ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー大江戸学園:廊下ー
鼎「だから、なくした紙を見つけないと~」
悠「苦手なのに、どうしてパソコンに打ち込んだんですか」
鼎「ぇっと……得意な子にお願いしちゃったの。その方が便利だって聞いて」
悠「……」
……自分が使えなかったら、便利もへったくれもないんだけどな……。いやもう、ツッコミいれてたらキリがない気がしてきた。
鼎「じゃあわたしはもう少し探してみるけど、二人は早くかえるんですよぉ~」
悠「はい、そうさせていただきます」
吉音「まったね、ばいばーい!」
鼎「ええ、さようなら」
吉音「飛鳥先生は、相変わらず飛鳥先生だね~」
妙な言い回しだが、感覚的に良く分かるぞ、それ。
悠「見つかるかどうかにもよるが、来週テストあるのか。面倒だな」
吉音「あってもなくても、どうせわかんないもん。どっちでもいいかなっ」
悠「お前も充分、相変わらずだよ……」
吉音「えっへんえっへん」
悠「褒めてねーよ」
吉音「悠ってば、少しはデレていいんだよ?」
悠「ツンデもないからな」
そんなやりとりし、悠と吉音は校舎を後にした。もちろん、校舎を出る生徒は彼らだけではない。部活に行く者、下校する者。今ほとんどの生徒は、校舎を後にするか、部室などへ移動する者たちばかりであった。故に、その少女の姿は少し目立っていた。
まずは、そのいで立ち。旅装のような笠を結わえており、それだけで充分目印になる。だが今はそれに加えて、進行方向が他の生徒達と真逆だった。校舎から出てくる人の流れに逆らい、校舎の奥へ奥へと進んでいく。
文「ふぅ……違う……あの子も……彼女も、違う……」
その笠少女は、すれ違う女子生徒を観察しては、その度に小さく首を振って視線を逸らせる。どうやら誰かを探しているようだったが、報われそうな気配はなかった。
「そろそろ、いい返事をきかせてもらいたいんだがな?」
笠少女が足を止めたのは、耳に飛び込んだ言葉のせいではなかった。その、穏かならぬ気配そのものが、彼女の興味を引いた。
文「…………」
「……でも、私は……そんなことは……」
「部長の腹ひとつで、運命が決まるんだ……分かるよな?」
笠少女が視線を転じてみれば、廊下の片隅……人気のなさそうなところに、ふたつの人影が見受けられた。
部長「……分かりたく……ありません」
部長と呼ばれたその少女は壁に追い詰められ、困惑の表情を浮かべている。窮地に陥ってることを推測するに、充分な状況と言えた。
男子生徒A「拒んでも、いいことは何もない。それは、部長も知っての通りだ。なら、どうするべきか……答えは、簡単じゃないのか?」
剣吞とした雰囲気を、そのまま圧力としてぶつける男子生徒。そんな男の姿を認識した笠少女は……
文「……」
興味を無くしたようにまず顔を逸らし、ついで背を向ける。面倒事に関わるまいと言う意識なのか、未練一つ残さず去る姿は、まさに渡世人然としていた。
男子生徒A「……おい、ちょっとそこのあんた」
しかし、男の方がそれを見とがめた。
文「……」
男子生徒A「もしかして……今の話、聞いてたのか?」
まるで盗み聞きをしていたかのような言い回しで詰め寄ってくる。声の響きは低く、恫喝にも近い。
文「……自分には、関係ないことですから」
しかし笠少女は、相手の態度にも台詞にもまったく動じず、きっぱりとした拒絶だけを示した。だがそれを、男の方は誤魔化しとして受け取った。
鼎「だから、なくした紙を見つけないと~」
悠「苦手なのに、どうしてパソコンに打ち込んだんですか」
鼎「ぇっと……得意な子にお願いしちゃったの。その方が便利だって聞いて」
悠「……」
……自分が使えなかったら、便利もへったくれもないんだけどな……。いやもう、ツッコミいれてたらキリがない気がしてきた。
鼎「じゃあわたしはもう少し探してみるけど、二人は早くかえるんですよぉ~」
悠「はい、そうさせていただきます」
吉音「まったね、ばいばーい!」
鼎「ええ、さようなら」
吉音「飛鳥先生は、相変わらず飛鳥先生だね~」
妙な言い回しだが、感覚的に良く分かるぞ、それ。
悠「見つかるかどうかにもよるが、来週テストあるのか。面倒だな」
吉音「あってもなくても、どうせわかんないもん。どっちでもいいかなっ」
悠「お前も充分、相変わらずだよ……」
吉音「えっへんえっへん」
悠「褒めてねーよ」
吉音「悠ってば、少しはデレていいんだよ?」
悠「ツンデもないからな」
そんなやりとりし、悠と吉音は校舎を後にした。もちろん、校舎を出る生徒は彼らだけではない。部活に行く者、下校する者。今ほとんどの生徒は、校舎を後にするか、部室などへ移動する者たちばかりであった。故に、その少女の姿は少し目立っていた。
まずは、そのいで立ち。旅装のような笠を結わえており、それだけで充分目印になる。だが今はそれに加えて、進行方向が他の生徒達と真逆だった。校舎から出てくる人の流れに逆らい、校舎の奥へ奥へと進んでいく。
文「ふぅ……違う……あの子も……彼女も、違う……」
その笠少女は、すれ違う女子生徒を観察しては、その度に小さく首を振って視線を逸らせる。どうやら誰かを探しているようだったが、報われそうな気配はなかった。
「そろそろ、いい返事をきかせてもらいたいんだがな?」
笠少女が足を止めたのは、耳に飛び込んだ言葉のせいではなかった。その、穏かならぬ気配そのものが、彼女の興味を引いた。
文「…………」
「……でも、私は……そんなことは……」
「部長の腹ひとつで、運命が決まるんだ……分かるよな?」
笠少女が視線を転じてみれば、廊下の片隅……人気のなさそうなところに、ふたつの人影が見受けられた。
部長「……分かりたく……ありません」
部長と呼ばれたその少女は壁に追い詰められ、困惑の表情を浮かべている。窮地に陥ってることを推測するに、充分な状況と言えた。
男子生徒A「拒んでも、いいことは何もない。それは、部長も知っての通りだ。なら、どうするべきか……答えは、簡単じゃないのか?」
剣吞とした雰囲気を、そのまま圧力としてぶつける男子生徒。そんな男の姿を認識した笠少女は……
文「……」
興味を無くしたようにまず顔を逸らし、ついで背を向ける。面倒事に関わるまいと言う意識なのか、未練一つ残さず去る姿は、まさに渡世人然としていた。
男子生徒A「……おい、ちょっとそこのあんた」
しかし、男の方がそれを見とがめた。
文「……」
男子生徒A「もしかして……今の話、聞いてたのか?」
まるで盗み聞きをしていたかのような言い回しで詰め寄ってくる。声の響きは低く、恫喝にも近い。
文「……自分には、関係ないことですから」
しかし笠少女は、相手の態度にも台詞にもまったく動じず、きっぱりとした拒絶だけを示した。だがそれを、男の方は誤魔化しとして受け取った。