ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【6】
ー???ー
闇の中。小さな身体がすばやく飛び跳ねる。と言っても、その姿を見るには、その小さな身体の本人と同じように夜目が利かなくては無理だろう。そのくらい部屋の中は暗かった。けれど、声の主は闇をものともせず家具から家具へと飛び移り、目的のモノへと近づていった。もともと夜行性の生き物なのである。
剣魂であるトビザルが正しい意味での生き物であるかどうかはわからないが……。ともかく、トビザルは大きなテーブルの上へと身軽に飛び降りたのだった。テーブルの上には包みに包まれたいくつかの菓子。
トビザル『ききっ!』
嬉しそうな声。それが菓子だと包みはまだ閉じているのにトビザルにはわかるらしい。さすがは剣魂。早くも包みのひとつを開けて、なかから取り出した菓子をぽりぱりやっている。よほど美味しいらしく、トビザルの手が止まらない、と。
男A「それで、もう完成したんですか?」
男B「はい。例のメモ通りに。うちの生産力は向こうとは違いますから」
男A「うむ。これでこの商品の大量生産が決まれば……」
男B「いよいよ堂鳩をつぶしてしまうことができるというわけですな……」
声がどんどん近付いてくるのを知って、トビザル、なにを思ったか袋のひとつを背負ったかばんに詰め込んだ。食い意地の張り方は、やっぱり猿だからなのか、それとも主人の影響か……。
トビザル『きっ』
そしてすばやくテーブルの影へ。それとほとんど同時に男たちが部屋に入って来た。
男A「おお、これか……」
男B「はて」
男A「どうした?」
男B「造らせた試作品は3袋だったような……」
男A「おいおい。しかしここには2袋しかないではないか」
「おぉーーい、トビザルーーーっ。おおーーいっ」
男A「な、なんですか?」
「トビザル~っ、トビザル~っ」
男B「さあ……、ちょっと見にやらせましょう。おいっ、ちょっと見てきてくれ。店の秘密を狙っている曲者かも知れん」
男のひとりが声をかけると、扉の外からもうひとり。
手下A「はっ」
命じられた男は、扉ではなく、窓を開けるとそこから外へ。どうやら窓が庭に続いている様子。
トビザル『きっ』
トビザルは開いた窓からすばやく庭に駆けだす。暗い夜のことであり、その姿は誰にも見つからなかった。
ー夜道ー
由佳里「トビザル~、トビザル~っ。ああもうどこいったのかなあ。」
夜道をひとり、あっちへうろうろ、こっちへうろうろしながら八辺由佳里が歩いている。探しているのは彼女の剣魂、トビザル。
トビザル『ききっ、きーーっ!』
由佳里「ああっ、トビザルっ。よかったー、どこいってたのー」
トビザル『きっ、きっ』
由佳里「え、なに、お菓子?もう、そこらで勝手に拾い食いしちゃだめだっていつもいってるでしょー」
手下A「おい、そこのおまえ!」
由佳里「はっ、はい!」
いきなり呼び止められて、由佳里が飛びあがる。声をかけたのは、外を見てくるように命じられた男だ。
手下A「おまえそこで何をしている。」
由佳里「ええとその、探し物を……」
手下A「探し物?こんなところでか」
険しい顔をする男子生徒に、由佳里ははははと照れ笑い。
由佳里「ついうっかりしちゃって……、でも今見つかったところです」
由佳里の邪気のないえが屋に、男子生徒も緊張をとかれたようで、表情をゆるめた。
手下A「そうか。だったらさっさとここを立ちされ。女子がひとりで出歩いていい場所じゃないぞ。」
由佳里「そ、そうですね。はい、すぐ帰ります。」
確かにこのあたりは街灯もまばらで、人家も少ない。あらためて周囲の暗さに由佳里は怖くなってきた様子。
手下A「……」
由佳里「ご心配おかけしましたー、さようならー。」
