ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

文「面倒なことに巻き込まないでください」

悠「あー……分かった、こういう提案でどうだ?確かに、人違いかもしれない。でもおれ達は、依頼主の恩人を探していて、君とは特徴が合致する。だとすると、別人という確証を得ない限り、今後も君を探してしまうんだ。それは……率直にいって、イヤだろ?」

文「……そうですね」

悠「なら、今少しだけ時間をくれないか。その依頼主を呼んで、確かめて貰うんから。その後は、君の自由だ。感謝を受け取らなくたっていい」

……頼まれたのは、人探しまでだ。そこから先の交渉は、申し訳ないが本人に任せてしまおう。

文「……どちらも、面倒には違いないんですが……」

悠「まあ、そういうな……ちょっとだけだ、な?」

などと必死に頼み込んだ結果、少しだけ時間を貰えることになった。すかさずおれは、もらった番号に連絡をいれ、待つこと数十分……。

~~

「ねえ……例の子って、あの子でいいの?」

「ああ、間違いない……あの時のアイツだ!」

「なら、当たりってわけね。ふふふ……」

「じゃあ後は、さっき打ち合わせた手はず通りに……」

~~


女子生徒A「あの、すみませーん」

悠「あ、こっちこっち!」

文「…………」

悠「あっちが、例の依頼主さん。で、こちらが……探してた恩人、で合ってるかな?」

女子生徒A「はい、この方です!見つけてくれて、ありがと!」

文「…………いえ、違います」

悠「あー?」

女子生徒A「あ、いえ……間違いなく、この方ですよ」

悠「だとすると、あー……あ、覚えていないだけ、とか?」

文「……いえ、そうではありません。結果的に助けた形になったかもしれない女性は、あの場にいましたが……間違いなく、この人ではありません」

……おかしい。話しが食い違ってるぞ?

女子生徒A「あの時は、ほんの少ししか顔を合わせてなかったから……」

依頼人は、間違いなくこの人だといい。

文「少なくとも、アナタでないことは確かです」

文の方は、はっきりと違うと断言してる。どういうことなんだ、これは?

男子生徒A「礼をしたいって言ってるんだ。叶えてやるのが人情ってもんだろ?」

男子生徒B「あくまで拒むのは自由だが……恩返しするのも、自由だ。」

悠「あー?なんだ、テメェら」

男子生徒A「余計な詮索はいい、引っ込んでな!あっちの女に用事があるんだよ」

男子生徒B「悪いが、腕ずくでも来てもらうからな……」

文「腕ずく、ですか」

男子生徒B「そうだ、だからきな!」

文「……」

ドガッ!
男子生徒B「うぐ……ッ!?」

文「でしたら、腕ずくでお断りします」

男子生徒A「き、貴様ぁぁぁ!」

文「……遅い」

男子生徒A「な……ん、だと……うぅっ!」

畳みかけて襲いかかる男二人を、たった二度の動きだけで撃退してしまった。文の戦いを見るのは初めてじゃないが、相変わらず冴えわたってるな……。

女子生徒A「ち、ちょっと待ちな!あたしのことを忘れてもらったら困るよ!女だからって軽く見てると、痛い目に遭うよ。あたしは、そこの二人よりも強……」

吉音「て~い!」

ぽこん!
女子生徒A「い……いったぁぁぁぁ!?」

悠「お、新。お前一体どこから?」

吉音「今日の見回りも無事に終わり、呼ばれてないのに即参上!」

まあ確かに、呼んでなかったけどさ……。

男子生徒A「ち、ちぃ、計画変更!Bプランだ!」

男子生徒B「Bプランって?」

男子生徒A「A以外ってことだ!」

女子生徒A「あ、つまり逃げるのね」

男子生徒A「当たり前だろ!」

吉音「うわっ、逃げ足はやー」

悠「腕っ節がない代わりに、逃げ足に恵まれたのか……」

文「……で、私はもう帰っていいですよね?」

悠「あ、いや、ちょっと……どういう状況なんだ、今これは?」

吉音「さあ?」
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