ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ーかなうの養生所ー
かなう「それで袋だたきになったってわけか」
男子生徒たちの説明で、怪我人は河内という名だと分かった。そして彼をこんな目に遭わせたのは、大隅と名乗る帯刀者とその仲間であったという。
男子生徒A「自分ら一般生徒じゃあ、刀持ちには手が出せませんから……」
悠「そんな。学園から帯刀を許されてるのは、責任ある仕事をするためだろ。他の生徒横暴するわけじゃない」
だいたいそんなことを言ったら帯刀なしの寅はどうなるんだ。帯刀あるなしに関わらず容赦なく襲いかかってくるぞ。ちなみに疾風迅雷コンビは帯刀「は」している。
かなう「そういうことは、その大隅とかにいうんだな」
憮然とした様子でかなうさんがいった。
悠「まぁ、そうっすけど」
かなう「それにしても、棒っきれひとつ持たねえ一般生徒にここまでやねとは……性根の腐れた野郎どもだ。」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
翌日。おれはいつも通りに目安箱の中身を確かめた。箱の中には何通かの訴えが。相変わらず揉め事困りごとの種は尽きないものだと、小さく溜息をついて訴状を開いていった。
おえの手が止まったのは何通目かの訴状だった。
悠「こいつは……」
吉音「どしたの、どしたの?」
おれの様子の変化をめざとく見つけた吉音がすり寄ってくる。こういうところ、まるで子犬か何かのようでかわいげはあるんだが、しかし一応年頃の娘なのだ。ふわりと甘い香りを嗅いでしまったりすると、つい胸がどきんと高鳴ってしまう。うーむ、なぜ女の子ってのはみんなこんないい匂いがするものなのだろうか。
だがさすがに今はそんな場合じゃなかった。
悠「ちょっとばかり剣吞な訴状が混じっていてな」
吉音「ふうん?」
その訴状には、「どうしても恨みを晴らしたい相手がいる。助太刀を頼みたい」旨が綴られていた。
悠「……」
吉音「恨み?確かになんか穏やかじゃないよね。どうするの、悠。奉行所にそのまま持っていくの?」
悠「まずは訴人に会ってみるよ。心当たりがあるんだ」
吉音「心当たり?」
訴状に記されている名は、河内とあった。さすがに昨日の今日のことだ。かなうさんの養生所に運び込まれた怪我人の名を忘れたりはしない。
ーとある長屋街ー
河内「ようこそおいでくださいました」
まだ怪我が痛むのか(そりゃあそうだろう)、おれたちを出迎えた河内は辛そうに顔を歪めながら頭を下げた。昨日もひどい様子だったが、今日は今日で全身ガーゼや包帯だらけでミイラ男みたいになっている。本当なら、数日は寝込んでなきゃいけないところなんだろうが……。
悠「……」
河内「俺たち、あの悪党共にはつくづく腹に据えかねているんでやす」
河内の言葉に、ほかの生徒たちも口々に賛意を示した。
吉音「うんうん。まったくだ」
一緒にやって来た吉音がうんうんとうなずく。まあおれだって気持ちはわからなくもないけど……。
河内「横暴無道を働く悪党共に、奉行所のご威光でどうにか仕返しをしてやりてえんで」
悠「ちょっとまってくれ河内さん」
河内「へえ……」
悠「仕返しや復讐は奉行所の仕事じゃないぞ」
河内「じゃ、じゃあ、あいつら悪党を奉行所はほったらかしにするとおっしゃるんで!」
悠「違う、そうじゃない。もちろん、悪人を取り締まるのは必要だし、それこそ奉行所の仕事だと思う」
河内「だったら……」
悠「だからまずするべきことは、昨日のことをきちんと奉行所に訴え出ることだ。そしてあとは奉行所に任せることだ」
河内「そんなわけにいくか!どうして俺がこれだけの目に遭って、黙って泣き寝入りしなくちゃならねえ!この傷を見ろよ!」
