ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー長屋ー
想「……申し訳ありません」
桃子「ああ、取り壊しに反対ってわけじゃないんだ。ボロいのは分かってるからな。ただ、こんなにいきなり言われるとは思ってなかったから、心の準備がまだできてなくってさ」
想「それこそ、こちらの責任です。こちらの責任です。こちらの不手際で多大な迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ありません」
桃子「あー、いいって。あたいは、住むところさえ世話してもらえりゃ文句はないよ。他の連中もきっと同じだぜ」
想「それはもちろん、大至急手配させます」
桃子「おう、頼むぜ」
悠「どうやら、これで一件落着みたいですね」
想「小鳥遊君……まだ、投書した方にお会いしていませんよ」
悠「あー……」
吉音「あはは、悠ってばモココさんみたーい」
桃子「そりゃどういう意味だ……って、まあいいや。長屋のやつに用があるんなら、あたいが呼んで来てやるよ。」
悠「あっ」
……と呼び止める暇もなく、鬼島さんは長屋の中に駆け込んでいった。誰を呼んで来て欲しいのか、まだいってないのに……。
想「相変わらずですね、鬼島さんは」
鬼島さんの入っていった長屋を見つめて、逢岡さんも苦笑いしている。それにしても……。
「聞きしに勝るあばら屋だな」
えっ……おれはそこまで思っちゃいないぞ!?
吉音「あーっ!酉居だっ!」
振り向いたそこには、どうしてこんなところにいるのか、酉居が立っていた。
酉居「……なるほどな。相応しい場所には、相応しい連中が集まるというわけか」
悠「あー……?」
どういう意味かと首を傾げたおれに、酉居は嫌味な笑いを浮かべる。
酉居「肥溜にこそ集る蠅もある……いや、いまふと思っただけだから、他意はないぞ」
悠「……蠅か、おれらは」
酉居「他意はないと言ったぞ。耳がないのか、おまえは」
悠「雑音を聞かないようにしてるんだ」
酉居「ふんっ」
この人が老中なのは知っているけれど、やっぱり好きになれそうにない。おれの嫌いな奴ランキングに変動がありそうなレベルだ。
吉音「ねえねえ悠、いまのってどういう意味?」
悠「お前は分からなくていいことだよ。」
吉音「ふぅん?」
想「ですが、確かに奇遇ですね。こんなところで酉居さんとお会いするだなんて」
酉居「俺も、南町奉行がこんなところで油を売っているとは思ってもみなかったぞ」
吉音「想ちゃんはサボってないよ!サボってるのはそっちじゃないかっ!」
酉居「俺は仕事だ。このあばら屋がようやく撤去されるから、最後の見納めに来てやったんだ」
想「視察、ですか」
酉居「たかが長屋の取り壊し如きに俺が興味を持つのは、そんなに意外か?」
想「そこまでは言っていませんが」
酉居「ふん……これは学園でも一、二を争う大昔の建物だ。それを壊せると思うと、胸が躍るんだ」
想「……酉居さんは昔のものがお嫌いなのですね」
酉居「ああ、大嫌いだ。黴臭くて反吐が出る」
桃子「なるほど。だから、あたいらに取り壊しのことを通知しないなんて狡っ辛い真似をしやがったのか」
吉音「あっ、モココさん……と、その仲間たち?」
長屋の中から戻ってきた鬼島さんの後ろには、他にも数名の生徒が立ち並んでいる。
悠「鬼島さん、後ろの方々は……?」
桃子「誰を呼んでくるのか聞き忘れたから、帰ってた連中全員連れてきたんだよ」
悠「ああ、なるほど……鬼島さんらしいというか」
桃子「んなことより、酉居よぉ。今の話、きっちり説明してもらうぜ」
酉居「ほう、気が合うな。俺もいま、おまえたちに問い質したいと思っていたところだ」
桃子「あぁ?このうえさらに難癖つけようってのか?」
酉居さんの挑発じみた言葉に、鬼島さんだでなく、長屋の住人全員が目くじらを立てる。その全員を、酉居さんは胡散臭げに睨めつける。
