ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:廊下ー

男子生徒A「しらばっくれても無駄だ!こうなったら、少しばかり痛い目に遭ってもらをねぇとな。誰かに喋ったら、後悔することになるって……その身体に教えてやるぜ!でりゃぁぁぁぁ!」

自分の言い分だけを一方的にまくし立てると、男は前置きもなく殴りかかった。

文「…………遅い」

男子生徒A「なっ!?」

しかし笠少女は、たった半身下がっただけで男の斬撃を完全に避けきった。そして、まだ勢い止まらぬ男の足の間に、刀を鞘ごと差し入れる。

足の絡まった男はそのまま姿勢を崩し、みっともなく転がり倒れる。しかもその倒れた先は階段で、男は更なる悲鳴をあげることとなった。

文「……」

部長「あ、あの……助けていただいて、その……」

文「……自分には、関係のないことですから」

礼を述べかけた部長に、笠少女はさきほどとまったく同じ言葉を繰り返し、その場を後にした。彼女にとって、被害者も加害者も、まったく平等に興味の対象外であった。




ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「んー……なんか、入ってるかなぁ……」

悠「なんかって……目安箱なんだから、入ってるものがなんかってことはないだろう」

吉音「あ、あったあった!ええと……んー……「人を探しています」……だってさ」

悠「それだけじゃ、なんともな……特徴とかは書いてないのか?」

吉音「ふむふむ……「笠を被り、マントを着けています。無愛想な女性で、長い楊枝をくわえています」……」

悠「それって、もしかして……」

文に特徴が似てるな……というかそんな恰好、さすがに学園広と言えど、二人はいないと思う。

吉音「困ってる人がいるなら、助けてあげなきゃね!」

悠「それは立派な心がけだが、これじゃまるで便利屋だ」

吉音「世の中が便利になるのは、いいことだよ~」

悠「……」

まあ、違うとは言わないが……御人よしだな、吉音は。

吉音「それに、悠の本業ってとらぶるしゅーたーっていう便利屋さんなんでしょ?」

悠「それは違うと言っておく」

吉音「あれ?」




ー大江戸学園:教室ー

悠「……つまり、男にいいよられて困っていたところを助けてもらったから、お礼をいいたいってのが理由か」

吉音「でも、どこの誰だか分からないから探してほしい、と」

女子生徒A「うんうん、そうなの。是非、お礼が言いたくて!自分で探してみたんですけど、手掛かりすら見つからなくて……この目安箱が、最後の希望なんです。お願い!」

吉音「うんうん、まっかせといて~」

女子生徒A「本当!?嬉しい!」

悠「で、一緒に探すってことでいいのかな?顔を知ってる人がいてくれたら、その方が話しは早いし」

女子生徒A「あ……そ、それが、その……自分で探してる間に、宿題とか課題が溜まっちゃって……それを、片づけないと……ごめんなさい!留年しちゃうんです!」

悠「留年か、それはさすがに深刻だな……」

吉音「おっけおっけ、あたしに任せて!」

女子生徒A「うんうん、任せちゃう!あ、これ携帯の番号です。居場所がわかったら、教えてくださいね。」

吉音「ほーい!」
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