ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「じゃあ、いいんじゃないかなあ。みんなあたしの写真で喜んでるんでしょ?だったらいいんじゃない」

悠「ま、まあ新がそういうなら……」

想「よくありません!!」

おれ達の会話を黙って聞いていた逢岡さんが一喝する。

悠「あははー……です、よねー」

想「女性の下着を盗撮するという行為自体破廉恥です!例え徳田さんが良くても、こういう行為を見逃していれば他の女性が被害に遭わないとも限りません」

吉音「そっか……そういうことならしょうがないなあ」

悠「目安箱としての、正式な依頼って事ですかね?」

想「そういうことになります。物が物ですし、こちらとしてもあまり事を荒げたくはありませんから」

悠「ふむ」

まあ、奉行所で取り扱うなら証拠としてこの写真が公式に記録に残っちゃうわけだしな。

想「アップロードされたPCは特定できています。所有者に確認して、出所を探ってきてください」

吉音「よおし!なんだか本格的な調査になって来たぁ!」

あくまであっけらかんとした吉音に、逢岡さんは呆れた視線を送るだけだった。




ーとある長屋街ー

悠「ここだな……」

逢岡さんに聞いてやってきたのは、普通の長屋だった。

吉音「闇の組織の基地ってわけじゃなさそうだね」

悠「……闇の組織はパンツの写真はバラまかないだろ」

等と緊張感のない会話をしていると、いきなり戸口が開く。

男子生徒A「なんだなんだ?ひとの部屋の前で」

悠「やば……」

吉音「もしかして、この部屋の」

男子生徒A「あ……紐パン御前!」

一瞬、目のまえの男が何を言っているのかわからなかった。

吉音「それって、あたしのこと……?」

そうだ!あの写真に写っていたのは、吉音の……紐パン!

悠「お前が犯人かっ!ゴラァ!」

逃げられる前に、腕を掴んで確保する。

男子生徒A「な、なんのだよ!?」

突然のことに驚いたのか、特に抵抗もしない男。

吉音「えっと……この写真のことなんだけど、掲示板にアップロードしたのってキミ?」

男子生徒A「ああ、そうだけど」

あっさりの自供。

悠「良し、盗撮犯確保、と。いいか、逃げるなよ。逃げたら死にたくなる目にあわせる」

男子生徒A「ちょ、ちょっと待ってくれよ。それは俺じゃないって!」

吉音「うん、やっぱりそうだよねえ」

吉音までうんうんとうなずいている。

悠「あー?」

吉音「だってあたしこの人に会うの多分初めてだと思うし」

悠「なるほど。っか、そういうことは早く言え!っか、誰が撮ったか見てるってことじゃないのか?」

吉音のあの写真、明らかにカメラ目線だったわけで、当然相手の顔は見ているはず。

吉音「あはは、そこまではちょっとわかんないなー」

まあ、吉音の記憶力ってのも、いまいちあてにならないけども……

悠「本当に違うんだな?」

男子生徒A「うん、そういうことだからもういい?」

とくに逃げるそぶりもない男の腕を掴んでいるのも、なんだかまぬけだ。
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