ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

文「……この人……」

由佳里「あ!こ、この人ですか!?」

文「いえ、別人ですけど、この人は腕が立ちますか?」

由佳里「えっ?あ、いえ……体格はよろしいですけど、手芸部の部長さんですから……」

文「そうですか。では、次をお願いします」

由佳里「はい、了解です」

時折、事件とは関係ないこんなやりとりをするけども。……まあ、彼女にも事情があるんだろう。協力してくれるんだから、多少の脱線は許容範囲だ。

文「あの、こちらの方は?」

由佳里「ええと、腕のほうですか?もつろん立ちますよ。ばっちりです。剣道部の部長さんですからね~」

文「……お名前は?」

由佳里「柳宮の十兵衛さんです!」

間に「の」を挟む理由は良く分からないが、そんな由佳里のことはまったく眼中にない様子で。

文「……柳宮……十兵衛……」

鋭い眼光を隠そうともせず、じっと凝視していた。

光姫「それよりも、被害者とやらをみつけなくていいのか?」

文「……もう見つけています。この人です」

悠「あー?」

彼女が指さす先は、ちょうど剣道部部長とは対角線にいる……演劇部部長の顔写真だった。

悠「この人で間違いないんだな?」

文「ええ、あの時追い詰められてた彼女です」

悠「演劇部、か……」

吉音「確か部室があったはず!行こっ!」

光姫「わしらが手を貸すのはここまでじゃ。あとは、お主らだけでなんとかせい」

悠「もちろんです。任せてください」

由佳里「頑張ってくださいね~」

吉音「いってきま~す!」

文「あ……な、なんで私まで……す、裾を引っ張らないでくださいっ!」

吉音「ほら、急いで急いで!」

文「ああ、もう……分かりました!自分で走りますから、離してください!」




ー大江戸学園:演劇部部室ー

男子生徒A「いい加減に、観念したらどうなんだ。えぇ?」

部長「…………」

男子生徒B「大人しく言うことを聞けば、丸く収まるんだ」

女子生徒A「とんでもない目に遭わないうちに、協力した方が得じゃないかな~?」

部長「……そんな提案には、乗れません」

男子生徒A「ふん、意地を張っても、助けなんてこない」

男子生徒B「あいつらも、この部室にいるとは思ってないだろうしな」

女子生徒A「あたし達だって、できれば穏便に済ませたいんだけどねー?」

部長「…………」

男子生徒A「強情だな……よし、いいだろう。それならそれで、こっちにも考えがある。」

男子生徒B「やめてといっても、もう遅いんだからな」

女子生徒A「後悔するわよ、可哀想に……」

部長「ちょ……や、やめて!近づかないで!」

男子生徒A「……はっはっはっ……」

男子生徒B「……ふっふっふっ……」

女子生徒A「……うふふふふっ……」

生徒たち「「「あーはっはっはっはっ!」」」
58/100ページ
スキ