ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ーとある武家屋敷ー

桃子「どおぉらぁぁっ!!」

ドゴッッ!!

不良生徒D「うぎゃああ~っ!!」

桃子「もういっちょおぉっ!!」

ドゴッッ!!

不良生徒E「どぎゃぶぅっ!!」

桃子「うっし、調子が出てきたぁ!」

ドゴッッ!!

不良生徒F「ひぃ……っ」

桃子「ひとぉっつ!人の涙と生き血を搾りぃ!」

ドゴッッ!!

不良生徒F「ぎゃふうぅっ!!」

桃子「ふたぁつ!不届き悪徳三昧!」

ドゴッッ!!

手下C「ひとが飛ぶとかありえねえぇっ!!」

桃子「みぃっつ!醜いお江戸の鬼ぉ!」

ドゴッッ!!

住宅同心「ごめんなさあぁいぃ~っ!!」

桃子「あ、しまった。途中できっちまった……ええと……あっ、よし!お前でちょうど最後だ!」

住宅与力「ひいいぃぃっ!!おおおぉお助けえぇ!!」

桃子「みっつ!醜いお江戸の鬼を、成敗しちゃうぞ桃子さん!」

住宅与力「ひでぶうぅっ!!」

桃子「ふっ……また三番までしか歌えなかったぜ。そういや、悠はどうしてっかな?」

悠「崩拳!!」

ドッ!
手下A「くっ……てめえ、意外とやるじゃねぇ……かっ……」

悠「ったく、しつこい奴だった。」

十八回刃を避けたところで、ようやく相手を崩すことに成功し、どうにか二人目の不良を倒すことが出来た。ひとり目は油断していた隙を突いてすぐに倒せたけれど、この二人目のほうは予想以上に強かった。もし、こいつがしっかりと剣の手ほどきを受けていたら、おれも無傷では済まなかっただろう。

桃子「おおい、悠ぅ。そっちは片付いたかぁ?」

肩をまわしていると、鬼島さんの間延びした声が聞こえてくる。

悠「あー、ういっす。おれは大丈夫です。それよりも、鬼島さんの方こそ大丈……夫……みたいっすね」

返事しながら顔を見上げて鬼島さんのほうを見ると、そこはもう、なんというか……地獄絵図だった。

桃子「おっ、二対一で勝ったのか。悠もやるじゃん」

そういって笑う鬼島さんの周囲には、十人近い男たちが死屍累々とぶっ倒れている。まるで、突然発生した竜巻が暴れ回ったかのような惨状だ。まさに地獄絵図……ただし、蒼鬼も赤鬼にも残らず退治されているバージョンだ。

「御用だ、御用だ!」

桃子「おおっ!?なんだ、なんだぁ!?」

悠「まさか新手か……?」

全部片付いたかと思ったところに、物々しい掛け声と足音を響かせて問答無用で突入してくる一団。一瞬、与力の手下がまだいたのかとも焦ったけれど、すぐにそうじゃないと分かった。

平良「火盗改めだ。全員、大人しくしろ!」

悠「火盗改め……」

つまり、公安部だ。ということは、敵じゃなくて味方だと思っていいんだよな……?

桃子「んだよ、今頃来たって遅いぜ。御覧の通り、どいつもこいつもとっくに大人しくなってるんだからよ」

平良「……そうだな。後はおまえたちだけのようだ」

うっ……長谷河さんの目が、ぎらりと光る。とても友好的とは言い難い雰囲気だ。

桃子「おいおい、あたいらが悪党の仲間とでもいうのか?」

平良「暴行は立派な校則違反だ」

桃子「あたいらは悪党を懲らしめただけだぜ?」

平良「それは私たちや町方の仕事だ。一般生徒にその権限はない」

桃子「……つまり、あたいと喧嘩したいってわけか」

平良「従わないなら、致し方あるまい」

二人が声を押し殺すなり、空気が一気に焦臭くなる。張りつめた空気に穴を開けたのは、意外な人物の一言だった。
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