想「……申し訳ありません」
桃子「ああ、取り壊しに反対ってわけじゃないんだ。ボロいのは分かってるからな。ただ、こんなにいきなり言われるとは思ってなかったから、心の準備がまだできてなくってさ」
想「それこそ、こちらの責任です。こちらの責任です。こちらの不手際で多大な迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ありません」
桃子「あー、いいって。あたいは、住むところさえ世話してもらえりゃ文句はないよ。他の連中もきっと同じだぜ」
想「それはもちろん、大至急手配させます」
桃子「おう、頼むぜ」
悠「どうやら、これで一件落着みたいですね」
想「小鳥遊君……まだ、投書した方にお会いしていませんよ」
悠「あー……」
吉音「あはは、悠ってばモココさんみたーい」
桃子「そりゃどういう意味だ……って、まあいいや。長屋のやつに用があるんなら、あたいが呼んで来てやるよ。」
悠「あっ」
……と呼び止める暇もなく、鬼島さんは長屋の中に駆け込んでいった。誰を呼んで来て欲しいのか、まだいってないのに……。
想「相変わらずですね、鬼島さんは」
鬼島さんの入っていった長屋を見つめて、逢岡さんも苦笑いしている。それにしても……。
「聞きしに勝るあばら屋だな」
えっ……おれはそこまで思っちゃいないぞ!?
吉音「あーっ!酉居だっ!」
振り向いたそこには、どうしてこんなところにいるのか、酉居が立っていた。
酉居「……なるほどな。相応しい場所には、相応しい連中が集まるというわけか」
悠「あー……?」
どういう意味かと首を傾げたおれに、酉居は嫌味な笑いを浮かべる。
酉居「肥溜にこそ集る蠅もある……いや、いまふと思っただけだから、他意はないぞ」
悠「……蠅か、おれらは」
酉居「他意はないと言ったぞ。耳がないのか、おまえは」
悠「雑音を聞かないようにしてるんだ」
酉居「ふんっ」
この人が老中なのは知っているけれど、やっぱり好きになれそうにない。おれの嫌いな奴ランキングに変動がありそうなレベルだ。
吉音「ねえねえ悠、いまのってどういう意味?」
悠「お前は分からなくていいことだよ。」
吉音「ふぅん?」
想「ですが、確かに奇遇ですね。こんなところで酉居さんとお会いするだなんて」
酉居「俺も、南町奉行がこんなところで油を売っているとは思ってもみなかったぞ」
吉音「想ちゃんはサボってないよ!サボってるのはそっちじゃないかっ!」
酉居「俺は仕事だ。このあばら屋がようやく撤去されるから、最後の見納めに来てやったんだ」
想「視察、ですか」
酉居「たかが長屋の取り壊し如きに俺が興味を持つのは、そんなに意外か?」
想「そこまでは言っていませんが」
酉居「ふん……これは学園でも一、二を争う大昔の建物だ。それを壊せると思うと、胸が躍るんだ」
想「……酉居さんは昔のものがお嫌いなのですね」
酉居「ああ、大嫌いだ。黴臭くて反吐が出る」
桃子「なるほど。だから、あたいらに取り壊しのことを通知しないなんて狡っ辛い真似をしやがったのか」
吉音「あっ、モココさん……と、その仲間たち?」
長屋の中から戻ってきた鬼島さんの後ろには、他にも数名の生徒が立ち並んでいる。
悠「鬼島さん、後ろの方々は……?」
桃子「誰を呼んでくるのか聞き忘れたから、帰ってた連中全員連れてきたんだよ」
悠「ああ、なるほど……鬼島さんらしいというか」
桃子「んなことより、酉居よぉ。今の話、きっちり説明してもらうぜ」
酉居「ほう、気が合うな。俺もいま、おまえたちに問い質したいと思っていたところだ」
桃子「あぁ?このうえさらに難癖つけようってのか?」
酉居さんの挑発じみた言葉に、鬼島さんだでなく、長屋の住人全員が目くじらを立てる。その全員を、酉居さんは胡散臭げに睨めつける。