ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【5】
ー人気のない通りー
不良生徒A「……どうするよ」
不良生徒B「どうするったって、奉行所の役人が出て来られたらヤバいだろう」
不良生徒C「じゃあ、このまま帰るのか?」
不良生徒B「仕方ねぇだろう」
「おい、首尾はどうだった」
不良生徒A「……っ!い、いやその……それが……」
不良生徒B「黒部の野郎、その先のぼろ屋に逃げ込みやがって……」
「それがどうした。どうせ手負いだ、力尽くで引きずってくればいいだろう」
不良生徒A「はあ……でも、ぼろ屋に居た奴が、奉行所に訴え出るって……」
「テメェら、それですごすご逃げ帰って来たのか!役立たずどもめ!」
不良生徒A「ひいっ、すっ、すいませんっ」
「…………ち、揃いも揃って使えねぇがらくたばっかりだ。先生、ひとつ頼まれておくれじゃありませんか」
男「……」
その声に。今までどこにいたのか、うっそりと長身の男が現れた。男の姿を見た男子生徒たちの顔が青ざめる。
「奉行所何ぞに駆けこまれる前に……」
人気のない通りに、悲鳴が響き渡った。
ーかなうの養生所ー
「すいやせん、こちらで怪我人を見てくださると聞いたんですが……」
かなう「いんにもそうだが。お前さんが?」
男「いいえ。自分じゃありません。この先いったところに大勢怪我人が」
かなう「大勢のケガ人だと?」
男「へい。この先の通りで。うんうん唸っておりやした。」
かなう「案内できるか?」
男「もちろんで」
かなう「おい、悠、新、いっしょに来てくれ。人数がいるとなれば、人手がいりそうだ」
悠「あいよ」
吉音「はぁい!」
男「…………」
ー人気のない通りー
悠「こりゃひどいな……」
路上には、男子生徒たちが転がって苦痛に呻いている。何人かは動かない者もいる。さすがに死んではないだろうけど……おれたちは駆けよって様子を確かめた。
かなう「む、息はあるようだ。……しかしこ奴ら……」
吉音「なんかどっかで見たことあるよね」
悠「どっかで、じゃないだろ。さっきだ、さっき!今さっき黒部を捕まえに来た連中だよ」
吉音「ああ、そうかー!」
かなう「いったい誰がやったんだ?おい、お前はやったヤツを……おい?」
悠「あー?」
吉音「さっきの人いないね?」
おれたちをここまで案内してきた男は、いつのまにか姿を消していた。
かなう「嫌な予感がするぞ……えい、このまま放っておくわけにもいかんし。こら起きろ、手当てしてやるから、自分の脚で立てるものはさっさと立つがいい」
ーかなうの養生所ー
悠「……どうやら最悪の展開にはならずに済んだみたいですね」
かなう「そのようだな」
ケガ人たちを連れてかなうさんの養生所に戻ってきたおれたちはほっと息をついた。
吉音「最悪の事態って?」
かなう「黒部がさらわれたりしてないか、と思ったのだがな」
悠「こいつらを囮にして、おれたちをおびき出してな」
吉音「それでここが空になったところを……、そうか!危ないところだったね!」
悠「けど、そうすると、このケガ人たちは無関係……?」
かなう「いいや、そうとも限らん。奉行所に駆け込むとどうなるか……脅しのつもりかもしれんぞ」
悠「向こうはこっちが、自分の言いなりになる相手だと見くびってるのかもしれない。たしかに」
かなう「ま、そのへんのところはこいつらに聞いてみればわかるさ。おい、誰にやられたんだ。正直にいってみろ。」
不良生徒A「…………」
怪我人のひとりは、かなうさんの問いかけに視線を逸らした。ここに飛び込んできたときの黒部みたいだ。自分で起き上がるのもやっと、という怪我を負わされたのに、その相手については喋れないというわけか。しかし、最初の元気はいまやどこかへ霧散していた。すっかりしおれて、ぐったりと床にへたり込んでいる。