脱兎の如くその場から駆け去っていく。残された男は、ふんっと鼻を鳴らして元の建物へと戻っていった。
闇の中。小さな身体がすばやく飛び跳ねる。と言っても、その姿を見るには、その小さな身体の本人と同じように夜目が利かなくては無理だろう。そのくらい部屋の中は暗かった。けれど、声の主は闇をものともせず家具から家具へと飛び移り、目的のモノへと近づていった。もともと夜行性の生き物なのである。
剣魂であるトビザルが正しい意味での生き物であるかどうかはわからないが……。ともかく、トビザルは大きなテーブルの上へと身軽に飛び降りたのだった。テーブルの上には包みに包まれたいくつかの菓子。
トビザル『ききっ!』
嬉しそうな声。それが菓子だと包みはまだ閉じているのにトビザルにはわかるらしい。さすがは剣魂。早くも包みのひとつを開けて、なかから取り出した菓子をぽりぱりやっている。よほど美味しいらしく、トビザルの手が止まらない、と。
男A「それで、もう完成したんですか?」
男B「はい。例のメモ通りに。うちの生産力は向こうとは違いますから」
男A「うむ。これでこの商品の大量生産が決まれば……」
男B「いよいよ堂鳩をつぶしてしまうことができるというわけですな……」
声がどんどん近付いてくるのを知って、トビザル、なにを思ったか袋のひとつを背負ったかばんに詰め込んだ。食い意地の張り方は、やっぱり猿だからなのか、それとも主人の影響か……。
トビザル『きっ』
そしてすばやくテーブルの影へ。それとほとんど同時に男たちが部屋に入って来た。
男A「おお、これか……」
男B「はて」
男A「どうした?」
男B「造らせた試作品は3袋だったような……」
男A「おいおい。しかしここには2袋しかないではないか」
「おぉーーい、トビザルーーーっ。おおーーいっ」
男A「な、なんですか?」
「トビザル~っ、トビザル~っ」
男B「さあ……、ちょっと見にやらせましょう。おいっ、ちょっと見てきてくれ。店の秘密を狙っている曲者かも知れん」
男のひとりが声をかけると、扉の外からもうひとり。
手下A「はっ」
命じられた男は、扉ではなく、窓を開けるとそこから外へ。どうやら窓が庭に続いている様子。
トビザル『きっ』
トビザルは開いた窓からすばやく庭に駆けだす。暗い夜のことであり、その姿は誰にも見つからなかった。
ー夜道ー
由佳里「トビザル~、トビザル~っ。ああもうどこいったのかなあ。」
夜道をひとり、あっちへうろうろ、こっちへうろうろしながら八辺由佳里が歩いている。探しているのは彼女の剣魂、トビザル。
トビザル『ききっ、きーーっ!』
由佳里「ああっ、トビザルっ。よかったー、どこいってたのー」
トビザル『きっ、きっ』
由佳里「え、なに、お菓子?もう、そこらで勝手に拾い食いしちゃだめだっていつもいってるでしょー」
手下A「おい、そこのおまえ!」
由佳里「はっ、はい!」
いきなり呼び止められて、由佳里が飛びあがる。声をかけたのは、外を見てくるように命じられた男だ。
手下A「おまえそこで何をしている。」
由佳里「ええとその、探し物を……」
手下A「探し物?こんなところでか」
険しい顔をする男子生徒に、由佳里ははははと照れ笑い。
由佳里「ついうっかりしちゃって……、でも今見つかったところです」
由佳里の邪気のないえが屋に、男子生徒も緊張をとかれたようで、表情をゆるめた。
手下A「そうか。だったらさっさとここを立ちされ。女子がひとりで出歩いていい場所じゃないぞ。」
由佳里「そ、そうですね。はい、すぐ帰ります。」
確かにこのあたりは街灯もまばらで、人家も少ない。あらためて周囲の暗さに由佳里は怖くなってきた様子。
手下A「……」
由佳里「ご心配おかけしましたー、さようならー。」
脱兎の如くその場から駆け去っていく。残された男は、ふんっと鼻を鳴らして元の建物へと戻っていった。