ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
光姫「そもそもなくなったのは、堂鳩の新作菓子のレシピだ。どんな菓子かは我らにはわからん。しかし、ここにトビザルが持ってきた、謎の菓子がある。メーカー名もない。さらにハチも知らぬという。ハチの記憶にない菓子というのなら、誰か個人の作ったものか、でなければまだ発売されておらぬメーカー品。ハチ、お前はこの菓子の味が個人の手によるものだと思うか?……うむ、うまいな確かに」
光姫さんの指摘に由佳里はぶんぶんと首を振った。
由佳里「多分違うと思います。この火の通り具合は相当大きな釜を使ったと思いますし……材料のスライスも、これは素人の包丁でできることじゃありません。たぶん工場の機械でぱぱぱぱーっと……」
由佳里は両手で素早く斬る真似をして見せた。
光姫「で、だ。つまりこの菓子は、まだ発売されておらぬどこかのメーカーの菓子だということになる。」
由佳里「……はあ、そうですね」
光姫「まだわからんか。この出所のわからぬ菓子、もしやくだんの手帳をもとに作られたのではないか、といっとるんだ」
由佳里「あーー!」
吉音「その可能性はあるね」
光姫「で、トビザル。この菓子、何処で手に入れた」
トビザル『ききっ、きっ、ききっ』
光姫さんの問いに、トビザルが身振り手振りを交えて答える。といっても分かるのは由佳里くらいなのだが。
由佳里「ふん。ふんふん……なるほど。なんか、一昨日の夜、どこかの蔵でひろったって……ああっ、じゃああのときいなくなったのは……」
トビザル『ききっ。きーー』
由佳里「もうっ、拾い食いはダメだっていつもいってるでしょっ!」
光姫「まあよい、ハチ。で、その蔵というのの場所は分かるのか?」
由佳里「あ、はい。近くに私いきましたから。そのへんまでなら……」
悠「じゃあ、光姫さん」
光姫「うむ。ハチ、トビザル。案内を頼む!」
ーとある蔵の前ー
由佳里「ここです」
一行の先頭に立って歩いていた由佳里がぴたりと足を止めた。
悠「ここ?よくわかるな」
おれたちがやってきた場所は、同じような蔵の立ち並ぶ、いわば倉庫街みたいなところだ。ぱっと見では、どの蔵も同じように見えるし、一回や二回歩いたくらいではとても場所を把握できそうにない。
由佳里「一回くればだいたい忘れませんよ」
光姫「うむ。さすがはハチ、でかしたぞ。では、手はず通りに……」
由佳里「はいっ。トビザル!」
褒められてうれしい由佳里、元気よく返事をするとトビザルを呼びだした。
トビザル『きっ、きーー!』
小さなカメラを抱えたトビザルが、力いっぱい弾ませたゴムボールみたいな勢いで蔵へと跳んでいく。ここへ来る道すがら、俺たちが話しあった計画はこうだ。まずトビザルが菓子を手に入れた場所までたどり着いたら、その場所の様子を探る。問題の手帳があればもちろん、手っ取り早い。だがそうでなくても、中の様子の詳しい写真を取ってくるようにトビザルには命じてある。
吉音「大丈夫かなあ……」
腕組みする吉音に、由佳里はにこにこ返事する。
由佳里「大丈夫ですよう。トビザルですからー」
なるほど、喧嘩はしても、互いに信頼し合っているらしい
光姫「あとは待つしかないな」
由佳里「待ってる間、これでもいかがです?途中のお店で買ってきたんですけど」
由佳里がスナック菓子をいくつも取り出す。
悠「いつの間に……」
ここに来るまでずっといっしょだったはずなのに……。
光姫「では、どこか落ちつけるところを探そうとしようか」
驚くおれに対して、光姫さんはさすがに慣れているのか、平然とうなずいて歩きだした。
光姫「そもそもなくなったのは、堂鳩の新作菓子のレシピだ。どんな菓子かは我らにはわからん。しかし、ここにトビザルが持ってきた、謎の菓子がある。メーカー名もない。さらにハチも知らぬという。ハチの記憶にない菓子というのなら、誰か個人の作ったものか、でなければまだ発売されておらぬメーカー品。ハチ、お前はこの菓子の味が個人の手によるものだと思うか?……うむ、うまいな確かに」
光姫さんの指摘に由佳里はぶんぶんと首を振った。
由佳里「多分違うと思います。この火の通り具合は相当大きな釜を使ったと思いますし……材料のスライスも、これは素人の包丁でできることじゃありません。たぶん工場の機械でぱぱぱぱーっと……」
由佳里は両手で素早く斬る真似をして見せた。
光姫「で、だ。つまりこの菓子は、まだ発売されておらぬどこかのメーカーの菓子だということになる。」
由佳里「……はあ、そうですね」
光姫「まだわからんか。この出所のわからぬ菓子、もしやくだんの手帳をもとに作られたのではないか、といっとるんだ」
由佳里「あーー!」
吉音「その可能性はあるね」
光姫「で、トビザル。この菓子、何処で手に入れた」
トビザル『ききっ、きっ、ききっ』
光姫さんの問いに、トビザルが身振り手振りを交えて答える。といっても分かるのは由佳里くらいなのだが。
由佳里「ふん。ふんふん……なるほど。なんか、一昨日の夜、どこかの蔵でひろったって……ああっ、じゃああのときいなくなったのは……」
トビザル『ききっ。きーー』
由佳里「もうっ、拾い食いはダメだっていつもいってるでしょっ!」
光姫「まあよい、ハチ。で、その蔵というのの場所は分かるのか?」
由佳里「あ、はい。近くに私いきましたから。そのへんまでなら……」
悠「じゃあ、光姫さん」
光姫「うむ。ハチ、トビザル。案内を頼む!」
ーとある蔵の前ー
由佳里「ここです」
一行の先頭に立って歩いていた由佳里がぴたりと足を止めた。
悠「ここ?よくわかるな」
おれたちがやってきた場所は、同じような蔵の立ち並ぶ、いわば倉庫街みたいなところだ。ぱっと見では、どの蔵も同じように見えるし、一回や二回歩いたくらいではとても場所を把握できそうにない。
由佳里「一回くればだいたい忘れませんよ」
光姫「うむ。さすがはハチ、でかしたぞ。では、手はず通りに……」
由佳里「はいっ。トビザル!」
褒められてうれしい由佳里、元気よく返事をするとトビザルを呼びだした。
トビザル『きっ、きーー!』
小さなカメラを抱えたトビザルが、力いっぱい弾ませたゴムボールみたいな勢いで蔵へと跳んでいく。ここへ来る道すがら、俺たちが話しあった計画はこうだ。まずトビザルが菓子を手に入れた場所までたどり着いたら、その場所の様子を探る。問題の手帳があればもちろん、手っ取り早い。だがそうでなくても、中の様子の詳しい写真を取ってくるようにトビザルには命じてある。
吉音「大丈夫かなあ……」
腕組みする吉音に、由佳里はにこにこ返事する。
由佳里「大丈夫ですよう。トビザルですからー」
なるほど、喧嘩はしても、互いに信頼し合っているらしい
光姫「あとは待つしかないな」
由佳里「待ってる間、これでもいかがです?途中のお店で買ってきたんですけど」
由佳里がスナック菓子をいくつも取り出す。
悠「いつの間に……」
ここに来るまでずっといっしょだったはずなのに……。
光姫「では、どこか落ちつけるところを探そうとしようか」
驚くおれに対して、光姫さんはさすがに慣れているのか、平然とうなずいて歩きだした。