不良生徒A「……どうするよ」
不良生徒B「どうするったって、奉行所の役人が出て来られたらヤバいだろう」
不良生徒C「じゃあ、このまま帰るのか?」
不良生徒B「仕方ねぇだろう」
「おい、首尾はどうだった」
不良生徒A「……っ!い、いやその……それが……」
不良生徒B「黒部の野郎、その先のぼろ屋に逃げ込みやがって……」
「それがどうした。どうせ手負いだ、力尽くで引きずってくればいいだろう」
不良生徒A「はあ……でも、ぼろ屋に居た奴が、奉行所に訴え出るって……」
「テメェら、それですごすご逃げ帰って来たのか!役立たずどもめ!」
不良生徒A「ひいっ、すっ、すいませんっ」
「…………ち、揃いも揃って使えねぇがらくたばっかりだ。先生、ひとつ頼まれておくれじゃありませんか」
男「……」
その声に。今までどこにいたのか、うっそりと長身の男が現れた。男の姿を見た男子生徒たちの顔が青ざめる。
「奉行所何ぞに駆けこまれる前に……」
人気のない通りに、悲鳴が響き渡った。
ーかなうの養生所ー
「すいやせん、こちらで怪我人を見てくださると聞いたんですが……」
かなう「いんにもそうだが。お前さんが?」
男「いいえ。自分じゃありません。この先いったところに大勢怪我人が」
かなう「大勢のケガ人だと?」
男「へい。この先の通りで。うんうん唸っておりやした。」
かなう「案内できるか?」
男「もちろんで」
かなう「おい、悠、新、いっしょに来てくれ。人数がいるとなれば、人手がいりそうだ」
悠「あいよ」
吉音「はぁい!」
男「…………」
ー人気のない通りー
悠「こりゃひどいな……」
路上には、男子生徒たちが転がって苦痛に呻いている。何人かは動かない者もいる。さすがに死んではないだろうけど……おれたちは駆けよって様子を確かめた。
かなう「む、息はあるようだ。……しかしこ奴ら……」
吉音「なんかどっかで見たことあるよね」
悠「どっかで、じゃないだろ。さっきだ、さっき!今さっき黒部を捕まえに来た連中だよ」
吉音「ああ、そうかー!」
かなう「いったい誰がやったんだ?おい、お前はやったヤツを……おい?」
悠「あー?」
吉音「さっきの人いないね?」
おれたちをここまで案内してきた男は、いつのまにか姿を消していた。
かなう「嫌な予感がするぞ……えい、このまま放っておくわけにもいかんし。こら起きろ、手当てしてやるから、自分の脚で立てるものはさっさと立つがいい」
ーかなうの養生所ー
悠「……どうやら最悪の展開にはならずに済んだみたいですね」
かなう「そのようだな」
ケガ人たちを連れてかなうさんの養生所に戻ってきたおれたちはほっと息をついた。
吉音「最悪の事態って?」
かなう「黒部がさらわれたりしてないか、と思ったのだがな」
悠「こいつらを囮にして、おれたちをおびき出してな」
吉音「それでここが空になったところを……、そうか!危ないところだったね!」
悠「けど、そうすると、このケガ人たちは無関係……?」
かなう「いいや、そうとも限らん。奉行所に駆け込むとどうなるか……脅しのつもりかもしれんぞ」
悠「向こうはこっちが、自分の言いなりになる相手だと見くびってるのかもしれない。たしかに」
かなう「ま、そのへんのところはこいつらに聞いてみればわかるさ。おい、誰にやられたんだ。正直にいってみろ。」
不良生徒A「…………」
怪我人のひとりは、かなうさんの問いかけに視線を逸らした。ここに飛び込んできたときの黒部みたいだ。自分で起き上がるのもやっと、という怪我を負わされたのに、その相手については喋れないというわけか。しかし、最初の元気はいまやどこかへ霧散していた。すっかりしおれて、ぐったりと床にへたり込んでいる。