ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:廊下ー

放課後特有のゆるい空気の中を吉音と並んで歩く。

吉音「う~~ん!今日も一日べんきょー頑張った!」

悠「おれの目にはいつも通り一日中寝ていたようにしか見えなかったんだけど?」

吉音「甘いね悠!最近教えてもらったんだけど、この世には睡眠学習って言葉があってね」

悠「昼寝してても授業は聞いていたと言い張る気か?」

吉音「そのとーり!これで授業中も堂々とお昼寝出来るよ。あはー、良かった~良かった~」

……誰だ吉音に余計なことを吹きこんだやつは。

悠「睡眠学習出来てないのに睡眠学習と言い張るのは違うだろ。そういう事いうなら今日授業したことを答えてみろよ」

吉音「悠は意地悪だ!」

悠「はいはい、しっかし毎度毎度のことだけど、よくそんなに寝られるもんだな。ある意味尊敬するよ」

吉音「まぁね~!」

悠「……いっとくけど、褒めてないぞ。ああそうか」

相変わらず皮肉が通じない。

吉音「なに?」

「……いや、脳みそが常に寝ているから新はいつもそんな感じなのか」

吉音「そんなって?」

悠「ぽわわんふにゃふにゃ」

吉音「……何だか遠まわしに馬鹿にされたような気がする」

男子生徒A「あ、あの!」

悠「あー?」

吉音の文句を聞きながしながら歩いていると、背後から突然声をかけられた。知らない面だ……吉音の知り合いか?

男子生徒A「と、徳田さん!」

吉音「ん?なーに?」

もじもじとした態度とは裏腹に、視線は熱く吉音を見つめている。

男子生徒A「頑張ってください!僕、応援していますから!」

吉音「そうなの?ありがと~~!」

男子生徒A「そ、それじゃ」

男子生徒はそれだけ言い終わると、さっと踵を返して去っていった。……なんだったんだろう、今のは。

吉音「よく分かんないけど応援されちゃった。」

悠「今の奴、新の知り合いか?」

吉音「んーん。初めて見る人」

悠「あー?いや、でもお前今ありがとうって……」

吉音「うん!あたしがんばっちゃうよ~!」

悠「……なにを?」

吉音「それは……とりあえず、まぁいいじゃん!」

悠「よかないだろ」

どうしてこうもかみ合わない。

吉音「もう、悠は細かいことまでいちいち気にし過ぎなんだよ!」

悠「お前がざっくばらん過ぎるんだよ」

吉音「そんなんじゃ将来ハゲるよ。はっ!そういえば心なし、初めてあった時より悠の髪の毛が薄く……」

悠「なってると思うか?」

吉音「……なってないね。まぁいいや。ほら悠も!気合入れて頑張るぞー!おー!」

悠「あー?」

能天気にぐっと拳を握って意気込む吉音。で、結局なんなんだよ?

男子生徒B「徳田さん!頑張って!」

吉音「まっかせといてー!」

男子生徒C「新ちゃんこれあげる!頑張ってね」

吉音「いいの!?ありがとー、あたし頑張るよ~」

男子生徒D「徳田新さん……頑張ってくださいませ」

吉音「うん!応援よろしくっ」
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