ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
由佳里「それでね、それでね。いろいろ食べたんだけど、オムライスが絶品だったんですよ」
吉音「ふんふん、オムライス!あのケチャップ味の?」
お茶とまんじゅうをぱくつきながら、由佳里はさっき光姫さんと食べた昼食の話しを吉音としている。
由佳里「それが違うんです。オムレツの中のライスは、ケチャップじゃなくトマトスープで味付けしてあるんですよ。オムレツの卵の方はふわふわの半熟で、これはオムライスとは思えない上品な味でしたね。」
吉音「へえーー、へえーー」
由佳里「昔ながらのオムライスもいいんですが、こういうメニューはオムライスの可能性が広がります」
と言った直後に食べかけのまんじゅうの残りを口に放り込む。うー。見てるだけで腹いっぱいになにそうだ。
吉音「いーなー、いーなー。ねえ悠ぅ」
ちろん、と吉音がこっちを見た。
悠「行かないからなッ」
吉音「まだなにもいってないじゃん」
悠「どうせ、あたしも食べに行きたい~、とか言い出すんだろう」
吉音「うん。行きたいよー。あたしもオムライス食べたい~。美味しい料理食べたい~」
悠「だめだ。どうしてもっていうのならひとりで勝手に行って来い。学内身廻りと、ミトランの仕事がある光姫さん達と、おれ達は違うんだから」
吉音「うえーー」
悠「おれたちには小鳥遊堂があるし、お役目だってあるだろ?」
光姫「そうそう、役目といえば」
悠「はい?」
両手で上品に持った茶碗から、光姫さんは茶をずっとすすった。
光姫「さっき、なにやら仕事の途中だったのではないか、悠」
悠「あ、そうだった。はい。目安箱の中身を確かめようと」
そういえば忘れていた。
光姫「おおそうか。だったら構わずやるがよい」
まあどちらにしてもやるつもりだったことではあるし。おれは目安箱のふたを開けて、中身を取り出した。いつものように、封書、たたんだ紙などがばらばら出てくる。
生徒たちからの訴えに、一通ずつ眼を通していく。何通か見終わって、おれはあることに気がついた。
悠「……あー?」
読み終えた訴えを再び開いて確かめる。やっぱりそうだ。
光姫「どうした、悠」
悠「妙なんですよ。見てください」
おれは投書を光姫さんに手渡した。
光姫「ふむ。食い逃げの訴えか。これがどうしたと……」
光姫さんは二通目を見て、いいかけた言葉を途中で切った。そして三通目を見る。さらに四通目。
悠「……」
光姫「ほほお。いつもこんなに来るものなのか?」
悠「まさか。いま渡した分で六通、もしかしたらこっちにまだ……ああ、やっぱりあった。これも食い逃げの訴えですね」
光姫さんに渡した分、さらにまだ読んでいなかった訴えの中にさらに三通。目安箱の中には九通もの、食い逃げの被害を訴える投書が入っていた。おれと光姫さんの会話を聞いていたらしい由佳里と吉音が怒りを露わにする。
由佳里「食い逃げ?せっかく精魂込めて作ってもらった料理を食い逃げするなんて許せません!」
吉音「じょーだんじゃない。あたしだってお金がないときは買い食い我慢してるのに!」
悠「う、うん、そうだな……」
由佳里「さっそくつかまえに行きましょう!」
吉音「悠、行くよ!」
悠「ちょ……おいっ、吉音……」
光姫「むう、ゆっくり茶も飲んでおられんではないか」
悠「光姫さんも行くんですね」
まあ、訴えがあった以上、探索には乗り出さなければならないのだ。おれはすでに店を飛び出していった吉音たちの後を追うことにした。
由佳里「それでね、それでね。いろいろ食べたんだけど、オムライスが絶品だったんですよ」
吉音「ふんふん、オムライス!あのケチャップ味の?」
お茶とまんじゅうをぱくつきながら、由佳里はさっき光姫さんと食べた昼食の話しを吉音としている。
由佳里「それが違うんです。オムレツの中のライスは、ケチャップじゃなくトマトスープで味付けしてあるんですよ。オムレツの卵の方はふわふわの半熟で、これはオムライスとは思えない上品な味でしたね。」
吉音「へえーー、へえーー」
由佳里「昔ながらのオムライスもいいんですが、こういうメニューはオムライスの可能性が広がります」
と言った直後に食べかけのまんじゅうの残りを口に放り込む。うー。見てるだけで腹いっぱいになにそうだ。
吉音「いーなー、いーなー。ねえ悠ぅ」
ちろん、と吉音がこっちを見た。
悠「行かないからなッ」
吉音「まだなにもいってないじゃん」
悠「どうせ、あたしも食べに行きたい~、とか言い出すんだろう」
吉音「うん。行きたいよー。あたしもオムライス食べたい~。美味しい料理食べたい~」
悠「だめだ。どうしてもっていうのならひとりで勝手に行って来い。学内身廻りと、ミトランの仕事がある光姫さん達と、おれ達は違うんだから」
吉音「うえーー」
悠「おれたちには小鳥遊堂があるし、お役目だってあるだろ?」
光姫「そうそう、役目といえば」
悠「はい?」
両手で上品に持った茶碗から、光姫さんは茶をずっとすすった。
光姫「さっき、なにやら仕事の途中だったのではないか、悠」
悠「あ、そうだった。はい。目安箱の中身を確かめようと」
そういえば忘れていた。
光姫「おおそうか。だったら構わずやるがよい」
まあどちらにしてもやるつもりだったことではあるし。おれは目安箱のふたを開けて、中身を取り出した。いつものように、封書、たたんだ紙などがばらばら出てくる。
生徒たちからの訴えに、一通ずつ眼を通していく。何通か見終わって、おれはあることに気がついた。
悠「……あー?」
読み終えた訴えを再び開いて確かめる。やっぱりそうだ。
光姫「どうした、悠」
悠「妙なんですよ。見てください」
おれは投書を光姫さんに手渡した。
光姫「ふむ。食い逃げの訴えか。これがどうしたと……」
光姫さんは二通目を見て、いいかけた言葉を途中で切った。そして三通目を見る。さらに四通目。
悠「……」
光姫「ほほお。いつもこんなに来るものなのか?」
悠「まさか。いま渡した分で六通、もしかしたらこっちにまだ……ああ、やっぱりあった。これも食い逃げの訴えですね」
光姫さんに渡した分、さらにまだ読んでいなかった訴えの中にさらに三通。目安箱の中には九通もの、食い逃げの被害を訴える投書が入っていた。おれと光姫さんの会話を聞いていたらしい由佳里と吉音が怒りを露わにする。
由佳里「食い逃げ?せっかく精魂込めて作ってもらった料理を食い逃げするなんて許せません!」
吉音「じょーだんじゃない。あたしだってお金がないときは買い食い我慢してるのに!」
悠「う、うん、そうだな……」
由佳里「さっそくつかまえに行きましょう!」
吉音「悠、行くよ!」
悠「ちょ……おいっ、吉音……」
光姫「むう、ゆっくり茶も飲んでおられんではないか」
悠「光姫さんも行くんですね」
まあ、訴えがあった以上、探索には乗り出さなければならないのだ。おれはすでに店を飛び出していった吉音たちの後を追うことにした。