叫びながら河内は包帯を引きはがし始めた。
かなう「それで袋だたきになったってわけか」
男子生徒たちの説明で、怪我人は河内という名だと分かった。そして彼をこんな目に遭わせたのは、大隅と名乗る帯刀者とその仲間であったという。
男子生徒A「自分ら一般生徒じゃあ、刀持ちには手が出せませんから……」
悠「そんな。学園から帯刀を許されてるのは、責任ある仕事をするためだろ。他の生徒横暴するわけじゃない」
だいたいそんなことを言ったら帯刀なしの寅はどうなるんだ。帯刀あるなしに関わらず容赦なく襲いかかってくるぞ。ちなみに疾風迅雷コンビは帯刀「は」している。
かなう「そういうことは、その大隅とかにいうんだな」
憮然とした様子でかなうさんがいった。
悠「まぁ、そうっすけど」
かなう「それにしても、棒っきれひとつ持たねえ一般生徒にここまでやねとは……性根の腐れた野郎どもだ。」
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
翌日。おれはいつも通りに目安箱の中身を確かめた。箱の中には何通かの訴えが。相変わらず揉め事困りごとの種は尽きないものだと、小さく溜息をついて訴状を開いていった。
おえの手が止まったのは何通目かの訴状だった。
悠「こいつは……」
吉音「どしたの、どしたの?」
おれの様子の変化をめざとく見つけた吉音がすり寄ってくる。こういうところ、まるで子犬か何かのようでかわいげはあるんだが、しかし一応年頃の娘なのだ。ふわりと甘い香りを嗅いでしまったりすると、つい胸がどきんと高鳴ってしまう。うーむ、なぜ女の子ってのはみんなこんないい匂いがするものなのだろうか。
だがさすがに今はそんな場合じゃなかった。
悠「ちょっとばかり剣吞な訴状が混じっていてな」
吉音「ふうん?」
その訴状には、「どうしても恨みを晴らしたい相手がいる。助太刀を頼みたい」旨が綴られていた。
悠「……」
吉音「恨み?確かになんか穏やかじゃないよね。どうするの、悠。奉行所にそのまま持っていくの?」
悠「まずは訴人に会ってみるよ。心当たりがあるんだ」
吉音「心当たり?」
訴状に記されている名は、河内とあった。さすがに昨日の今日のことだ。かなうさんの養生所に運び込まれた怪我人の名を忘れたりはしない。
ーとある長屋街ー
河内「ようこそおいでくださいました」
まだ怪我が痛むのか(そりゃあそうだろう)、おれたちを出迎えた河内は辛そうに顔を歪めながら頭を下げた。昨日もひどい様子だったが、今日は今日で全身ガーゼや包帯だらけでミイラ男みたいになっている。本当なら、数日は寝込んでなきゃいけないところなんだろうが……。
悠「……」
河内「俺たち、あの悪党共にはつくづく腹に据えかねているんでやす」
河内の言葉に、ほかの生徒たちも口々に賛意を示した。
吉音「うんうん。まったくだ」
一緒にやって来た吉音がうんうんとうなずく。まあおれだって気持ちはわからなくもないけど……。
河内「横暴無道を働く悪党共に、奉行所のご威光でどうにか仕返しをしてやりてえんで」
悠「ちょっとまってくれ河内さん」
河内「へえ……」
悠「仕返しや復讐は奉行所の仕事じゃないぞ」
河内「じゃ、じゃあ、あいつら悪党を奉行所はほったらかしにするとおっしゃるんで!」
悠「違う、そうじゃない。もちろん、悪人を取り締まるのは必要だし、それこそ奉行所の仕事だと思う」
河内「だったら……」
悠「だからまずするべきことは、昨日のことをきちんと奉行所に訴え出ることだ。そしてあとは奉行所に任せることだ」
河内「そんなわけにいくか!どうして俺がこれだけの目に遭って、黙って泣き寝入りしなくちゃならねえ!この傷を見ろよ!」
叫びながら河内は包帯を引きはがし始めた。