ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「もう一度聞くけど、本当に心当たりないのか?」

理由不明の声援は、店にたどり着くまで何度も続いた。

吉音「うん。これっぽっちも」

悠「それなのにあんな元気に返事してたのかよ」

吉音「まぁね~~!」

悠「だから褒めてねぇぞ」

いつものことながら、吉音の能天気さには呆れを通り越して感心すら覚えそうになる。そんなふうになりたいとは絶対に思わないけど。

吉音「ねぅねぇ悠、結局あたしって何をがんばったらいいのかな?」

悠「おれが知るわけねーだろ」

吉音「う~~ん、そうだ!大食いにチャレンジしてみるってどう?」

悠「……やるのは自由だけど、その食費を用心棒代から払わせようとか考えてないだろうな?」

そんなことになったら、我が家はあっという間に破産だ。

吉音「うっ、な、何のことかなぁ~~」

悠「こんな時ばっかり無駄に頭つかいやがって」

吉音「そんなんじゃないってば!も~~!悠のけちんぼ!」

悠「誰がケチだこの人間ブラックホールが!」

てゆーかケチって……本当におれに払わせるつもりだってのかよ……。

吉音「ぶー」

悠「っか正直な話、あの声援の意味はかなり気になるな」

吉音「そうかな?応援してくれるのは嬉しいよ?」

悠「理由が分からないのはちょっと気味が悪いってゆうか……」

声をかけてくる生徒たちからは、純粋に吉音を応援しようと思う気持ちが見て取れる。だから何か特に事件性を心配している訳じゃないけど……。それはそれ、これはこれだ。気になるものはしょうがない。

吉音「うーん……」

悠「……よし!情報通のアイツにでも聞いてみるか」

吉音「悠が……携帯電話持ってる?!」

悠「やかましいわ!」

携帯電話を取りだす。えっと、アイツの番号って……。

輝『はいはいもしもしもーし!こちら輝さんでーす!どうしたの悠ちゃん?はっ!?もしかしてタレコミかい!?それなら大歓迎さ!あれだけ食べて、一日の半分以上を寝ていると思われる新ちゃん!それなのにどうして太らないのか!その謎がついに判明したのかい!』

なんかいつにも増してハイテンションだなぁ……。

悠「輝……一人で勝手に会話を進めないで欲しいんだけど」

輝『おっと、悠ちゃんから電話なんて珍しいから、一人で盛り上がってしまったさ。悪いねぇ』

悠「別にいいけどな。てゆーか、新の体の構造についてはおれが聞きたいぐらいだ。怪異!人間ブラックホールの秘密!ってな感じで。じゃなくて、実はちょっと輝に聞きたいことがあって」

輝『おいらに聞きたいこと?いいよーん、いったい何が知りたいんだい?』

悠「今日さ、新がいろんな人から激励されまくってたんだけど、なんか理由を知らないかなって、輝に電話したんだ」

輝『…………』

いままでとは一転、急に黙りこむ輝。

悠「輝?」

輝『………て、輝にTELLとは悠ちゃんオシャレだねぇ~』

悠「あー?」

輝『いや~これは一本取られたよ。なかなかやるじゃないか悠ちゃん』

悠「おい輝?」

輝『おっと、そろそろ取材の時間だ。悪いね悠ちゃん、これにてしっつれー!』

ツーツーツーツー。き、切られた……。
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