ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ーねずみやー

悠「ごめんよー」

由真「はいいらっしゃ……なんだ、アンタか」

悠「……」

そう、ぱんつっと言えば此処だ。吉音には、写真を撮られた場所を思い出しておくようにいっている。

由真「何?こんな時間に店主自らなんて、とうとうあきらめて降参?」

悠「いや、今日はそういう話しをしにきたわけじゃないんだ」

由真は相変わらずの口調だが、今日はあいにくその相手をしている場合じゃない。

由真「そう……じゃあ、そこで座って待ってて」

おれは促されるままに席に着く。店内は相変わらずの盛況だ。

悠「……」

由真「はい。……で?」

いくつか注文をこなしてから、由真はおれの席にくる。

悠「ええと、だな……なんといったらいいいか……」

調査とはいえ、こんな人の多いところで下着の話をするのも少し気が引ける。

由真「あまねえ、見て分かる通り、アンタのところと違ってうちは忙しいの」

悠「悪い。……その、パン、ティーについて聞かせてもらえると助かるんだけど……このとおりっ!」

いってしまってから、、しまったと思う。これって、思いっきりセクハラじゃないか?こーゆーセクハラはおれの趣味じゃないのに。

由真「……そう。わかったわ。ちょっと待ってて」

けど、由真はあっさりと下がっていった。

悠「……わかってくれたか」

うん、やはりお願いしてみるもんだ。しばらくして――

由真「はい、お待たせ」

由真はおれの目のまえに、紅茶とトーストを並べた。

悠「……ん?」

由真「アンタがそこまで悩んでたとはね。まあいいわ、食べてごらんなさい」

悠「あー?」

由真「お代はいいから。これくらいならオゴリよ」

悠「あ、そうなのか?それはありがとう」

なんだか解らないが、出されたんだしいただこう。おれは、まず紅茶に一口つける。ふわっとひろがる優しい紅茶の香り。

由真「どう?うちのブレンド。ここの水に合わせて渋みを抑えてるの。まあ、配合は企業秘密ね。

続いてトースト。さっくりと焼かれたうえに、軽くシナモンが振ってある。サクッとした歯ごたえの奥に、もっちりとした生地……バターとブレンドされたシナモンが、嫌味じゃなく薫る。

悠「美味い」

由真「でしょう?コツは、トーストした直後のバターを塗り過ぎないこと」

悠「うん、うまい」

シナモンのちょっとしたフレーバーが紅茶の香りをまた引き立てる。

由真「どう?おいしかった?」

悠「ああ、ありがとう。すごくおいしかった」

由真「べ、別にアンタのために教えたわけじゃないんだからね」

悠「ええと、それで話を聞きたいんだけど」

由真「は?これ以上何を聞きだそうっていうの?」

悠「いや、だから……パンティーの話を」

由真「はぁ?」

悠「はあ?って……ん?もしかしてパンとティーの話を聞きに来たと思ったのか?」

由真「違うの?」

悠「違う!」

由真「なによ、あまりにミジメで哀れだから教えてあげたっていうのに」

悠「いや、うまかったけどそうじゃなくて」

由真「じやあ何の話しよ」

悠「パンティーだって最初に言っただろ!パンティー!ぱんつ!下着!」

由真「ほう?」

やばい、由真の目がすごくこわい。

悠「か、勘違いするなって。盗撮犯を探してるんだよ」

由真「……一応聞いておくけど、それをうちに聞きに来た理由は?」

悠「いつもみせてるから」

由真「だから、ウチは……そういう店じゃなーーーーい!!」
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