ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー大江戸学園:目抜き通りー

悠「仲村、それは……!まさか、平和たちが置いていった仕打ち人への依頼料……?」

往水「……なんのことです?」

悠「惚けたって無駄だぞ。全部、分かってるんだからな」

往水「……!」

おれが糾弾した途端、中村の目つきが変わった。ただものならない迫力におれも身構えてしまった。

悠「駄目だぞ。そんな怖い顔したって、猫ばば
見て見ぬふりしたりはしねーぞ。コノヤロー」

往水「……え?」

悠「いま隠したの、そこの社にお供えしてあったお布施でしょう?分かってるんだからな」

往水「え、ええ……いやいや、違うんですよ。コレは拾得物として番屋に持ち帰るところだったんですって」

悠「じゃあ、どうして隠したんですか」

往水「仕舞っただけですよぉ。信じてくださいってぇ」

悠「そんなこといわれても、普段の行いがアレだし……それに、センとリツもいないじゃないか」

往水「え……っ」

悠「いつもだったら勝手にしゃしゃり出てきそうなのに、剣魂のアクセスを切っているんじゃないですか?」

往水「そ……そんなことないですよ、ほらほら」

セン『ピョッピョッ』

リツ『ピッピッ』

悠「いま、アクセスし直したよな。というか、どもったよな」

往水「ぎっくぅ!」

悠「……セン、リツ。仲村の帯にお金の入った封筒が挟まってるから、拾得物として番屋に届けてくれ」

セン『ピョピョッ!』

リツ『ピッピーっ!』

おれの言葉に大きく一声鳴くや、センとリツは嘴を器用に使って、中村の腰から封筒を抜き取った。

往水「猫ばばなんてしませんのに……やれやれですよ」

仲村は肩をすくめて、封筒を嘴に咥えてピーチクパーチクやっている剣魂二羽を溜息混じりに眺めている。

悠「溜息を吐きたいのは、こっちだよ。仕打ち人の正体、もしかしたら突きとめられるか持って思ったのに……」

往水「ああ、そりゃ邪魔しちゃいましたね」

悠「まったくだ。昼寝は、昼間だけにしてくれよ」

往水「それじゃあ、部屋に帰って寝ることにしますよ」

悠「帰る前に、ちゃんと番屋に立ち寄ってくださいよ、お役人殿」

往水「分かってますよ……小鳥遊さんも、仕打ち人がどうのと馬鹿な事いってないで、さっさと帰ってくださいよ。こんな端金で汚れ仕事を請ける馬鹿なんて、いるはずないんですから」

悠「仲村……封筒の中身も確認済みなんだな……」

往水「あっ……」

仲村は、しまった、という顔をする。深夜で見えにくい分、いつもより表情豊かに見えるというのは皮肉なものだ。

悠「……でも、確かにそうだな。今夜はもう帰って寝ることにするよ」

往水「はい、それじゃまた明日。おやすみなさい」

悠「おやすみ、中村……ふぁぁぁー!」

おれは盛大に欠伸しながら踵を返して、元来た夜道を帰ることにした。結局、何の収穫もない夜だったな……やれやれ。

往水「こりゃ結局、ただ働きかよ……やれやれ」

セン『ピョ?』

往水「今夜も冷めたメザシに冷やご飯かぁ、といったんです。」

リツ『ピーピッピッ』

往水「猫ばばなんて考えてませんよ。真面目に働きますって」

セン『ピョーッピョピョッ』

往水「働かざるもの食うべからず、ですね。分かってますよ、あーはいはい」

セン『ピョッピョッ』
リツ『ピッピッ』
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