ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ーとある長屋街ー

悠「……ちゃんと消してくれよ?」

朱金「おうおう、任せとけって」

おれは渋々吉音の分だけデータを転送する。

朱金「ふーむ」

悠「どうだ?」

朱金「こりゃ、いいね」

悠「……期待したおれがバカでした」

朱金「見なよこの躍動感。露光もしっかり計算されてる。普通の盗撮じゃあこうはいかねえ。密偵なんか放っても基本はピンボケ、フラッシュも焚けねえから基本見れたもんじゃねえが……」

悠「あー……確かに」

朱金「それにこの画素数。携帯とかじゃねえ、ちゃんとしたカメラ使ってるな。ただの記録じゃなく、こいつぁ作品だ。いかに美しく、いかにいやらしく……そういう美を追求する視点を感じる。間違いなく、プロの犯行さ」

さすがに、朱金の分析は説得力があった。

悠「ちょっと、見直した」

朱金「でさ、ほかにもあんだろ?くれよ」

悠「お断りします」

朱金「オレのが見てぇのか?そんならいくらでもいいからよ。ほれほれ」

裾をまくりあげ足を開くと薄桃色の下着と健康的に引き締まった太ももが露わになる。

悠「おおー……じゃなくて、どこで何してんだよ。さっさとしまえ。っかそんなことしても売れないものは売れないからな」

朱金「いいじゃんかー!くれよくれよー!!プロの作品なんだから普通に売られてしかるべきだ!」

悠「プロ……写真の……売り物……」

おれのなかで、状況証拠が組み立てられていく。金で、写真を撮るプロ……まさか……

朱金「売ってくれよーーー!」


~次の日~


今日も八百八町は日本晴れ。朝の長屋に響くゆったりとした蹄の音。

吉音「ううーん、いい天気だなあー」

やや棒読みの吉音。そこへ近づいてくる小さな影。

輝「やっほ、新ちゃん!今日はお一人かい?」

なにやら周囲を窺いながら近づいて来たのは輝だった。

吉音「う、うん。そうだよー。ひまなんで散歩中なんだー」

輝「じゃあさじゃあさ!写真!写真撮らせておくよ!」

吉音「あ、やっぱり……」

輝「ん?どうかしたかい?」

吉音「あはは、なんでもないなんでもない」

輝「目安箱のニューヒーロー、じゃなかったヒロイン!新ちゃんは今、学園一の注目株だからね!」

吉音「じゃあ、いいよー」

輝「じゃあ、こっち!こっちで撮ろう!!」

吉音「うんー」

馬から降りた吉音は、何故か壇上に立たされている。

輝「はい、わらってー」

吉音「こ、こうかな?」

ややぎこちない笑み。

輝「イイヨー。イイヨイイヨー!もっとさ、アクション!アクション要素が欲しいね!こう悪人にキーックみたいに!かっこいいとこみせて!」

だが輝はそれには一切触れずに地面に這いつくばる。

吉音「こ、こうかな?」

輝「もっと!もっと臨場感!躍動感!そう!新ちゃん!いい!すごくいい!はい、きーっく!!こ、これはお宝ですよぉ!」

悠「ああ……うん、そうだな」

ローアングルからシャッターを切りまくっている輝。しかし人を呪わば穴二つとはよく言ったもの、輝の後ろに立っているおれからは輝のパンツが丸見えなのだった。このパンモロを写真に撮った方がずっとスクープだと思うのだが。
15/100ページ
スキ