ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ーとある武家屋敷ー

住宅与力「え、ええい!とにかく名を名乗れ!」

桃子「貴様ら悪党に名乗る名などない!」

住宅同心「なんだとぉ!?」

桃子「貴様たちは、与力、同心という立場を利用して不正を働き、私腹を肥やしてきた悪党だ。」

住宅与力「なっ!保全費の使いこみが、もうばれたのか!?」

桃子「それだけでに飽きた足らず、みんなが寝ている長屋に火をつけようとは言語道断、極悪非道!まさに鬼!そんな許せん鬼どもはっ!ももから生まれた桃子さん、月に代わって鬼退治!」

住宅同心「あっ、名乗った!名乗る名はないって言った癖に!」

悠「あー……ぇっと、おれもいるぞー」

住宅同心「うわっ、新手か!どこから出てきやがった!?」

悠「いや、鬼島さんと一緒に最初からいたんだけど……」

住宅与力「ええいっ、そんなことはどうでも良いわ!曲者だ、出会え!出会え出会えぇ!」

その遠吠えのような掛け声に、ばたばた大量の足音がこちらに駆けつけてくる。

悠「げろげろ……こんなにいるのかよ」

わらわらと集まったいかにも不良生徒と言った風体の連中に、おれと鬼島さんはあっという間に取り囲まれた。

住宅与力「こんなときのために貴様らに金を払ってきたんだ!コイツらを斬れ!絶対、逃がすな!!」

不良生徒A「うおぉ!!」

与力の怒声に好戦的な雄叫びをあげる不良ども。多勢に無勢とは、まさにこのことだ。

悠「あー……鬼島さん、どうするんです?」

桃子「どうするも、こうするも……全員ぶちのめす!!」

いうなり、鬼島さんはこちらを包囲していた男たちの輪に、みずから踊りかかっていく!

不良生徒A「ぎゃあ!!」

不良生徒B「ぐふ……っ!」

たちまち二人を斬り伏せた。本当に斬ったわけじゃないと分かっていても、思わず背筋に震えが走るほど強烈な切り込みだった。良くて骨の一本、悪くすれば二、三本はまとめて叩き折っていそうな苛烈さだ。

桃子「おらおら!次はどいつだぁ!?」

不良生徒C「くっ……くそぉ!舐めんななぁ!」

鬼島さんの挑発に、ひとりが無謀にも斬りかかる。

桃子「はっ!甘い!」

斬りつけてきた不良の刀を、鬼島さんの金棒がまるで無造作に弾き飛ばした。

不良生徒C「ぐあっ……なんて馬鹿力だ、手が痺れて……っ」

桃子「馬鹿は余計だぁ!!」

不良生徒C「ぐぼぉっ!!」

鍔せり合いも許さない強烈な切り返しが、刀を失って棒立ちになった不良を思いっきり叩き飛ばした。

悠「おー……飛んだ」

それはもう剣術というより、野球かゴルフを観ているような光景だった。

不良生徒C「ぐほっ!ぐはっ!ぐふぇっ!!」

叩き飛ばされた不良は、水きりの石みたいにバウンドしながら飛んでいって、最後は塀に激突した。真剣だってら絶対、腰から真っ二つになってるぞ……。

桃子「さあ、お次はどいつだ!?どんどん来やがれ!!」

不良生徒D「う、うぅ……」

住宅与力「馬鹿者!相手は二人だ!全員で一気にかかれ!」

不良生徒D「うっ、うおぉらぁっ!!」

与力の言葉に勇気づけられたのか、不良たちは雄叫びを上げながら一斉に鬼島さんへと殺到する!

悠「あっ、鬼島さん……っ!?」

手下A「へっへっ、こっちの奴は大したことなさそうだぜ」

鬼島さんを助けに行こうとしたおれの前にも、にやけた顔の不良がひとり、立ちふさがる。

手下B「そうそう。弱い奴から殺る。それがヘーホーってやつだよな」

訂正……立ちふさがったのは、ひとりではなく、二人だ。どうやら、おれはおれでひと暴れしないといけないらしい。
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