみればそのようなこともあったような。しかしそれがいかがした」

由佳里「いえね。あのひと、ほかの店でもよく見るなあって。「うないち」でも「そばこや」でも」

光姫「む。待てハチ。では今の男、我らがいま聞きこみしてまいった店全部で見かけたというのか」

吉音「さすがはゆかりん。すごい記憶力!」

由佳里「えへへへ」

光姫「笑っている場合ではないぞ。いまの男を追いかけねば」

由佳里「どうしてです?」

きょとんとした顔の由佳里。

光姫「お前以外に顔を覚えておらんような特徴のない男子、しすも我らが目をつけた店にことごとく現れている。いま聞きこみしてきた、食い逃げ犯の特徴と合致して居るではないか」

由佳里「あ」

光姫「銀次!」

光姫さんが指を鳴らすと、いつの間に、どこから現れたのかえらく派手な格好の野郎。

銀次「吾輩の出番のようだね、お嬢」

じごろう銀次。光姫さんの配下のひとりなのだが……なんでこの男はこんなにも派手なんだろう。
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